オタとツン属性を併せ持つ妹に、なぜか連夜催眠術を施されることに
第6話
◆
私は莉里那が疑念を抱かないよう瞳を固く閉じ、ごくごく自然に催眠術にかかっているフリを続ける。
「右手を上げて〜」
言われて膝に置いていた右手を、少しだけ持ち上げる。
「今度は左手だけを上げて〜」
いつもの流れである。そしてこの後は身体が重くなっていく催眠に移行していく。
「ニィーニ、演技とかしてないですよね? 」
ん?
この展開は初めてである。
とにかくここはノーリアクションでスルーだ。
「……そしたら、こんな事をしても大丈夫ですよね? 
これはあくまでも、ニィーニが演技をしていないかを確認するため、仕方がないことなのです」
私は瞳を固く閉じているため、何も見えない。
……今からなにをされるのだ?
そして私の頬に、なにかが触れた。
とても柔らかな、暖かなものが。
これって、いやそんなことは——
「キスしちゃいました」
いっ、いや待ってくれ! 本当に?
と言うか、どうしてこうなった!?
「あっ、これは、催眠術にかかったかどうかを調べるためなので、ノーカウントですよ? 」
えっ? 今のはノーカンなのか?
それなら大丈夫……いやいやそんな訳はない。
「ちゃんと催眠にかかってるようなので、いつものように始めるのです。
それでは……、ニィーニはリリィから『大好き』って言われたら言われただけ、いま同じ空間にいるリリィが大好きになっていく」
そして耳元に莉里那の吐息が迫る。
「お兄ちゃん、大好き、お兄ちゃんが大好き、大好き大好き、お兄ちゃんが大好き、ずっと見てた、大好き——」
莉里那の甘い囁きは、まるで私の脳みそに染み込むようにして一つ一つ刻み込まれていく。
——心地よい。
しかしこれは洗脳に近いのではないだろうか?
いや、これは催眠が上手くいくよう、洗脳しているようなものなんだろう。
身体中を走るむず痒さに耐えながらも、そんなことを考えていると——
……あっ。
莉里那が突然私の膝にお嬢様座りで乗ると、そのままギュッと抱きついてきた。
そのため莉里那の甘い香りが届く中、その柔らかな身体付きを感じる私の太ももと上半身に、莉里那の熱が伝播してくる。
私はその蕩けそうな刺激にさらされながらも、必死に微動だにしないよう努める。
しかしそれは水中で息を止めているのに等しく、時間と共に半開きになってしまっている私の口からは、意図しない呼吸音が漏れてしまっていた。
とそこでスッと莉里那が離れた。
そして——
「さてと、今日は新たな試みをするのです」
私の状態をよそに、莉里那は明るい口調でそう言った。
しかし新たな試み?
そんな話は今まで聞いたことがない。
「その新たな試みとは、ズバリ、口寄せの術なのです」
口寄せの術、それは忍者が使う忍法なのでは?
なんとなく、異世界から離れた?
そんな脳内ツッコミをする私に言い訳するようにして、莉里那は説明を始める。
「口寄せの術とは、ファンタジー風に言うと召喚魔法。つまり、別のところから魔物や妖怪を呼び寄せる、時空間移動、即ち時空魔法なのです! 
これを応用して逆転させたら、押しかけ勇者召喚なのです! 」
なるほど、今の説明はとても分かりやすい。
つまり口寄せの術で異世界に行くと言うことなのだろう。
しかし簡単に言っているが、逆転ってかなり難しいのでは?
いや、そもそも本当にそんな術が存在するわけがないのであった。
「そしたら行きますよ!
あなたはだんだん眠くなる、あなたはだんだん眠くなる〜」
ん?
それって、五円玉を振り子のよう揺らしながら行なう催眠だよね?
私はいま、ガッチリ目を閉じているのだが。
「そしたら、口寄せの術を始めるのです」
まぁ、莉里那の設定の甘さが出たのだろう。
そして莉里那によって、私の眼鏡は外され唇になにかが触れた。
このつい先ほど頬に感じたのと同じ感触は、……莉里那の唇!?
驚きで一瞬止まっていた心臓が、遅れを取り戻すようにして早鐘を打ち始めている。
しかしこれは——
軽く触れてきた唇は柔らかく、莉里那が体重をかければかけるだけ、私の唇との密着度を増していく。
そして柔らかな感触は、何事もなかったかのようにしてそっと離れていった。
「今のではダメでしたか。いえ、まだまだ分かりません、……もう一度」
莉里那の独り言。
それはどこかぎこちないものであり、今からもう一度キスをする宣言でもあった。
いつされるのか?
すぐされるのか?
