地獄屋物語

登けんぴ

第6話

地獄屋に続く細い道を出てきたフード
フードを取ると風になびく茶色い髪
「さて、どうすっかなー」

田沼エリカが取り巻きたちと別れて1人歩く帰り道
いつも気を張ったエリカとは違い大きなため息をついた
一際大きな家に入る
「ただいま…」
静まり返った家の中
再びため息をつく


友達と別れて1人歩く宇佐美智之
近づく黒い影
「宇佐美先輩…だっけ」
誰かに呼び止められる
黒っぽいパーカー、フードを被った顔の見えない人物だ
「何お前」
フードは宇佐美の背中側を指差した
「この先にブランドのアクセショップあったよね」
「は?」
宇佐美は思わず顔をしかめる
「すごく面白いものが見られそうだよ」
「は?意味わかんねーんだけど」
フードの下でかすかに微笑む
「君が間違ってるっていう証拠」
「は?」
フードはさっと消えた
「なんだよ…あいつ、キモ」
宇佐美はチラッとアクセショップの方を見る
「チッ」
舌打ちをして進行方向を変えた


宇佐美side
なんなんだ今のやつ 気色悪い
いきなり現れて意味不なこと言って
俺が間違ってるって証拠?
なんだよそれ、何が間違ってんだよ
意味わかんねー
とはいってもさっきからアクセショップの方へ目がいってやまない
あんなこというから異様な好奇心にみまれる
「チッ」
あいつのいいなりになってるようで気にくわないけど…
俺はアクセショップへと足を向けた 

しばらく行くとアクセショップが見えてきた
こんなとこ来たことないからなんか変な感じ
あれ?
アクセショップはもう少し向こうにあるけど、俺の前方はガードレールが線を引いている
は?こっからじゃ行けねーじゃん
あのフードが指差した方に歩いて来たのに…
なんだよあいつ腹立つ
引き返そうと思ったら視界の端に見慣れた姿が映る
あれは…田沼エリカ
田沼といえば…

遡ること2日
「宇佐美セーンパイ♡」
昼休み、田沼エリカが俺んとこに弁当を持ってくる
結構前に付き合ってくださいとか言われてめんどくさいから保留にしたんだっけ
「一緒にお昼しましょ♡」
こいつはよく昼休みくるけど昨日は来なかったな
なんか転入生が来たとかいってたっけ?
俺が何も言わなくても田沼は勝手に俺の隣で弁当を広げる
「先輩に見て欲しいものがあるんですぅ」
相変わらず変な喋り方だな
田沼がスマホを見せて来た
そこにはブッサイクな顔でずっこけている女が写っていた
ひどい写真だな
「この子ぉ先輩のストーカーなんですよ」
は?
「先輩の部活中とかいっつもジロジロとやらしい目で見てたんですよぉ〜」
それにしてもこの女の顔ひどい
超ブサイク
見た目での判断は良くないって言うけど
可愛い子に見られるかそうでないやつに見られるかじゃ感じ方が違うのは当たり前だ
まあ、最も俺は可愛いとか思った事のある女はいない
…いや、一回ちょっとだけあった

だいぶ前
新人戦が近づいてきた焦りから俺は朝早くに学校に来て練習をしようとした
そしたら後輩か?1人の女子が中庭のコートを見上げて立ってた
「うおっマジか先客?」
俺の声に振り向いたそいつ
一瞬ドキッとしてしまった
黒く長い髪にほんわかした目つき
彼女は目を丸くしてこっちを見ていた
「ボールないけど…使ってんの?」
平静を装ってすまして聞く
「い、いえ!ぜひっ、使って下さい!」
あたふたとその場をどいて両手を広げる
どうぞと言わんばかりにニコニコ笑っている
その時、なんだろうちょっと心臓がデカく鳴った
「じゃあ遠慮なく」
俺のプレイをなんとも嬉しそうに見ていた彼女
いつもより長く練習した
ちょっとだけカッコつけて…

なんか回想に浸ってたら田沼が身を乗り出してきた
「すとーかー!ですよ?」
あーその話だったな
この前の子みたいなやつなら別に…
って俺キモw
「キモイですよね、キモイですよね?」
やたら顔を近づけてくる
そりゃストーカーはキモいだろ
「キモイな」
田沼はニッコリ笑った
「先輩のことつけまわすかもですよ」
「それはキモイな」
「ですよねーこの子盛岡恵っていうんですよ」
なんか元気いいな
盛岡恵って聞いたことないな
「付け回したらどうします?最悪ですよね」
あ?なんださっきから
「まあ最悪だな」
その日の田沼はほんと変だった


