天下界の無信仰者(イレギュラー)
今はこの名に甘んじよう。しかし、すぐに変わることになる。 目の前にいる、汚名の元凶を消し去って。
思い出す、これまでのことを。振り返る、なぜこんなことになったのか。
すれば出てくる出てくる、腹立たしい思い出が。自分から栄光を横取りしていったクサレ天羽が、それがどれだけ罪深いことかこれから思い知るといい。
「あの時は俺も連戦だったしよ、おまけに腹に穴も開いていた。決着の機会はいずれくるだろうと楽観してたが、まさかてめえが堕天羽になって雲隠れなんてよ。それを予期しろなんてさすがに無茶だぜ」
ベッドの上で待ち望んだ再戦。傷を回復させて、今に見てろよと思い続けて日々を過ごした。
それがどうだ、いざその時になれば相手は姿を消し勝負は勝ち逃げ。許せるものではない。
「でも、ようやくこの日がやってきた」
長い間だった、この日が来るまで。他の者なら風化して忘れてしまうだろう。もういいかと諦めてしまうだろう。
だが彼は違った。その熱は冷めることなく、驚くべき執念で保ち続けた。
再戦を。
挑戦を。
再び栄光を手にするその時を、彼は望み、望み続けた。
そしてついに、目の前にやってきた!
「あの時の決着だ、てめえをぶちのめし俺こそが四大天羽に相応しいと証明する」
サリエルの宣誓にウリエルも態度を変えた。理由を今度こそ理解した。それによって彼女に芽生えるもの。
「そういうことか」
それは怒り、許しがたいほどの激怒だった。ウリエルは拳を震わし、瞼を瞑った。
「そのために! お前はラグエルを殺したのかッ?」
ここに至ってウリエルも真相を理解した。始まりの事件。監査委員会委員長暗殺事件。
その犯人がサリエルであり、その動機は私怨。二千年前の使命ではない、この男は単なる自己満足のために仲間を殺したのだ。
「そうだよ、その通りさ。だがお前にそれを言われたくないなぁ」
ウリエルの指摘を認めるもそこに悪気は見られない。そんな些事に突っかかるなと態度で示す。
仲間の死すらどうでもいい。それよりも重要なのは、これからなのだ。
「返してもらうぜ、俺の称号を。あの方から頂いた、至高の天に座す俺たちの父!」
それは栄光、それは名誉。なぜならそれは、天羽全員が尊敬と敬愛を示す、あの方から授かった宝物。
ぶり返る嚇怒の熱に全身を焦がして、サリエルは積年の想いを叩き付けた。
「天主イヤス様から頂いた、四大天羽の称号は俺のモンなんだよぉお!」
なにものにも勝る名誉。それは彼ら天羽の創造主、三柱の神イヤスからの贈り物。これ以上になにを誇れと言うのか。
あるわけがない。これこそが至上最大の名誉だ。
サリエルはすでに戦闘態勢になっていた。手には空間転移で取り出した愛用の大鎌が握られている。
黒の細身の大鎌。拳銃などというチャチなものではない。本気で戦う彼のスタイルだ。
「仲間を手にかけたのか……」
その最中、ウリエルは悲しみに震えていた。仲間の死、最後の別れを思い出す。自分を救おうと必死に説得をしてくれたラグエルの顔。
それを無下に断る自分すら、彼は最後まで仲間として見つめてくれた。
優しく、思いやりのある男だった。偉大な天羽だった。
「ラグエル……!」
スイッチがここに入る。ウリエルは顔を上げた。
鎌首を上げる膨大な怒りの念。悲しみは反転し、敵意が思考を占めていく。
サリエルが誰よりも誇りを大切にしているように、
ウリエルにも、誰にも負けない正義感があるのだ。
「貴様、覚悟はあるんだなッ?」
青い瞳が最大限に見開かれサリエルを睨む。瞳の奥から感じる灼熱の意思。
これを前にして逃走など不可能だ。彼女が認めた罪人が灰になるまでウリエルは手をやめない。
サリエルにしてみれば好都合。これだ、これを待っていた。本気のこいつを倒さねば意味がない。
全力も全力、言い訳の余地がないこいつを倒してこそ、サリエルは四大の栄光へと返り咲く。
その歓喜を、その興奮を噛み締めながらサリエルは開戦の合図を告げた。
「天羽軍七大天羽サリエル」
今はこの名に甘んじよう。しかし、すぐに変わることになる。
目の前にいる、汚名の元凶を消し去って。
「さあ、始めようか! あの時の続きをなあ!」
対するは伝説の天羽、神の炎。
「天羽軍四大天羽、ウリエル」
静かに名乗りを上げる。だが直後、爆裂する戦意がこの場に轟いた。
「焼かれろサリエル! 天主に選ばれし四大の座において、貴様は私が裁く!」
「黙れ! それはこっちの台詞なんだよ!」
ぶつかり合う戦意と殺気。それは大気を震わせた。二人の間では猛風が暴れている。
互いに超越者、これほどの実力を持った両者が戦い合うなど天下界においても早々ない対戦カードだ。
ウリエルとサリエルの激闘。二千年ぶりの再戦、我慢に我慢を重ねた戦いだ。そこに手加減などあるわけがない。
開始するなりサリエルはサングラスを外した。
「死の視線」
見る者の命を吸い取る呪われた両眼。その眼光がウリエルを捕らえ体力と寿命を減らしていく。
二人の戦いが、ついに始まった。
すれば出てくる出てくる、腹立たしい思い出が。自分から栄光を横取りしていったクサレ天羽が、それがどれだけ罪深いことかこれから思い知るといい。
「あの時は俺も連戦だったしよ、おまけに腹に穴も開いていた。決着の機会はいずれくるだろうと楽観してたが、まさかてめえが堕天羽になって雲隠れなんてよ。それを予期しろなんてさすがに無茶だぜ」
ベッドの上で待ち望んだ再戦。傷を回復させて、今に見てろよと思い続けて日々を過ごした。
それがどうだ、いざその時になれば相手は姿を消し勝負は勝ち逃げ。許せるものではない。
「でも、ようやくこの日がやってきた」
長い間だった、この日が来るまで。他の者なら風化して忘れてしまうだろう。もういいかと諦めてしまうだろう。
だが彼は違った。その熱は冷めることなく、驚くべき執念で保ち続けた。
再戦を。
挑戦を。
再び栄光を手にするその時を、彼は望み、望み続けた。
そしてついに、目の前にやってきた!
