天下界の無信仰者(イレギュラー)
変わらないものもある
忌々しく声が出る。サリエルも無論支配耐性を持っているがただの拳銃では及ばなかったようだ。
エノクは振り返ることなくサリエルの拳銃をバラバラに改変する。しかし攻撃は止まらない。左の次は右。
「はあ!」
ラファエルが放つ二十に届く一斉射撃。光矢は散弾銃のように分裂しすべてがエノクに襲いかかった。回避は至難、ヤコブでさえこれに倒れた。
だが、
「ふん!」
エノクは剣を一閃する。ラファエルが一発で二十の弓撃をするのならエノクは一撃で二十の斬撃だ、空間と回数を超越する攻撃がすべての光矢を迎撃する。
「なんて人……!」
攻撃がすべて無効化されたことにラファエルは眉間にしわが寄る。
「さすがに強いねぇ」
小手先の遠距離攻撃では歯が立たない。ミカエルはエノクへと向かって飛翔した。剣を突き立てエノクに突撃し幾度と剣を振るう。
「これだけの数を前にして退かぬその覚悟。私はね、今だから言うが君のことは嫌いじゃなかったよ」
「私は好かんがな」
「ああ、よく言われる」
殺し合いの剣戟のなか行われる悠長な会話。
しかし互いを貫くのは本物の殺意。ミカエルの一刀は大気を振るわしエノクの一撃は大地を割るほどだ。
それほどの力と力がぶつかれば周りが無事なはずがない。発生する爆風はビルのガラスを全壊させ、空振りに終わった一撃は延長戦上にあった車を吹き飛ばした。
二人が剣を振るう度、その余波だけで街が耐えられない。
これは戦いなんてものじゃない、戦争だ。あまりにも力が強すぎるため被害が対戦の域を越えている。
周りにいる天羽たちも隙あれば援護する構えだがこの激しさでは手が出せない。
エノクは戦いながら街の損傷を直していき、地上の被害を抑えるため上昇していった。
雲を突き破り青空を戦場とする。足下には雲が広がり一面の青が広がる。
ミカエルたちも後を追い雲を突き破ってきた。
「人間相手に空で戦うとは。二千年前では考えられないね。だけど、すべてが信仰者である天下界では探せば見つかる程度にはいるんだから変わったものだよ」
「変わらないものもある」
「そういうつもりで言ったわけじゃないんだが、まあいいか。そういうことだし」
エノクとミカエル。両者油断のない余裕を湛え、次なる開始を伺っていた。
「退け」
「ウリエル?」
そこへ声をかけてきたのはウリエルだった。ミカエルの背後から彼を押し退け前に出る。
「変わらんなミカエル。戦いの最中にぐだぐだと。お前の悪い癖だ」
「おお~、その遠慮のない物言い、君も相変わらずだねぇ」
ミカエルはウリエルの背中に声を掛けるが彼女は振り返るどころか無視する。本当に会話をする気はないようだ。
対峙するのはエノクとウリエル。そこは真剣な空気が張りつめ、遊びの入る余地のない死地だった。
「ウリエル、お前はそれでいいんだな?」
「…………」
エノクからの問いかけにもウリエルは答えない。厳しい表情のまま沈黙を守り続ける。
「そうか」
答えのない返答をエノクは肯定と捉え、剣を構えた。
「お前は、やはり殺して正解だったわけだな」
エノクは振り返ることなくサリエルの拳銃をバラバラに改変する。しかし攻撃は止まらない。左の次は右。
「はあ!」
ラファエルが放つ二十に届く一斉射撃。光矢は散弾銃のように分裂しすべてがエノクに襲いかかった。回避は至難、ヤコブでさえこれに倒れた。
だが、
「ふん!」
エノクは剣を一閃する。ラファエルが一発で二十の弓撃をするのならエノクは一撃で二十の斬撃だ、空間と回数を超越する攻撃がすべての光矢を迎撃する。
「なんて人……!」
攻撃がすべて無効化されたことにラファエルは眉間にしわが寄る。
「さすがに強いねぇ」
小手先の遠距離攻撃では歯が立たない。ミカエルはエノクへと向かって飛翔した。剣を突き立てエノクに突撃し幾度と剣を振るう。
「これだけの数を前にして退かぬその覚悟。私はね、今だから言うが君のことは嫌いじゃなかったよ」
「私は好かんがな」
「ああ、よく言われる」
殺し合いの剣戟のなか行われる悠長な会話。
しかし互いを貫くのは本物の殺意。ミカエルの一刀は大気を振るわしエノクの一撃は大地を割るほどだ。
それほどの力と力がぶつかれば周りが無事なはずがない。発生する爆風はビルのガラスを全壊させ、空振りに終わった一撃は延長戦上にあった車を吹き飛ばした。
二人が剣を振るう度、その余波だけで街が耐えられない。
これは戦いなんてものじゃない、戦争だ。あまりにも力が強すぎるため被害が対戦の域を越えている。
周りにいる天羽たちも隙あれば援護する構えだがこの激しさでは手が出せない。
エノクは戦いながら街の損傷を直していき、地上の被害を抑えるため上昇していった。
雲を突き破り青空を戦場とする。足下には雲が広がり一面の青が広がる。
ミカエルたちも後を追い雲を突き破ってきた。
「人間相手に空で戦うとは。二千年前では考えられないね。だけど、すべてが信仰者である天下界では探せば見つかる程度にはいるんだから変わったものだよ」
「変わらないものもある」
「そういうつもりで言ったわけじゃないんだが、まあいいか。そういうことだし」
エノクとミカエル。両者油断のない余裕を湛え、次なる開始を伺っていた。
「退け」
「ウリエル?」
そこへ声をかけてきたのはウリエルだった。ミカエルの背後から彼を押し退け前に出る。
「変わらんなミカエル。戦いの最中にぐだぐだと。お前の悪い癖だ」
「おお~、その遠慮のない物言い、君も相変わらずだねぇ」
ミカエルはウリエルの背中に声を掛けるが彼女は振り返るどころか無視する。本当に会話をする気はないようだ。
対峙するのはエノクとウリエル。そこは真剣な空気が張りつめ、遊びの入る余地のない死地だった。
「ウリエル、お前はそれでいいんだな?」
「…………」
エノクからの問いかけにもウリエルは答えない。厳しい表情のまま沈黙を守り続ける。
「そうか」
答えのない返答をエノクは肯定と捉え、剣を構えた。
「お前は、やはり殺して正解だったわけだな」
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