で、現在に戻るけど
田沼はなんかチラチラ周りを見ながら移動してて挙動不審ってやつだ
なんとなく気になって見ている
その時!
俺は確かに見た
田沼がカバンの中に口紅を突っ込んだのを!
すっげえ早かった
慣れた手つきっていうのが一般人の俺でも分かる
あいつ…なんで
金持ちで有名じゃねえか
すると再び周りを気にしだす
まさか…
今度はなんかのアクセサリーを取った
あいつ…これは事情聴取だな

帰ろうとその場を離れると
「君は間違ってるよ」
うわっいつのまにフードが復活してる
「間違ってるって何だよ」
「色々だよ、そのエリカってやつ?一応君には
『一目惚れしましタァ♡』って言ってるみたいだけど」
え、何今の怖いくらい田沼に似てたんだけど
「その女のクラスに来た転入生にも似たようなこと言ってアピってるみたいだよ?」
は?
何こいつ、何言ってんだ?
なんでそんなことしってんだ?
「嘘だと思うならこっそり教室行って見なよ。よくまあ飽きずに毎日毎日ぶりっ子してるからw」
何言ってんだよ!
って言い返そうとするがなぜだろう納得してしまう
「ストーカーとか言って偏見してる子いるらしいけど」
盛岡恵のことか?
なんでこんなに知ってんだ?
こ、怖ぇ
「なんでそんなこと知ってんだよ、お前こそストーカーかよ」
まじ意味わかんねー

「お前になんか超絶興味ねーよ」
うわっ!
声のトーンが変わりオーラが完全に黒くなった
こ、怖ぇ
「そうやって簡単に人をストーカー扱いして、自分に向けられた好意さえもキモいって突き放して、純粋にお前を好いたやつの気持ち踏みにじってんじゃねーよ」
純粋な好意…
「要するにお前は自惚れたクズだってわけだ」
何も言い返せない
「田沼エリカ、そいつの企みのせいでお前に嫌われた可哀想な奴がいるんだよ」
それって…盛岡恵ってやつ?
でも誰が盛岡恵かわかんねーんだよな
「それでもその子は純粋にお前を思ってんだよ…よく考えろ」
フードは消えた

確かに俺は田沼に言われたことを全部受け止めてガキみたいに騒いでた
その時の盛岡恵ってやつの気持ち考えると…申し訳なくてたまんねーよ
何のために田沼が万引きなんてしてるかはわからないし俺にとっちゃどうでもいいことだ
でも俺を想ってくれてるやつを悪くいうのは…
俺は拳を握った
謎のフードのやつの言ってることはムカつくけどド正論だ
俺が今何をすべきか…


NOside
エリカはいつも通り取り巻きたちに囲まれていた
「これあのブランドの新作の口紅ですよね!」
取り巻きの1人がエリカの手の中にある口紅を見て言った
「え、あのブランドのですか?」
「ええ、もちろん!このアクセもそうよ!」
「エリカさんすごーい」
エリカの手に光るアクセサリー
それは昨日万引きしたものたちだった

そして事件は起こる
授業中の事だった
エリカの携帯がブーっと震える
エリカは普段から授業中問わず携帯をこっそりではあるが使っている
エリカは教師の目を盗み携帯を見た
すると宇佐美からラインが入っていた

  ー 昼休み話がある
             何ですか??♡ ー
  ー 昨日アクセショップで何をした?
           何の話ですかぁ?? ー
  ー 盗っただろ、俺は見た
  ー 万引きしただろ

「な、何!」
思わず立ち上がったエリカ
「どうした?田沼」
「い、いえ…」
すぐに坐り直す
しかしぎこちないまま昼休みを迎える
すると
「おい…田沼」
宇佐美が手招きでエリカを呼んだ
「ちょっと来い」
しぶしぶ席を立つエリカ
取り巻きたちについてくるなと合図を送る

「何で万引きしたんだ」
宇佐美に問い詰められるエリカ
しかし口を開こうとはしない

その2人の様子を見ていた人物
茶色い髪に抜群のスタイル
少しばかり赤く光った瞳

しかしその人物はフードをかぶっていない
その上、女子の制服を着ていた
「面白くなってきたなー」
ニヤッと笑った

               つゞく

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