天下界の無信仰者(イレギュラー)
敵影確認!
首都ヴァチカンを目指し飛行するいくつものヘリがあった。
慈愛連立らしく白のカラーにハートの模様が描かれている。
暗雲立ち込める空の下、突撃するのはゴルゴダ共和国軍の第二波だ。
そこには聖騎士のヤコブと騎士が一人、さらに加豪と天和の姿もあった。
これから戦場に向かう緊張感にこの場は静寂に包まれている。眼下の街並みを通り過ぎていき、向かうは結界の支点南区になる、ピストロ駅である。
「あれが……」
加豪は窓から外を見た。向かう先には地上から天まで続く薄い黄色の光でできた柱がある。
その下にはサン・ジアイ大聖堂。そして上空には天界の門が収まっており、まさしく巨大な柱そのものだった。
「神愛たち、大丈夫かしら……」
第一波として突撃していった神愛たち。サン・ジアイ大聖堂正面にある北区は今や激戦だろう。
無事に突破できたかどうか。心配から加豪の表情には陰りが見える。
そこへ対面ななめに座るヤコブが口を開けた。目は閉じ腕を組んでいる。
「今は自分のことに集中しておけ。いらぬ心配は心労を増やすだけだ」
北区にはペトロも戦っている。心配なのは彼も同じだろう。それでもヤコブは気丈としていた。
また隣に座る天和からも励まされる。
「無事だと信じるしかいわ」
「……そうね」
二人の言葉に納得し加豪は表情を緩ませてからすぐに引き締めた。今は信じるしかない。
言われた通りこれからのことに集中する。加豪たちの任務も他人を心配しながら達成できるほど簡単なものではない。
「敵影確認!」
パイロットが大声で叫ぶ。全員が即座に前を確認した。そこには白い羽を広げ向かってくる、天羽の大部隊があった。
「まずい!」
「まだ数が多い!」
北区でペトロたちが天羽を引き付けてくれているとはいえすべてではない。
まだまだ制空権は天羽軍のものだ。十基にもなるヘリ部隊での突入にむこうも迎撃に出た。
ヘリから機銃を掃射する。天羽たちはすぐさま散開し襲いかかってきた。前衛に配置されていた三基のヘリに天羽たちが集中する。
剣を突き刺し何体もの天羽が群がり、ヘリは制御を失っていく。時にはプロペラにわざと羽を巻き込ませ墜落させていった。
「ちぃ!」
ヤコブが盛大に舌打ちする。数の暴力とはこのことか。押し寄せる天羽たちに成す術がない。
「すぐ飛び降りてくれ! このままじゃもたない!」
パイロットが叫ぶ。このままでは全滅だ。加豪たちは扉を開けるが、ヤコブは振り返りパイロットを見た。
「お前は!?」
ヤコブからの声に、パイロットは小さく顔を向けた。
「……お願いします、ヤコブ様」
「……まかせておけ」
彼の覚悟は受け取った。ヤコブは隣にいる騎士を掴むと飛び降りた。
「天和! 掴まって!」
加豪も天和を片手で引き寄せると飛び降りた。ビルの屋上よりも高い高度から地上を目指す。
パラシュートなどの類は一切ない。手ぶらでの落下だ。
加豪は落ちながらさきほどまでいたヘリを見上げた。そこには七体もの天羽が一斉に襲いかかり爆発し、煙を上げて墜落していくヘリの姿だった。
その光景に悲しみが込み上げるがそのような気持ちに浸っている余裕はない。
空中という身動きの取れない隙を突き加豪の周りにも天羽たちが襲ってきた。落下中とはいえ関係ない。
翼のある者たちは剣を振り上げる。
「雷切心典光!」
表情を歪めながらも神託物を出し右手で掴む。
左手で掴む天和を離すまいと力を入れ、正面から襲ってきた天羽の攻撃を雷切心典光で受ける。
「くぅ!」
天羽と押し合いくるくると回りながら落下していく。
「はあ!」
加豪は押し返すと雷切心典光の電力を上げていく。そして回転しながら周囲の天羽に放電した。
加豪からの攻撃に天羽たちは羽を焼かれ墜落していく。
加豪は着地前になんとか姿勢を正し、天和と一緒に両足で地面に落ちた。アスファルトの地面が衝撃で砕ける。
「天和、無事?」
「ん。平気」
それでも信仰者の二人に怪我はない。天羽からの攻撃も防げたようだ。
着地した場所はフォルティナ通り。正面広場の南にある通りであり両側を建物に挟まれた大きな道路が走っている。
このまま進めば正面広場に出るが目指すは西区だ。そのためにもここは迂回しなければならない。
そこへヤコブが空間転移で現れた。ともに降りた騎士も無事なようだ。ほかにも無事だった騎士を集めていたようで、ここには二十人近くの騎士がいた。
しかし、それも当初より少ない。
「探してみたがこれだけだ。ヘリは全滅だな」
