天下界の無信仰者(イレギュラー)
どうなってんだよてめえ
なんなんだろう、この不安は。
エリヤを見送った後門の前でシルフィアはいい知れない不安に顔を曇らせていた。その出所を探るように胸に手を当ててみても心配がなくなることはない。
エリヤはまた戻ってくると約束してくれた。シルフィアも彼が嘘を言っているとは思わないし信頼している。
けれど、たまにこういうことがある。嫌な予感。それはこれまでの人生で何度かあり、その予感は度々的中している。
「…………」
さっきまでは笑顔で兄の姿を見上げていたというのに。彼が去ってしまえばもう暗い顔になっている。
「ダメダメ」
シルフィアは頬を両手でパンパンと叩いた。
「兄さんとは約束した。ならばそれを信じて待つのみ。それができた妹というものなのです」
自分に言い聞かせ表情を切り替える。それで不安がなくなるわけではないがあえて無視する。信じると決めたのだから心配しても仕方がないのだ。
シルフィアに家に戻った。
「エルさん、夕食はもうとりました? よければご一緒に」
リビングの扉を開け兄の客人に声をかける。だが、そこには誰もいなかった。
「あれ」
見渡してみるがリビングのどこにもいない。トイレだろうか。ふとテーブルを見てみると自分が置いておいたはずのカバンがない。その代わり一枚の紙が置いてあった。手を伸ばし持ち上げてみる。
「……ありがとうございました」
シルフィアは急いで裏口に回る。見れば扉の鍵は開いていた。いつも鍵は閉めているので開いているなんてことはない。ここから出ていったのか。
「…………」
しばらくシルフィアはその場に立ち尽くし弱気な顔で俯いていた。
嫌な予感がする。とても嫌な予感が。それがなんなのかは分からない。でも、心配に胸を締め付けられる。
「どうして、みんな出て行っちゃうんですかね……」
なんとか声を出してみたが気持ちは変わらなかった。
シルフィアにとって、長い夜が過ぎていく。
*
エリヤとミカエルの戦闘は続いていた。
勢いでいうならエリヤが押している。超攻撃型なスタイルに加えサンダルフォンの援護もある。繰り出す拳に何度もミカエルは潰され地面に埋め込まれた。
だが、その度に何事もなかったかのように立ち上がる。
「くそ!」
気味の悪さに悪態を吐く。
「どうなってんだよてめえ」
苛立ちに口調も荒くなる。何度も攻撃は当てているのにこうも手応えがなければ気持ちの方が折れそうになる。
「んー、思うに君は状況を把握する能力が致命的に欠けているねぇ。敵に尋ねて返ってくる答えがあるわけないだろ、それくらいのことが分からないほど間抜けだとは残念残念。はっはっはっは!」
おまけにこの口調。この態度。腹まで立ってくる。
「くそ」
こんなにも厄介な敵と戦うのは初めてだった。
エリヤはミカエルに向かって走る。間合いにとらえ大剣を振り下ろす。
「ふ」
それをミカエルは不敵な笑みで迎える。
エリヤの攻撃をミカエルはかわすことなく肩で受け止めた。いや、それは傷がついていないというだけで無防備に受けのと変わらない。ミカエルの足場は砕け破片は周囲へと散っていく。
なのにミカエルは痛みすらないのか笑みを崩さず、肩に当たっている大剣を抱えるように掴んだ。そしてお返しとばかりに自分が剣を振り上げる。
「ちぃ!」
エリヤは大剣を上げる。ミカエルが掴んでいるが関係ない。ミカエルごと持ち上げ地面に叩きつけた。ミカエルの体が地面にぶつかるとその上から踏みつけ無理矢理大剣を引き剥がす。その後サッカーボールのように蹴り上げミカエルはサン・ジアイ大聖堂へと飲み込まれていった。
エリヤを見送った後門の前でシルフィアはいい知れない不安に顔を曇らせていた。その出所を探るように胸に手を当ててみても心配がなくなることはない。
エリヤはまた戻ってくると約束してくれた。シルフィアも彼が嘘を言っているとは思わないし信頼している。
けれど、たまにこういうことがある。嫌な予感。それはこれまでの人生で何度かあり、その予感は度々的中している。
「…………」
さっきまでは笑顔で兄の姿を見上げていたというのに。彼が去ってしまえばもう暗い顔になっている。
「ダメダメ」
シルフィアは頬を両手でパンパンと叩いた。
「兄さんとは約束した。ならばそれを信じて待つのみ。それができた妹というものなのです」
自分に言い聞かせ表情を切り替える。それで不安がなくなるわけではないがあえて無視する。信じると決めたのだから心配しても仕方がないのだ。
シルフィアに家に戻った。
「エルさん、夕食はもうとりました? よければご一緒に」
リビングの扉を開け兄の客人に声をかける。だが、そこには誰もいなかった。
「あれ」
見渡してみるがリビングのどこにもいない。トイレだろうか。ふとテーブルを見てみると自分が置いておいたはずのカバンがない。その代わり一枚の紙が置いてあった。手を伸ばし持ち上げてみる。
「……ありがとうございました」
シルフィアは急いで裏口に回る。見れば扉の鍵は開いていた。いつも鍵は閉めているので開いているなんてことはない。ここから出ていったのか。
「…………」
しばらくシルフィアはその場に立ち尽くし弱気な顔で俯いていた。
嫌な予感がする。とても嫌な予感が。それがなんなのかは分からない。でも、心配に胸を締め付けられる。
「どうして、みんな出て行っちゃうんですかね……」
なんとか声を出してみたが気持ちは変わらなかった。
シルフィアにとって、長い夜が過ぎていく。
*
エリヤとミカエルの戦闘は続いていた。
勢いでいうならエリヤが押している。超攻撃型なスタイルに加えサンダルフォンの援護もある。繰り出す拳に何度もミカエルは潰され地面に埋め込まれた。
だが、その度に何事もなかったかのように立ち上がる。
「くそ!」
気味の悪さに悪態を吐く。
「どうなってんだよてめえ」
苛立ちに口調も荒くなる。何度も攻撃は当てているのにこうも手応えがなければ気持ちの方が折れそうになる。
「んー、思うに君は状況を把握する能力が致命的に欠けているねぇ。敵に尋ねて返ってくる答えがあるわけないだろ、それくらいのことが分からないほど間抜けだとは残念残念。はっはっはっは!」
おまけにこの口調。この態度。腹まで立ってくる。
「くそ」
こんなにも厄介な敵と戦うのは初めてだった。
エリヤはミカエルに向かって走る。間合いにとらえ大剣を振り下ろす。
「ふ」
それをミカエルは不敵な笑みで迎える。
エリヤの攻撃をミカエルはかわすことなく肩で受け止めた。いや、それは傷がついていないというだけで無防備に受けのと変わらない。ミカエルの足場は砕け破片は周囲へと散っていく。
なのにミカエルは痛みすらないのか笑みを崩さず、肩に当たっている大剣を抱えるように掴んだ。そしてお返しとばかりに自分が剣を振り上げる。
「ちぃ!」
エリヤは大剣を上げる。ミカエルが掴んでいるが関係ない。ミカエルごと持ち上げ地面に叩きつけた。ミカエルの体が地面にぶつかるとその上から踏みつけ無理矢理大剣を引き剥がす。その後サッカーボールのように蹴り上げミカエルはサン・ジアイ大聖堂へと飲み込まれていった。
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