天下界の無信仰者(イレギュラー)
見くびるな、ミカエル
エノクは、諦めていなかった。
「見くびるな、ミカエル」
エノクは剣を振りかざす。この身は手負いだ、しかも全能故の全耐性も剥げ落ちている。殴られれば痛いし傷も負う。
だが、それは条件が同じになっただけだ。傷を負うのはミカエルも同じ。対等な勝負になっただけ。
「私はまだ、負けていない」
エノクの全身から猛風が吹き荒れた。直後、エノクの額の傷はなくなった。神愛に負わされたダメージ以外すべてを瞬く間に回復しエノクは鋭気に満ちた瞳で言う。
「神託物、招来」
「くるか……」
その言葉にミカエルはほくそ笑む。こうなることは分かっていた。むしろ本番はここからだ。
「いでよ、メタトロン!」
信仰者が高位者(スパーダ)として三柱の神に認められた時授かる神託物。彼らに与えられる天羽たちはそれ専用に創られた第二世代だ。二千年前にはいなかった天羽。
その中で唯一七大天羽として認められた、最大の天羽こそがこの神託物。
エノクの頭上、そこに光の輪が浮かび上がる。輪は急速に広がっていき、そこから巨大な足が下りてきた。みるみると全身を露わにして大地に降り立つ。
地上が揺れる。巨大な霊的質量は空間にすら影響を及ぼしその存在をすべてに伝える。それほどまでにこれは大きい。足元に立つビル群がよくできた玩具のようだ。
エノクの背後、そこにメタトロンは登場していた。エノクを見下ろすミカエルを見下ろし、七大天羽メタトロンが巨体と威容を持って天羽長と対峙する。
「ほう、これほどまで身近で見ることはなかったがホントにでかいね」
メタトロンの全長は百メートル。十階建てのビルでもメタトロンの腰にも届かない。まさしく巨大天羽である。
「だが、残念残念。せっかく会えたのだが、君も万全ではないようだ」
純白の石工細工を思わせるメタトロンの肌は実際人肌とは違い石のように滑らかで固い。いつもならば巨大な芸術品を思わせるメタトロンの体は、しかしツギハギだらけだった。
体中にひびが入り急造で組み立てたようだ。
神愛によって粉砕された体。それはエノクにも反動を与えたがなによりメタトロンの負担が大きかった。
こうして現れたものの本当ならば戦える状態ではない。入院患者に戦わせるようなものだ、それはエノクとて分かってる。
それでもエノクは召喚し、メタトロンは応じたのだ。
この窮地を挽回するために。メタトロンは言葉にせずとも行動で示す。共に戦いエノクの信念に応えると。
壊れた壺を組み合わせたような外傷は痛々しい。だが、メタトロンの闘志は神愛と戦う時よりもなお激しく迸っていた。絶対に負けられない状況に、今度の戦いにはエノクという相棒がいる。
負けられない。負けるはずがない。メタトロンは一度は砕かれた体に気合を入れて大地に立っていた。
「いくぞ」
召喚に応じたメタトロンの意思を汲み取りエノクにも一層気合が入る。その思いを無駄にしないためにも、この戦いは制さねばならない。
「さて、そう上手くいくかねえ?」
だがミカエルも負ける気はない。二千年も前から抱いた念願の時、それを成就するために。
エノクとミカエルの第二ラウンドの始まりだ。
「出てきたところ悪いんだけど、早速退場願おうか」
ミカエルは片手を上げる。念じるのは遥か彼方の宇宙空間。それと上空を一部繋ぎ合わせる。
エノクは空を仰ぎ見た。雲に隠れたその先にいくつもの脅威を感じ取る。
それはメタトロン目掛け飛来する複数の隕石だった。宇宙空間を彷徨う巨石を空間転移させ、メタトロンに衝突するよう持ってきたのだ。
空気との摩擦に全身を赤く熱しながら一直線に落下してくる。その質量、速度、威力はすさまじく、スパルタ帝国の科学者が発明したというミサイルに匹敵するほどだ。
天然の軍事兵器がしかも複数。
「見くびるな、ミカエル」
