村人が世界最強だと嫌われるらしい

夏夜弘

越えなければならない壁が大きくて 2

『まぁそう言わないでくれよ。私だって完璧ではない。神とはいえね』

「ふーん。そんな言い訳神様が言っていいのやら……」

『神様特権でありってことで!』

「職権乱用だ!」

『おっと、話がそれたね』

 神は一度咳払いをすると、先程まで笑顔だった顔つきは真剣な表情に戻り、烈毅も改めて真剣な表情になる。

『まず、何故情報が流れたのかと言うと、私にはある一人の秘書がいてね。その子も神なんだけど、まだ新人さんでね。反発組織に捕まっちゃったんだ』

「反発組織?」

『そう。多分一度会ってるんじゃないかな? ほら、君がまだ表の世界にいる時に。まぁその時の神は組織の一員でしかないけど。相手は大勢いる』

「ああ、あいつらか。あんま強く無かったし覚えてなかったわ。あ、でもブラックドラゴンは覚えてる。ありゃ強かった」

『そうだろうね。まさかブラックドラゴンを差し向けるとは思ってなかったけど。まぁ君なら余裕だし大丈夫かなと思ってみてたけど』

「はぁ……。それで、どうなったんだ?」

『うん。洗いざらい話したみたいだ。手痛い施しを受けたらしくてね。私の秘書は皆攫われていってしまって悲しいよ』

「皆?」

『あ、そうそう。もう一人捕まっちゃった子がいてね。それは君が来てからまもない頃だったんだけどさ、ほら、君の事を知ってるの魔族に会ったろ?』

「ああ、いたいた。だから俺の事を知ってたのか」

『そう。ホント、君と秘書には申し訳ないね。いつか助けてあげないと』

「ていうか、どうやって攫われたんだ? あんたがいるのに」

『私はここに一人だ。大勢で来られてはさすがに庇いきれなかった』

「そういうことね。でもよく殺されなかったな」

『秘書の子がね、逃がしてくれたんだよ。私を適当な場所へワープさせてね』

「そうか……」

『まぁそういうことがあって君の情報が流れたって訳だよ。そして、組織はそれだけでは終わらなかったんだ』

「まだあるのか?」

『あるよ。それは世界中の人の洗脳だ』

「洗脳?」

『そう。なんとか私も抗いはしたんだけどね。少々手こずってね。極小数の者しか洗脳から守れなかった』

「だけど、そのおかげで少数はなんとかいる。ならそいつらを探せばいいんだろ?」

『そうは言っても、もう一人は君側についてる』

「クルルか」

『彼は本当に強い精神の持ち主でね。自分でも抗っていた。そこに私が救いの手を差し伸べた。勿論、君の仲間も救ったさ』

「感謝するよ。あいつらがいなくなったら俺自殺しちゃう」

『死ねないけどね!』

 ウィンクしながらそう言った神を、烈毅は冷たい目線で見つめる。神は一度咳払いをして少し恥じらいながらも、話を続けた。

『それで、君が逃げ続けている間に組織側はさらに洗脳を続けた。それと、組織の奴らは世界中の王達に情報を流した』

「俺の情報を、か。それならあの時知られていたのも納得する」

『それは君が裏の世界に行ってからの出来事だからね』

「そういや、裏の世界の奴らは俺の事なんて目にも止めなかったけど、それはなんでだ?」

『裏の世界は誰からも干渉されないんだ。私でさえどうこうするのは難しい』

「出来ないんじゃなくて『難しい』なのか……あんたが作ったのに、変な設定にしたもんだな」

『あ、設定で思い出した。君のユニークスキルの事なんだけど、変更されていたことは気付いてると思うんだけど、あれは私がやった訳ではないよ?』

「じゃあ誰が?」

『相手側の中でもかなり厄介と言っても過言ではない神かな。それは、全知全能の神ゼウス。奴が君にこっそりと干渉してスキルを変更したんだ。自分の都合のいいように、且つバレないように』

「それでか……」

『まぁ途中で私が阻止したがね』

 烈毅は、正直無理ゲーだなと心から思ってしまった。創造神が送り出してくれたのはいいが、ほかの敵対する神に設定を変更される。そうなれば、もう烈毅に為す術はない。

 だが、そんな暗くネガティブな考えも、次の神の一言によって払拭される。

『だけど、もうそれはさせない』

「……というと?」

『今から君に特殊な印を彫る。それは一生消えず、且つ一生続く。それが剥がされようが何されようが』

「それはどんな効果がある?」

『もう君に干渉される事は二度と無くなる。それは私も同じ条件だが、問題ないだろう』

「それは有難い。さっそく―」

 烈毅が発言しようとした時だった。神は真剣な表情で言葉を遮り、こう言う。

『だが、この印を刻むには条件が一つある』

「条件?」

『それは……今君にかかっているバッドステータスの解除と連動しているんだけど、内容は簡単。見方を殺せるか殺せないかだ』

「…………なんだよそれ」

『君は優しすぎる。故に怒り安い。仲間思いなのは大事だ。だけど、それが理由で今回はバッドステータスがついた。どんな場面でも、状況でも、そうなってはならないんだ』

「でも仲間を殺すなんて……できない」

『リアルに殺すわけではない。仮想世界で、実像と全く同じ性格、容姿、能力の虚像を殺すだけさ。そしてそれを見て怒らない』

 言い渡されたその試練に、烈毅はもう心を砕かれそうだった。

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