天下界の無信仰者(イレギュラー)
二人一緒
それからしばらくしてミルフィアは俺から離れてくれた。俺は濡れた上着を着替えベッドに横になる。そして、ベッドにはミルフィアも横になっていた。
床に寝かせるわけにもいかず、ミルフィアには俺の横で寝てもらうことになった。
俺とミルフィア、二人並んで仰向けになっている。
「なんだか不思議な気分です。ここで寝るのは初めてではないのに」
「そりゃそうだろ。俺はベッドで寝てるのに、お前は奴隷が奴隷がとか言って床に座って寝てたもんな」
「それは! その……それが正しいと思っていたんです……」
「はは」
懐かしいな。最近までのミルフィアはほんと頑固で甘えがなくて、自分を徹底して奴隷として振る舞っていた。
こうしてお互い横になるなんてことなかった。これはきっと進展の証なんだろうな。
ミルフィアとは長い付き合いだ。ずっと俺の傍にいてくれた。
「なあミルフィア」
「はい」
思えば俺が黄金律を覚えようとしたのもミルフィアと友達になろうっていう気持ちからだ。彼女に傷ついて欲しくないって、これからも一緒にいたいって、そう思ってた。
「手、握ってもいいか?」
俺は顔だけをミルフィアに向ける。ミルフィアも顔だけを俺に向けていた。一瞬驚いたようだったけど、すぐに微笑んだ。
「……はい」
俺とミルフィアの手が触れ合う。見つめ合う中、指を絡め、握り合った。
「ミルフィア。これからも一緒にいてくれるか?」
俺が聞くと、ミルフィアは顔だけでなく体を俺へと向けてきた。
「言いましたよ、主」
金色の髪がさらりと流れる。青い瞳は暗がりでもよく分かった。ミルフィアは優しそうな眼差しで俺を見つめている。
「私は、ずっと傍にいます。これからもずっと。なにがあっても」
握り締める手に力を入れて、ミルフィアは変わらぬ宣誓を言ってくれた。
「ああ……。そうだったな」
それにふっと笑って、俺も手に力を入れた。
こうしていると胸に空いていた穴が埋まっていく気がした。
俺はミルフィアの安心感に包まれて、そのまま瞳を閉じていった。
*
めぐる私の人生の中で、私は何度もあなたと出会ってきた。いろいろなあなたと出会ってきた。
時には妹として。
時には支援者として。
時には相棒として。
あなたと多くの時間を過ごしてきた。
そして、何度もあなたの死を目撃してきた。
次こそは、あなたを幸せにしてみせると、その度に思うのに。
なのになぜだろう、私は、あなたを幸せにできない。
いつだって、あなたには不幸が訪れて。
私は、自分が許せない。
そして、なによりも許せないのは。
なぜ、あなたは幸せになれないのか。
人生の終わりの時、私はいつもそれだけを思ってる。
床に寝かせるわけにもいかず、ミルフィアには俺の横で寝てもらうことになった。
俺とミルフィア、二人並んで仰向けになっている。
「なんだか不思議な気分です。ここで寝るのは初めてではないのに」
「そりゃそうだろ。俺はベッドで寝てるのに、お前は奴隷が奴隷がとか言って床に座って寝てたもんな」
「それは! その……それが正しいと思っていたんです……」
「はは」
懐かしいな。最近までのミルフィアはほんと頑固で甘えがなくて、自分を徹底して奴隷として振る舞っていた。
こうしてお互い横になるなんてことなかった。これはきっと進展の証なんだろうな。
ミルフィアとは長い付き合いだ。ずっと俺の傍にいてくれた。
「なあミルフィア」
「はい」
思えば俺が黄金律を覚えようとしたのもミルフィアと友達になろうっていう気持ちからだ。彼女に傷ついて欲しくないって、これからも一緒にいたいって、そう思ってた。
「手、握ってもいいか?」
俺は顔だけをミルフィアに向ける。ミルフィアも顔だけを俺に向けていた。一瞬驚いたようだったけど、すぐに微笑んだ。
「……はい」
俺とミルフィアの手が触れ合う。見つめ合う中、指を絡め、握り合った。
「ミルフィア。これからも一緒にいてくれるか?」
俺が聞くと、ミルフィアは顔だけでなく体を俺へと向けてきた。
「言いましたよ、主」
金色の髪がさらりと流れる。青い瞳は暗がりでもよく分かった。ミルフィアは優しそうな眼差しで俺を見つめている。
「私は、ずっと傍にいます。これからもずっと。なにがあっても」
握り締める手に力を入れて、ミルフィアは変わらぬ宣誓を言ってくれた。
「ああ……。そうだったな」
それにふっと笑って、俺も手に力を入れた。
こうしていると胸に空いていた穴が埋まっていく気がした。
俺はミルフィアの安心感に包まれて、そのまま瞳を閉じていった。
*
めぐる私の人生の中で、私は何度もあなたと出会ってきた。いろいろなあなたと出会ってきた。
時には妹として。
時には支援者として。
時には相棒として。
あなたと多くの時間を過ごしてきた。
そして、何度もあなたの死を目撃してきた。
次こそは、あなたを幸せにしてみせると、その度に思うのに。
なのになぜだろう、私は、あなたを幸せにできない。
いつだって、あなたには不幸が訪れて。
私は、自分が許せない。
そして、なによりも許せないのは。
なぜ、あなたは幸せになれないのか。
人生の終わりの時、私はいつもそれだけを思ってる。
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