異能者学校へようこそ!〜最強異能者の少年〜
僕の記憶の謎
朝の5時。
いつもより、かなり早い時間に目を覚ました雫は、早速家事に取り掛かった。
昨日洗った服を干し、掃除機をかけ、夜ご飯の仕込みをすませる。
そうして一通り終わると、ソファーに座り、ボーっとベランダを見る。
(………昨日、本当に仕事したんだよね……?)
視界の端に着た覚えのない、黒い仕事服が風に揺られているのを見て、首をかしげる。
(………4回目だ。僕が伊野海学校に入学してから。)
ーーー突然だが、僕はたまに記憶が消えることがある。
なぜか、と言われても僕にも分からないから、答えようがない。人に聞こうにも、記憶を失う時が、殆ど暗殺の時なので、聞きようがなかった。
いや、むしろ覚えていない方が幸運なのかもしれない。いくら仕事だと割り切っても、暗殺は全然良いものではない。
しかし、やはり記憶がなくなるのは、気味が悪く、一度師匠に聞いてみたら、一瞬驚いた顔をして、その後泣きながら必死に謝られた。
…………そんな風にされてから、理由を聞くことも出来なくなった。だって、もうあんな顔は、見たくないから。
まぁ、そんなこんなで、結局僕の記憶の謎は、未だに解決されていない。
(気にしなければ良いだけ。……だけど、最近は回数が増えてきてる……)
伊野海学校の入学式は、今から5ヶ月程前に行われた。僕が入学したのは、その2ヶ月後の事だ。
つまり、この学校に来てから、3ヶ月しか経っていない。それなのに、4回も記憶が消えている。
(………今までは多くても、半年に1回あるかないかだったのに……)
……もしかしたら、僕が知らない条件があるのかもしれない。
調べてみて分かったが、僕が記憶を失くす時は、関連性があった。それは恐らく【自分がピンチに追い込まれた時】だ。
何故そう考えたかというと、いつもは無傷で仕事を終えるが、記憶がない時は、必ず怪我を負っているからだ。
中には例外もあったので、もしかしたら根本的に間違っているのかも知れないが……
条件が増えた可能性も、否定出来ない為、何とも言えない。
「ピロリロリーン♬」
部屋に陽気な音が鳴り響く。
……どうやら、ご飯が炊き上がったみたいだ。
雫は思考を一旦停止して、時計をみる。時計は6時半を指していた。
(……まだ学校に行くには、時間があるなぁ…)
少し考えるように目を伏せた後、首元から学校用のアーティフェクトを取り出す。
そこから雫は、朝食と準備を済ませ、師匠の住処へと向かった。
僕の家から少し離れた所にある、師匠の住処(と言うよりは訓練所のようなものだが)は、ビルが立ち並ぶ、街の中心地にある。
駅から出て少し歩くと僕は、数あるビルの中の一つである、シックな雰囲気のビルへと足を運んだ。
入り口から堂々と入っても、通行人から怪しまれることはない。
(………まぁ、気配とかなるべく消してるからね。)
そうして問題なくビル内に入ると、長い廊下が続いている。どこもかしこもドアだらけだ。
その中の一つに、迷いなく歩を進める。指輪型のアーティファクトをセンサーに通すと、ドアがひとりでに開いた。
扉が閉まる音を背に、ひたすらに暗い廊下を進むと、再びドアに当たった。
………ちなみにこの暗い廊下には、いくつもの仕掛けが施されており、一つでも引っかかると、普通の人なら死ぬ。
ドアノブに手をかけ、深呼吸を一つする。
ドアノブを引き、ドアをくぐり抜けた瞬間、僕は猛スピードで走り出した。
そのすぐ後ろからは、張り付きの天井が落ちてきている。勿論刺さったら、文字通り血の海になって、見るも無様な姿で死ぬ。
そうこうしている間に、廊下に突き当たりが見えた。
そこへ進路を急激に変えて、でんぐり返しのように転がり込む。
やっとの思いで部屋にたどり着き、息を整えていると、僕にいつものメンバーが馴れ馴れしく話しかけてきた。
「やっほぅ〜しっちゃん〜」
「よう、死神カマ野郎。」
僕は額に青筋を浮かべる。しかしその後に続いた言葉に目を輝かせた。
「ああ、こちらにくるのは、久しぶりじゃないか?しー?」
「師匠!お久しぶりですっ!」
今話し掛けてきた、この人は僕の師匠だ。
コメント
月
最後の方、主人公が犬のように思えた…。
続き待ってます(*´艸`*)