目を閉じているため、その間はとても長く感じてしまう。
そして研ぎ澄まされた私の感覚は、莉里那の呼吸音と気配を探ってしまっていた。
そこで気配が動いた。
微かに聞こえる吐息の中、それは少しずつ近付き、程なくして私の唇に触れてきた。
研ぎ澄まされた触感は、その唇がプニッと押し付けられたり軽くハムハムされているのを克明に感じ取っていく。
そして私の心臓は、莉里那に聞こえているのではと言うぐらい、ばくばく鳴ってしまっている。
それに熱い。
この感じだと、私は耳まで真っ赤にしてしまっているだろう。
そしてまた唇が離れていった。
莉里那も興奮しているのか、呼吸音が明確に荒くなっていた。
「はぁはぁはぁんぐっ……もう少しだけ、もう少しだけ密着を増やせば、ゲートが開くような気がするのです」
莉里那がこれから行なう悪戯に対する、言い訳のような囁き。
そして再度良い香りと共に近付いてくる気配。
そこで私はそっと薄目にしてみた。
すると両眼を閉じた莉里那が、恥ずかしそうに顔をこれでもかっと言うぐらい真っ赤に染め上げていた。
そして三度目のくちづけ。
今度は私の上唇を軽く唇で挟み込み、吸い付くようにしてキスをしてきた。
しかも今回、唇だけではなく莉里那の舌も私の唇に軽く触れているようで、そのため莉里那のくちづけは次第に水気を帯び、それが潤滑油となりより一層の密着度を私たちにもたらしている。
しかしキスとはこんなに気持ちの良いものなのか。
そこで私もされるだけではなく、莉里那の柔らかな唇を味わいたい欲求に駆られてしまい出す。
でもこちらからしてしまうと、私が狸寝入りをしている事がバレてしまう。
でも少しなら、ほんの少しだけなら——
そうだ、軽く唇を動かすだけなら無意識に動いたと思ってくれるかもしれない。
そうして吸い付いてくる莉里那の唇に、私はそっとだけ吸い付き返した。
——柔らかい。
少し吸い付き返しただけなのに、密着度は更に上がった。
ただし唇と唇が少しだけ離れてしまった時に、軽く『チュッ』とリップ音がなってしまう。
静まり返る室内では、その小さな音でさえ心臓が飛び出そうなぐらいの大音量に聞こえたのだが、莉里那は気づかなかったのかくちづけを止めない。
いや、さらに過激になっているような——
「んっ、んっ」
しかし不味いかもしれない。
キスがもたらす予想以上の快楽に、脳は痺れもっと激しく弄りあえとさらなる信号を送ってくる。
私はその欲求を必死に耐えようとするのだが、気持ちよくもモドカシイ気持ちで頭が支配されてしまっている。
しかし終わりはやってくる。
そっと離れる莉里那の唇。
そこで私は、残念なほどの名残惜しさを感じる自身に気付く。
これは……私は、莉里那を完全に一人の女性としてみてしまっているのでは?
血は繋がらないが、……繋がらないとはいえ、これは妹ととの不埒な関係。
それが続き進んでいけば——
しかしそれは社会的にどうなのか?
そこで抱きしめられる。
そして私の首筋に柔らかな感触が。
これは莉里那が私の首筋にキスをしているのだ。
わざとらしく『チュッチュッ』と何度もリップ音を鳴らす、可愛らしくも扇情《せんじょう》的な気分にさせられる、熱いキスを。
そして暖かくぬめっとしたものが私の首筋に触れ、あまりの気持ち良さでぞくっと身体が震えてしまう。
これは莉里那の舌!?
私の首筋に触れる莉里那の舌先は、触れるか触れないかのところを、ツーとゆっくり下から上へと這ってくる。
ぞくぞくとした心地良い感触に、声を上げてしまいそうになるのを耐え動かないでいると、ついに莉里那の舌先が耳朶《みみたぶ》にまで辿り着いた。
そこからハムハムされる私の耳朶。
唇での吸い付く音が、ねちゃねちゃと這い回る舌先の音が、そしてはぁはぁと漏れ出る熱い吐息が、私の頭を莉里那で一杯にする。
しかし莉里那は脈略もなく、その私をトリコにする動きを何故か止めてしまう。
そして少しだけ私から離れた莉里那は——
「ニィーニ、……起きてますよね? 」
とたしかにそう呟いた。
私は莉里那が疑念を抱かないよう瞳を固く閉じ、ごくごく自然に催眠術にかかっているフリを続ける。
「右手を上げて〜」
言われて膝に置いていた右手を、少しだけ持ち上げる。
「今度は左手だけを上げて〜」
いつもの流れである。そしてこの後は身体が重くなっていく催眠に移行していく。
「ニィーニ、演技とかしてないですよね? 」
ん?
この展開は初めてである。
とにかくここはノーリアクションでスルーだ。
「……そしたら、こんな事をしても大丈夫ですよね? 
これはあくまでも、ニィーニが演技をしていないかを確認するため、仕方がないことなのです」
私は瞳を固く閉じているため、何も見えない。
……今からなにをされるのだ?