エノクは剣を振りかざす。この身は手負いだ、しかも全能故の全耐性も剥げ落ちている。殴られれば痛いし傷も負う。
だが、それは条件が同じになっただけだ。傷を負うのはミカエルも同じ。対等な勝負になっただけ。
「私はまだ、負けていない」
エノクの全身から猛風が吹き荒れた。直後、エノクの額の傷はなくなった。神愛に負わされたダメージ以外すべてを瞬く間に回復しエノクは鋭気に満ちた瞳で言う。
「神託物、招来」
「くるか……」
その言葉にミカエルはほくそ笑む。こうなることは分かっていた。むしろ本番はここからだ。
「いでよ、メタトロン!」
信仰者が高位者(スパーダ)として三柱の神に認められた時授かる神託物。彼らに与えられる天羽たちはそれ専用に創られた第二世代だ。二千年前にはいなかった天羽。
その中で唯一七大天羽として認められた、最大の天羽こそがこの神託物。
エノクの頭上、そこに光の輪が浮かび上がる。輪は急速に広がっていき、そこから巨大な足が下りてきた。みるみると全身を露わにして大地に降り立つ。
地上が揺れる。巨大な霊的質量は空間にすら影響を及ぼしその存在をすべてに伝える。それほどまでにこれは大きい。足元に立つビル群がよくできた玩具のようだ。
エノクの背後、そこにメタトロンは登場していた。エノクを見下ろすミカエルを見下ろし、七大天羽メタトロンが巨体と威容を持って天羽長と対峙する。
「ほう、これほどまで身近で見ることはなかったがホントにでかいね」
メタトロンの全長は百メートル。十階建てのビルでもメタトロンの腰にも届かない。まさしく巨大天羽である。
「だが、残念残念。せっかく会えたのだが、君も万全ではないようだ」
純白の石工細工を思わせるメタトロンの肌は実際人肌とは違い石のように滑らかで固い。いつもならば巨大な芸術品を思わせるメタトロンの体は、しかしツギハギだらけだった。
体中にひびが入り急造で組み立てたようだ。
神愛によって粉砕された体。それはエノクにも反動を与えたがなによりメタトロンの負担が大きかった。
こうして現れたものの本当ならば戦える状態ではない。入院患者に戦わせるようなものだ、それはエノクとて分かってる。
それでもエノクは召喚し、メタトロンは応じたのだ。
この窮地を挽回するために。メタトロンは言葉にせずとも行動で示す。共に戦いエノクの信念に応えると。
壊れた壺を組み合わせたような外傷は痛々しい。だが、メタトロンの闘志は神愛と戦う時よりもなお激しく迸っていた。絶対に負けられない状況に、今度の戦いにはエノクという相棒がいる。
負けられない。負けるはずがない。メタトロンは一度は砕かれた体に気合を入れて大地に立っていた。
「いくぞ」
召喚に応じたメタトロンの意思を汲み取りエノクにも一層気合が入る。その思いを無駄にしないためにも、この戦いは制さねばならない。
「さて、そう上手くいくかねえ?」
だがミカエルも負ける気はない。二千年も前から抱いた念願の時、それを成就するために。
エノクとミカエルの第二ラウンドの始まりだ。
「出てきたところ悪いんだけど、早速退場願おうか」
ミカエルは片手を上げる。念じるのは遥か彼方の宇宙空間。それと上空を一部繋ぎ合わせる。
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それはメタトロン目掛け飛来する複数の隕石だった。宇宙空間を彷徨う巨石を空間転移させ、メタトロンに衝突するよう持ってきたのだ。
空気との摩擦に全身を赤く熱しながら一直線に落下してくる。その質量、速度、威力はすさまじく、スパルタ帝国の科学者が発明したというミサイルに匹敵するほどだ。
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