天下界の無信仰者(イレギュラー)
その間、やつらの注意は俺が引きつける
「エルって名乗ったんだって? お前なあ、偽名言うにしてももっとマシなのないのか」
「う、うるさいな。仕方がなかっただろう、咄嗟に浮かんだのがそれしかなかったんだ」
「お前の頭は絶望的だな」
「うるさい! お前に言われたくないわ!」
ウリエルからの叩きつけられるような反論を言われるがエリヤはスルーする。それよりも今後のことだ。
「エル、状況が変わった。お前はこれから一人でスパルタかコーサラに向かえ。国境を越えればやつらも手出しできねえ」
「え」
いきなりのことにウリエルも不安そうな声を出す。
「なにかあったの?」
「明日にもここに捜査が入るらしい。長居はできなくなった」
「エリヤはどうするの?」
聞かれエリヤは一端口を閉じたあと、意を決めてから言った。
「その間、やつらの注意は俺が引きつける」
「そんな」
ソファに座っていたウリエルが立ち上がる。すぐにエリヤの正面にまで駆け寄った。
「エリヤ、そんなの駄目よ。私のためだとしても、あなたが犠牲になるなんてこと、私は望んでなんてない!」
「エル!」
見上げるウリエルの肩をつかむ。必死に見てくる彼女の目をさらに必死に見る
「忘れたのか? お前が捕まったら、殺されるんだぞ! お前が許されない世界なんて、お前が救われない世界なんてあっちゃいけないんだよ!」
本音をぶつける。この人は救われなければならない。こんなにも優しくて、純粋で、平和を願っている者が、許されない世界なんてあってはならない。
エリヤの思いすべてがそう叫んでいた。
「お前は生きろ、約束しただろう」
両肩に込める力を緩めず、声を抑える。
「お前はもう十分救った。今度はお前が救われなきゃならないんだよ」
救われて欲しい。幸せになれ。エリヤが望むのはそれだけだ。
「自分を許せ。前に進め。自由に生きろ」
エリヤは肩から両手を離した。その後ふっと笑ってみせる。
「お前は笑ってる方がかわいいからよ」
その笑みにウリエルも表情を和らぎそうになるが、すぐに心配が顔に出る。
「でも、エリヤは? エリヤはどうなるの?」
自分に生きろと何度も言ってくれるエリヤ。その言葉を聞く度に喜びが胸からわき上がるが、だからといって彼が傷つくのは嫌だ。ウリエルだってエリヤと同じくらい彼の無事を祈っている。
「俺は犠牲にはならねえよ。安心しろ」
エリヤはそう言うがウリエルの不安は消えない。
「エリヤ。また会えるよね? 絶対、また会えるよね?」
「あったりまえだろ。俺は女と交わした約束は破ったことはねえんだよ。お前がどこにいようが、絶対見つけだしてやる」
不安が何度も吐き出される。心配が止まらない。これが最後の別れになりそうで、胸が締め付けられた。
そんな彼女に、この騎士はいつだって自信に満ちた顔で言ってくれる。
「約束だ」
その力強い言葉に、ウリエルは頷くしかなかった。
彼女の返事を見てエリヤも頷く。
「あの、兄さん?」
そこでリビングの扉が開けられシルフィアが顔を覗かせる。
「一応、ここに詰めるだけ詰めてみましたけど……」
シルフィアの手には大きめのカバンがあり衣類が入っているからか見ただけでもパンパンなのが分かる。
「おう、ありがとよ。ほら」
エリヤはシルフィアからそれを受け取りそのままウリエルに手渡してやる。
「あの、ありがとうございます。シルフィアちゃん、だよね? 突現お邪魔しておいてこんなことまで。それに、お弁当も」
「いえ、これくらい。お弁当はどうでしたか? お口に合えばよかったんですが」
「うん、とってもおいしかった。毎日すごいね。シルフィアちゃんならいつお嫁さんに行っても大丈夫だよ」
「えへへ~」
何度もシルフィアの弁当を食べたウリエルは断言する。あれは本当においしかった。エルのようなお姉さんに言われてシルフィアもよほど嬉しかったのかとろけた肉まんみたいな笑顔で喜んでいた。
