天下界の無信仰者(イレギュラー)
そこには、満面の笑顔が咲いていた
小さな体とはいえ助走をつけた体当たりにはそれなりの重さがある。神愛はなんとか恵瑠を受け止めた。
「よかった。本当によかった……」
恵瑠は神愛の腹に顔を埋めている。両手で神愛の体にしがみつき、心の底から安心していた。とても心配していたんだろう。神愛の服を握りしめる手や声から彼女がどれだけ心配していたのか伝わってくる。
神愛は抱きついてきた恵瑠に驚いたものの、心配してくれていた彼女に表情を柔らかくし彼女の両肩に優しく手を置いた。
「俺は大丈夫だよ。こうしてピンピンしてるだろ?」
「よかったよぉ~~!」
「おい泣くなって!」
「だって~~!」
恵瑠が大声で泣き始める。涙が次々とあふれ神愛の服をタオルのようにして拭いていった。
ちょっと止めて欲しい。
「ボク、ボク、起きたら神愛君どこにもいないし。もう会えなくなったらどうしようって。そう思ったら苦しくて」
「恵瑠……」
けど、そんな思いは彼女の言葉で吹き飛んだ。彼女の想いが涙と一緒にこぼれ落ちていく。
「ずっと心配だった! 今だけじゃない! 神愛君と別れてからずっと! ずっと。ずっと神愛君のことばかり考えてた。もう会えないんだって思ったらすごく辛かった。だけど神愛君は来てくれて、約束を守ってくれて。すごく嬉しかったのに、なのにここでお別れなんて嫌だよ! だから、ずっと心配で……!」
彼女の気持ちは神愛にも痛いほど分かった。
彼女が目の前で殺されるという悲劇を味わった。その後再会したが彼女は敵に変わっており、もう昔のようにはいられないのかと苦悩した。ずっとずっと悩んで、苦しんでいたんだ。神愛だって。
彼女は泣いている。今までの出来事があまりにも辛すぎて。思い出すだけで涙が出るほど気持ちが揺れてしまう。
でも、神愛にはそれがむしろうれしくて。恵瑠には悪いが顔が緩んでしまう。
それほどまで、恵瑠も神愛を大切にしてくれていたという証だから。
「アホ」
「イテ」
神愛は恵瑠の頭を軽く小突いた。恵瑠が涙目で見上げてくる。表情はくしゃくしゃだ。そんな顔が可愛らしくて、神愛は明るい声で言ってやった。
「俺がそう簡単にくたばるかよ。ずっと一緒にいるって、約束しただろ?」
彼女が自分の正体を明かした時、それでも友達だと約束した。一緒にいると誓った。
それは変わらない。なにがあっても変わらない。
たとえ種族が違ったって。
たとえ敵になったって。
二人の絆は変わらない。
神愛の言葉に恵瑠は瞳を大きく見開いた。その後表情をほころびせる。
「うん!」
彼女は、幸せそうに頷いた。この今が最も幸せそうに。苦難も、苦悩も、悲劇もすべては過去になった。ここにあるのは、約束を果たした二人の絆だ。
「神愛君」
「ん?」
恵瑠は神愛の名を呼んだ。神愛は彼女を見つめる。
今に至るまで、数え切れないほどの困難があった。楽な道のりなんて一つもない。多くの出来事に神愛は時には傷つき、苦しみ、悲しんだ。
でもそれらを乗り越えた。どれほどの苦境も踏破して、神愛は信じて突き進んだ。これからも一緒にいたいという未来を想って。
そうして手に入れた。
これは、困難を乗り越えた先で得た、至高の今だ。
「ありがとう。大好きだよ!」
神愛の努力を祝福するように。そこには、満面の笑顔が咲いていた。
「よかった。本当によかった……」
恵瑠は神愛の腹に顔を埋めている。両手で神愛の体にしがみつき、心の底から安心していた。とても心配していたんだろう。神愛の服を握りしめる手や声から彼女がどれだけ心配していたのか伝わってくる。
神愛は抱きついてきた恵瑠に驚いたものの、心配してくれていた彼女に表情を柔らかくし彼女の両肩に優しく手を置いた。
「俺は大丈夫だよ。こうしてピンピンしてるだろ?」
「よかったよぉ~~!」
「おい泣くなって!」
「だって~~!」
恵瑠が大声で泣き始める。涙が次々とあふれ神愛の服をタオルのようにして拭いていった。
ちょっと止めて欲しい。
「ボク、ボク、起きたら神愛君どこにもいないし。もう会えなくなったらどうしようって。そう思ったら苦しくて」
「恵瑠……」
けど、そんな思いは彼女の言葉で吹き飛んだ。彼女の想いが涙と一緒にこぼれ落ちていく。
「ずっと心配だった! 今だけじゃない! 神愛君と別れてからずっと! ずっと。ずっと神愛君のことばかり考えてた。もう会えないんだって思ったらすごく辛かった。だけど神愛君は来てくれて、約束を守ってくれて。すごく嬉しかったのに、なのにここでお別れなんて嫌だよ! だから、ずっと心配で……!」
彼女の気持ちは神愛にも痛いほど分かった。
彼女が目の前で殺されるという悲劇を味わった。その後再会したが彼女は敵に変わっており、もう昔のようにはいられないのかと苦悩した。ずっとずっと悩んで、苦しんでいたんだ。神愛だって。
彼女は泣いている。今までの出来事があまりにも辛すぎて。思い出すだけで涙が出るほど気持ちが揺れてしまう。
でも、神愛にはそれがむしろうれしくて。恵瑠には悪いが顔が緩んでしまう。
それほどまで、恵瑠も神愛を大切にしてくれていたという証だから。
「アホ」
「イテ」
神愛は恵瑠の頭を軽く小突いた。恵瑠が涙目で見上げてくる。表情はくしゃくしゃだ。そんな顔が可愛らしくて、神愛は明るい声で言ってやった。
「俺がそう簡単にくたばるかよ。ずっと一緒にいるって、約束しただろ?」
彼女が自分の正体を明かした時、それでも友達だと約束した。一緒にいると誓った。
それは変わらない。なにがあっても変わらない。
たとえ種族が違ったって。
たとえ敵になったって。
二人の絆は変わらない。
神愛の言葉に恵瑠は瞳を大きく見開いた。その後表情をほころびせる。
「うん!」
彼女は、幸せそうに頷いた。この今が最も幸せそうに。苦難も、苦悩も、悲劇もすべては過去になった。ここにあるのは、約束を果たした二人の絆だ。
「神愛君」
「ん?」
恵瑠は神愛の名を呼んだ。神愛は彼女を見つめる。
今に至るまで、数え切れないほどの困難があった。楽な道のりなんて一つもない。多くの出来事に神愛は時には傷つき、苦しみ、悲しんだ。
でもそれらを乗り越えた。どれほどの苦境も踏破して、神愛は信じて突き進んだ。これからも一緒にいたいという未来を想って。
そうして手に入れた。
これは、困難を乗り越えた先で得た、至高の今だ。
「ありがとう。大好きだよ!」
神愛の努力を祝福するように。そこには、満面の笑顔が咲いていた。
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