天下界の無信仰者(イレギュラー)
恵瑠。お前に言いたいことがある
直後ウリエルの体に妨害の光がまとわりつく。彼女の全身が、八枚の羽が黄金に覆われる。
(動けない!? 空間転移は? 駄目だ、妨害されているッ)
ウリエルも振り解こうとするがすでに遅い。
神愛は右手を背後まで反り、拳に黄金が収束していく。
「これで――」
これが決着の一撃。
「終わりだぁあああ!」
神愛は放った。拳は下から上に振り抜き、ウリエルの腹部を直撃した。
「がっはぁ!」
拳の勢いは止まらず頭上にまで持ち上がる。ウリエルの足が地面から離れた。
神愛の拳の勢いに大気は黄金とともに渦を巻きウリエルの体を貫通していった。ウリエルの体を突き抜け空高く伸びていく。
その光が暗雲に当たった時、雲に穴が開き一瞬で消えていった。黒い曇はなくなり多くの光が地上に降り注ぐ。
世界が、光で満ちていた。
「あ……あ、あ……」
ウリエルは体をくの字に曲げ神愛の拳の上に乗っていた。互いの横顔が触れ合い、白い長髪が神愛の頬に掛かる。神愛全力の一撃に意識が揺れていた。
「恵瑠。お前に言いたいことがある」
そんなウリエルに、神愛は耳元でささやいた。
「…………?」
ゆっくりとウリエルの顔が動く。神愛の横顔をそっと見る。
神愛は真剣だった。気を緩めることなく、油断なく、決意を感じさせる声で。
「たとえ、なにがあろうと――」
言うのだ。
かつてした、二人の約束を。
「俺たちは、友達だ」
夕焼けの噴水で交わした、あの時を忘れない。
学園で友人だと言ってくれた、あの時の気持ちを忘れない。
世界に自分の居場所がなくて、敵しかいないこの場所で。
二人は出会った。
その奇跡を、その感謝を忘れない。
その時、ウリエルの胸に去来した思いはなんだったのだろうか。彼を救うと必死に抗ってきた。どんな炎にも負けない意思で戦ってきた。負けたくないと。失いたくないと。
なのに。
ウリエルの瞳から、一筋の涙が零れた。音もなく。静かに頬を流れていき、それは落ちていった。
そして、『恵瑠』は微笑んだ。
彼女の全身に光が集っていく。彼女を覆い、光は小さくなっていった。そこにいたのは神律学園の制服を着た恵瑠だった。ぐったりと倒れ目を瞑っている。
神愛は恵瑠の体を支え突き上げていた拳を下げる。彼女の華奢な体を肩に乗せゆっくりと地面に寝かせた。その表情は安らかで、口元は微笑みを残している。
よかった。彼女の笑顔に神愛も微笑んだ。
戦いは終わった。二人の戦いは激しく苛烈なものだったがこうして無事に終わった。その決着は、二人の笑みで締めくくれていた。
「主ー!」
すると背後からミルフィアの呼び声が聞こえ立ち上がりながら振り返る。
「主、ご無事ですか?」
二人の激闘によって荒れ果てた地面を器用に走りミルフィアは神愛の前に現れた。
「ああ、見ての通りさ。こいつも眠ってるだけで無事だよ」
言われミルフィアも横になる恵瑠を見た。
「恵瑠……、そうですか」
ホッと一息。ミルフィアは目を瞑り胸に手を当てる。神愛のことを信じてはいただろうが戦いの結末がどうなるかまでは分からない。
彼女なりに心配していたが、こうして決着がついて安心している。
ミルフィアは瞳を開けて微笑んだ。
「勝ったんですね」
青い瞳が愛らしく見上げてくる。
「当然だろ?」
ミルフィアの雰囲気に合わせ神愛は余裕っぽく笑ってみせる。実際にはどちらが勝ってもおかしくなかったが。
もし神愛に恵瑠を助けるという思いがわずかに届かなければ神化が追いつかず敗北していただろう。
けれど勝った。こうして無事にミルフィアと会えたことを嬉しく思う。