「半分は持っていかれたか……」
慈愛連立らしく白のカラーにハートの模様が描かれている。
暗雲立ち込める空の下、突撃するのはゴルゴダ共和国軍の第二波だ。
そこには聖騎士のヤコブと騎士が一人、さらに加豪と天和の姿もあった。
これから戦場に向かう緊張感にこの場は静寂に包まれている。眼下の街並みを通り過ぎていき、向かうは結界の支点南区になる、ピストロ駅である。
「あれが……」
加豪は窓から外を見た。向かう先には地上から天まで続く薄い黄色の光でできた柱がある。
その下にはサン・ジアイ大聖堂。そして上空には天界の門が収まっており、まさしく巨大な柱そのものだった。
「神愛たち、大丈夫かしら……」
第一波として突撃していった神愛たち。サン・ジアイ大聖堂正面にある北区は今や激戦だろう。
無事に突破できたかどうか。心配から加豪の表情には陰りが見える。
そこへ対面ななめに座るヤコブが口を開けた。目は閉じ腕を組んでいる。
「今は自分のことに集中しておけ。いらぬ心配は心労を増やすだけだ」
北区にはペトロも戦っている。心配なのは彼も同じだろう。それでもヤコブは気丈としていた。
また隣に座る天和からも励まされる。
「無事だと信じるしかいわ」
「……そうね」
二人の言葉に納得し加豪は表情を緩ませてからすぐに引き締めた。今は信じるしかない。
言われた通りこれからのことに集中する。加豪たちの任務も他人を心配しながら達成できるほど簡単なものではない。
「敵影確認!」
パイロットが大声で叫ぶ。全員が即座に前を確認した。そこには白い羽を広げ向かってくる、天羽の大部隊があった。
「まずい!」
「まだ数が多い!」
北区でペトロたちが天羽を引き付けてくれているとはいえすべてではない。
まだまだ制空権は天羽軍のものだ。十基にもなるヘリ部隊での突入にむこうも迎撃に出た。
ヘリから機銃を掃射する。天羽たちはすぐさま散開し襲いかかってきた。前衛に配置されていた三基のヘリに天羽たちが集中する。
剣を突き刺し何体もの天羽が群がり、ヘリは制御を失っていく。時にはプロペラにわざと羽を巻き込ませ墜落させていった。
「ちぃ!」
ヤコブが盛大に舌打ちする。数の暴力とはこのことか。押し寄せる天羽たちに成す術がない。
「すぐ飛び降りてくれ! このままじゃもたない!」
パイロットが叫ぶ。このままでは全滅だ。加豪たちは扉を開けるが、ヤコブは振り返りパイロットを見た。
「お前は!?」
ヤコブからの声に、パイロットは小さく顔を向けた。
「……お願いします、ヤコブ様」
「……まかせておけ」
彼の覚悟は受け取った。ヤコブは隣にいる騎士を掴むと飛び降りた。
「天和! 掴まって!」
加豪も天和を片手で引き寄せると飛び降りた。ビルの屋上よりも高い高度から地上を目指す。
パラシュートなどの類は一切ない。手ぶらでの落下だ。
加豪は落ちながらさきほどまでいたヘリを見上げた。そこには七体もの天羽が一斉に襲いかかり爆発し、煙を上げて墜落していくヘリの姿だった。
その光景に悲しみが込み上げるがそのような気持ちに浸っている余裕はない。
空中という身動きの取れない隙を突き加豪の周りにも天羽たちが襲ってきた。落下中とはいえ関係ない。
翼のある者たちは剣を振り上げる。
「雷切心典光!」
表情を歪めながらも神託物を出し右手で掴む。
左手で掴む天和を離すまいと力を入れ、正面から襲ってきた天羽の攻撃を雷切心典光で受ける。
「くぅ!」
天羽と押し合いくるくると回りながら落下していく。
「はあ!」
加豪は押し返すと雷切心典光の電力を上げていく。そして回転しながら周囲の天羽に放電した。
加豪からの攻撃に天羽たちは羽を焼かれ墜落していく。
加豪は着地前になんとか姿勢を正し、天和と一緒に両足で地面に落ちた。アスファルトの地面が衝撃で砕ける。
「天和、無事?」
「ん。平気」
それでも信仰者の二人に怪我はない。天羽からの攻撃も防げたようだ。
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このまま進めば正面広場に出るが目指すは西区だ。そのためにもここは迂回しなければならない。
そこへヤコブが空間転移で現れた。ともに降りた騎士も無事なようだ。ほかにも無事だった騎士を集めていたようで、ここには二十人近くの騎士がいた。
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