「あの時の決着だ、てめえをぶちのめし俺こそが四大天羽に相応しいと証明する」
サリエルの宣誓にウリエルも態度を変えた。理由を今度こそ理解した。それによって彼女に芽生えるもの。
「そういうことか」
それは怒り、許しがたいほどの激怒だった。ウリエルは拳を震わし、瞼を瞑った。
「そのために! お前はラグエルを殺したのかッ?」
ここに至ってウリエルも真相を理解した。始まりの事件。監査委員会委員長暗殺事件。
その犯人がサリエルであり、その動機は私怨。二千年前の使命ではない、この男は単なる自己満足のために仲間を殺したのだ。
「そうだよ、その通りさ。だがお前にそれを言われたくないなぁ」
ウリエルの指摘を認めるもそこに悪気は見られない。そんな些事に突っかかるなと態度で示す。
仲間の死すらどうでもいい。それよりも重要なのは、これからなのだ。
「返してもらうぜ、俺の称号を。あの方から頂いた、至高の天に座す俺たちの父!」
それは栄光、それは名誉。なぜならそれは、天羽全員が尊敬と敬愛を示す、あの方から授かった宝物。
ぶり返る嚇怒の熱に全身を焦がして、サリエルは積年の想いを叩き付けた。
「天主イヤス様から頂いた、四大天羽の称号は俺のモンなんだよぉお!」
なにものにも勝る名誉。それは彼ら天羽の創造主、三柱の神イヤスからの贈り物。これ以上になにを誇れと言うのか。
あるわけがない。これこそが至上最大の名誉だ。
サリエルはすでに戦闘態勢になっていた。手には空間転移で取り出した愛用の大鎌が握られている。
黒の細身の大鎌。拳銃などというチャチなものではない。本気で戦う彼のスタイルだ。
「仲間を手にかけたのか……」
その最中、ウリエルは悲しみに震えていた。仲間の死、最後の別れを思い出す。自分を救おうと必死に説得をしてくれたラグエルの顔。
それを無下に断る自分すら、彼は最後まで仲間として見つめてくれた。
優しく、思いやりのある男だった。偉大な天羽だった。
「ラグエル……!」
スイッチがここに入る。ウリエルは顔を上げた。
鎌首を上げる膨大な怒りの念。悲しみは反転し、敵意が思考を占めていく。
サリエルが誰よりも誇りを大切にしているように、
ウリエルにも、誰にも負けない正義感があるのだ。
「貴様、覚悟はあるんだなッ?」
青い瞳が最大限に見開かれサリエルを睨む。瞳の奥から感じる灼熱の意思。
これを前にして逃走など不可能だ。彼女が認めた罪人が灰になるまでウリエルは手をやめない。
サリエルにしてみれば好都合。これだ、これを待っていた。本気のこいつを倒さねば意味がない。
全力も全力、言い訳の余地がないこいつを倒してこそ、サリエルは四大の栄光へと返り咲く。
その歓喜を、その興奮を噛み締めながらサリエルは開戦の合図を告げた。
「天羽軍七大天羽サリエル」
今はこの名に甘んじよう。しかし、すぐに変わることになる。
目の前にいる、汚名の元凶を消し去って。
「さあ、始めようか! あの時の続きをなあ!」
対するは伝説の天羽、神の炎。
「天羽軍四大天羽、ウリエル」
静かに名乗りを上げる。だが直後、爆裂する戦意がこの場に轟いた。
「焼かれろサリエル! 天主に選ばれし四大の座において、貴様は私が裁く!」
「黙れ! それはこっちの台詞なんだよ!」
ぶつかり合う戦意と殺気。それは大気を震わせた。二人の間では猛風が暴れている。
互いに超越者、これほどの実力を持った両者が戦い合うなど天下界においても早々ない対戦カードだ。
ウリエルとサリエルの激闘。二千年ぶりの再戦、我慢に我慢を重ねた戦いだ。そこに手加減などあるわけがない。
開始するなりサリエルはサングラスを外した。
「死の視線」
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二人の戦いが、ついに始まった。
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