「う、うるさいな。仕方がなかっただろう、咄嗟に浮かんだのがそれしかなかったんだ」
「お前の頭は絶望的だな」
「うるさい! お前に言われたくないわ!」
ウリエルからの叩きつけられるような反論を言われるがエリヤはスルーする。それよりも今後のことだ。
「エル、状況が変わった。お前はこれから一人でスパルタかコーサラに向かえ。国境を越えればやつらも手出しできねえ」
「え」
いきなりのことにウリエルも不安そうな声を出す。
「なにかあったの?」
「明日にもここに捜査が入るらしい。長居はできなくなった」
「エリヤはどうするの?」
聞かれエリヤは一端口を閉じたあと、意を決めてから言った。
「その間、やつらの注意は俺が引きつける」
「そんな」
ソファに座っていたウリエルが立ち上がる。すぐにエリヤの正面にまで駆け寄った。
「エリヤ、そんなの駄目よ。私のためだとしても、あなたが犠牲になるなんてこと、私は望んでなんてない!」
「エル!」
見上げるウリエルの肩をつかむ。必死に見てくる彼女の目をさらに必死に見る
「忘れたのか? お前が捕まったら、殺されるんだぞ! お前が許されない世界なんて、お前が救われない世界なんてあっちゃいけないんだよ!」
本音をぶつける。この人は救われなければならない。こんなにも優しくて、純粋で、平和を願っている者が、許されない世界なんてあってはならない。
エリヤの思いすべてがそう叫んでいた。
「お前は生きろ、約束しただろう」
両肩に込める力を緩めず、声を抑える。
「お前はもう十分救った。今度はお前が救われなきゃならないんだよ」
救われて欲しい。幸せになれ。エリヤが望むのはそれだけだ。
「自分を許せ。前に進め。自由に生きろ」
エリヤは肩から両手を離した。その後ふっと笑ってみせる。
「お前は笑ってる方がかわいいからよ」
その笑みにウリエルも表情を和らぎそうになるが、すぐに心配が顔に出る。
「でも、エリヤは? エリヤはどうなるの?」
自分に生きろと何度も言ってくれるエリヤ。その言葉を聞く度に喜びが胸からわき上がるが、だからといって彼が傷つくのは嫌だ。ウリエルだってエリヤと同じくらい彼の無事を祈っている。
「俺は犠牲にはならねえよ。安心しろ」
エリヤはそう言うがウリエルの不安は消えない。
「エリヤ。また会えるよね? 絶対、また会えるよね?」
「あったりまえだろ。俺は女と交わした約束は破ったことはねえんだよ。お前がどこにいようが、絶対見つけだしてやる」
不安が何度も吐き出される。心配が止まらない。これが最後の別れになりそうで、胸が締め付けられた。
そんな彼女に、この騎士はいつだって自信に満ちた顔で言ってくれる。
「約束だ」
その力強い言葉に、ウリエルは頷くしかなかった。
彼女の返事を見てエリヤも頷く。
「あの、兄さん?」
そこでリビングの扉が開けられシルフィアが顔を覗かせる。
「一応、ここに詰めるだけ詰めてみましたけど……」
シルフィアの手には大きめのカバンがあり衣類が入っているからか見ただけでもパンパンなのが分かる。
「おう、ありがとよ。ほら」
エリヤはシルフィアからそれを受け取りそのままウリエルに手渡してやる。
「あの、ありがとうございます。シルフィアちゃん、だよね? 突現お邪魔しておいてこんなことまで。それに、お弁当も」
「いえ、これくらい。お弁当はどうでしたか? お口に合えばよかったんですが」
「うん、とってもおいしかった。毎日すごいね。シルフィアちゃんならいつお嫁さんに行っても大丈夫だよ」
「えへへ~」
何度もシルフィアの弁当を食べたウリエルは断言する。あれは本当においしかった。エルのようなお姉さんに言われてシルフィアもよほど嬉しかったのかとろけた肉まんみたいな笑顔で喜んでいた。
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