(動けない!? 空間転移は? 駄目だ、妨害されているッ)
ウリエルも振り解こうとするがすでに遅い。
神愛は右手を背後まで反り、拳に黄金が収束していく。
「これで――」
これが決着の一撃。
「終わりだぁあああ!」
神愛は放った。拳は下から上に振り抜き、ウリエルの腹部を直撃した。
「がっはぁ!」
拳の勢いは止まらず頭上にまで持ち上がる。ウリエルの足が地面から離れた。
神愛の拳の勢いに大気は黄金とともに渦を巻きウリエルの体を貫通していった。ウリエルの体を突き抜け空高く伸びていく。
その光が暗雲に当たった時、雲に穴が開き一瞬で消えていった。黒い曇はなくなり多くの光が地上に降り注ぐ。
世界が、光で満ちていた。
「あ……あ、あ……」
ウリエルは体をくの字に曲げ神愛の拳の上に乗っていた。互いの横顔が触れ合い、白い長髪が神愛の頬に掛かる。神愛全力の一撃に意識が揺れていた。
「恵瑠。お前に言いたいことがある」
そんなウリエルに、神愛は耳元でささやいた。
「…………?」
ゆっくりとウリエルの顔が動く。神愛の横顔をそっと見る。
神愛は真剣だった。気を緩めることなく、油断なく、決意を感じさせる声で。
「たとえ、なにがあろうと――」
言うのだ。
かつてした、二人の約束を。
「俺たちは、友達だ」
夕焼けの噴水で交わした、あの時を忘れない。
学園で友人だと言ってくれた、あの時の気持ちを忘れない。
世界に自分の居場所がなくて、敵しかいないこの場所で。
二人は出会った。
その奇跡を、その感謝を忘れない。
その時、ウリエルの胸に去来した思いはなんだったのだろうか。彼を救うと必死に抗ってきた。どんな炎にも負けない意思で戦ってきた。負けたくないと。失いたくないと。
なのに。
ウリエルの瞳から、一筋の涙が零れた。音もなく。静かに頬を流れていき、それは落ちていった。
そして、『恵瑠』は微笑んだ。
彼女の全身に光が集っていく。彼女を覆い、光は小さくなっていった。そこにいたのは神律学園の制服を着た恵瑠だった。ぐったりと倒れ目を瞑っている。
神愛は恵瑠の体を支え突き上げていた拳を下げる。彼女の華奢な体を肩に乗せゆっくりと地面に寝かせた。その表情は安らかで、口元は微笑みを残している。
よかった。彼女の笑顔に神愛も微笑んだ。
戦いは終わった。二人の戦いは激しく苛烈なものだったがこうして無事に終わった。その決着は、二人の笑みで締めくくれていた。
「主ー!」
すると背後からミルフィアの呼び声が聞こえ立ち上がりながら振り返る。
「主、ご無事ですか?」
二人の激闘によって荒れ果てた地面を器用に走りミルフィアは神愛の前に現れた。
「ああ、見ての通りさ。こいつも眠ってるだけで無事だよ」
言われミルフィアも横になる恵瑠を見た。
「恵瑠……、そうですか」
ホッと一息。ミルフィアは目を瞑り胸に手を当てる。神愛のことを信じてはいただろうが戦いの結末がどうなるかまでは分からない。
彼女なりに心配していたが、こうして決着がついて安心している。
ミルフィアは瞳を開けて微笑んだ。
「勝ったんですね」
青い瞳が愛らしく見上げてくる。
「当然だろ?」
ミルフィアの雰囲気に合わせ神愛は余裕っぽく笑ってみせる。実際にはどちらが勝ってもおかしくなかったが。
もし神愛に恵瑠を助けるという思いがわずかに届かなければ神化が追いつかず敗北していただろう。
けれど勝った。こうして無事にミルフィアと会えたことを嬉しく思う。
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