地獄屋物語

登けんぴ

第10話 尚人side

尚人side

入学式の日
思いっきり寝坊した俺は全力で自転車を漕ぐ
あー何やってんだよ!
入学式からこれはねーよ!
ゼェゼェと息を切らしながら角を曲がった
!!
ヤバ!
曲がったところで小さな子供が3人ほど立っていたのが目に入った
スピードを出しすぎた俺はブレーキでは間に合わない速さで子供らに突っ込んで行く
全力でハンドルを切る間に合わな…!
次の瞬間だった
ぶつかると思って眼をつぶる
けど子供とぶつかったという感触がないまま俺だけが地面に放り投げられる
痛っっ!
目を開けると…
3人の子供の足が浮いてる!?
顔を上げると同年代くらいの黒い服を着た背の高い男子が子供3人を抱えていた
…っハァァァ…
よかったぁぁ
その男子が俺の顔を覗き込む
…うわっ!クソカッケー

俺は昔から主に女子どもにカッコいーカッコいーって言われてきた
自分で言うのもアレだけど顔立ちは悪くないと思う。
だけど
この人は今までに見たことないくらい
マジでハンサムってやつだ

まあそんなことはさておき
…イッテェーー
折れただろコレ
「その制服…あいつの高校か」
あいつ?
「救急車呼んだから、あとはなんとかしろ」
へ?ちょ!
待って…

登校初日
「あの先生、あまり個人情報バラさないでもらえます?」
俺は教室に入った
「やっば!めっちゃイケメンじゃん!」
「彼女いるかな?」
「最高♡」
この反応はお決まりだ
正直…見てくれに乗るやつらばかり
いい気はしない

ん?
キャピキャピしてる女子とは裏腹にずっと窓の向こうを見ている女子がいる
メガネをかけた不思議な髪色のそいつ
「君の席は…」
女子の目が光る
う…
あ、窓を見てるそいつの隣が空いていた
「あそこ空いてんすか?」
「空いてるぞ」
あそこが一番マシな気がする

「なんでブス子の隣なの?」
ブス子?
ふーん、だから空いてたのか

俺はツカツカと進みそいつの隣に座った
コレが俺と山野ミナキとの出会いだった

現在
ところで俺は先日晴れて山野の友達になった
なんだかんだ言って俺の高校最初の友達かもしれない。
せっかくだから一緒に帰ろうと思い追いかけたんだけど
校門を出たところであいつと話してたやつは誰だったんだろう?
なんだろう…どこかで見たことのある感じの人だった気がする
黒い服を着た…背の高い?
不意に入学式の時あったハンサム君と重なった
いや、でも…な
黒い服の背の高い男なんていっぱいいるよな
うん、直接聞くのが一番だ!

翌日
「山野、昨日話してた黒服の男の人って」
そこまで言いかけた時だった
山野が勢いよく立ち上がった
「…話の内容…聞いた?」
「え、いや、見かけただけだけど」
話の内容を探ろうとして近づいたことは言わないでおこう。
まあ実際内容は聞こえなかったしね
「そう…ならいいんだ」
なんだ?聞かれたらまずかったのか?
「その男の人ってさ」
あ、えーっと
その人の特徴がわからない
スッゲェハンサムだってことはわかるんだけどな
「あー」
あ?
言葉を続けようと思ったら山野がいねぇ…
いつの間に消えたんだよあいつ

俺の高校最初の友達はとても謎が多い
不思議なやつだった

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