そして私の頬に、なにかが触れた。
とても柔らかな、暖かなものが。
これって、いやそんなことは——
「キスしちゃいました」
いっ、いや待ってくれ! 本当に?
と言うか、どうしてこうなった!?
「あっ、これは、催眠術にかかったかどうかを調べるためなので、ノーカウントですよ? 」
えっ? 今のはノーカンなのか?
それなら大丈夫……いやいやそんな訳はない。
「ちゃんと催眠にかかってるようなので、いつものように始めるのです。
それでは……、ニィーニはリリィから『大好き』って言われたら言われただけ、いま同じ空間にいるリリィが大好きになっていく」
そして耳元に莉里那の吐息が迫る。
「お兄ちゃん、大好き、お兄ちゃんが大好き、大好き大好き、お兄ちゃんが大好き、ずっと見てた、大好き——」
莉里那の甘い囁きは、まるで私の脳みそに染み込むようにして一つ一つ刻み込まれていく。
——心地よい。
しかしこれは洗脳に近いのではないだろうか?
いや、これは催眠が上手くいくよう、洗脳しているようなものなんだろう。
身体中を走るむず痒さに耐えながらも、そんなことを考えていると——
……あっ。
莉里那が突然私の膝にお嬢様座りで乗ると、そのままギュッと抱きついてきた。
そのため莉里那の甘い香りが届く中、その柔らかな身体付きを感じる私の太ももと上半身に、莉里那の熱が伝播してくる。
私はその蕩けそうな刺激にさらされながらも、必死に微動だにしないよう努める。
しかしそれは水中で息を止めているのに等しく、時間と共に半開きになってしまっている私の口からは、意図しない呼吸音が漏れてしまっていた。
とそこでスッと莉里那が離れた。
そして——
「さてと、今日は新たな試みをするのです」
私の状態をよそに、莉里那は明るい口調でそう言った。
しかし新たな試み?
そんな話は今まで聞いたことがない。
「その新たな試みとは、ズバリ、口寄せの術なのです」
口寄せの術、それは忍者が使う忍法なのでは?
なんとなく、異世界から離れた?
そんな脳内ツッコミをする私に言い訳するようにして、莉里那は説明を始める。
「口寄せの術とは、ファンタジー風に言うと召喚魔法。つまり、別のところから魔物や妖怪を呼び寄せる、時空間移動、即ち時空魔法なのです! 
これを応用して逆転させたら、押しかけ勇者召喚なのです! 」
なるほど、今の説明はとても分かりやすい。
つまり口寄せの術で異世界に行くと言うことなのだろう。
しかし簡単に言っているが、逆転ってかなり難しいのでは?
いや、そもそも本当にそんな術が存在するわけがないのであった。
「そしたら行きますよ!
あなたはだんだん眠くなる、あなたはだんだん眠くなる〜」
ん?
それって、五円玉を振り子のよう揺らしながら行なう催眠だよね?
私はいま、ガッチリ目を閉じているのだが。
「そしたら、口寄せの術を始めるのです」
まぁ、莉里那の設定の甘さが出たのだろう。
そして莉里那によって、私の眼鏡は外され唇になにかが触れた。
このつい先ほど頬に感じたのと同じ感触は、……莉里那の唇!?
驚きで一瞬止まっていた心臓が、遅れを取り戻すようにして早鐘を打ち始めている。
しかしこれは——
軽く触れてきた唇は柔らかく、莉里那が体重をかければかけるだけ、私の唇との密着度を増していく。
そして柔らかな感触は、何事もなかったかのようにしてそっと離れていった。
「今のではダメでしたか。いえ、まだまだ分かりません、……もう一度」
莉里那の独り言。
それはどこかぎこちないものであり、今からもう一度キスをする宣言でもあった。
いつされるのか?
すぐされるのか?
目を閉じているため、その間はとても長く感じてしまう。
そして研ぎ澄まされた私の感覚は、莉里那の呼吸音と気配を探ってしまっていた。
そこで気配が動いた。
微かに聞こえる吐息の中、それは少しずつ近付き、程なくして私の唇に触れてきた。
研ぎ澄まされた触感は、その唇がプニッと押し付けられたり軽くハムハムされているのを克明に感じ取っていく。
そして私の心臓は、莉里那に聞こえているのではと言うぐらい、ばくばく鳴ってしまっている。
それに熱い。
この感じだと、私は耳まで真っ赤にしてしまっているだろう。
そしてまた唇が離れていった。
莉里那も興奮しているのか、呼吸音が明確に荒くなっていた。
「はぁはぁはぁんぐっ……もう少しだけ、もう少しだけ密着を増やせば、ゲートが開くような気がするのです」
莉里那がこれから行なう悪戯に対する、言い訳のような囁き。
そして再度良い香りと共に近付いてくる気配。
そこで私はそっと薄目にしてみた。
すると両眼を閉じた莉里那が、恥ずかしそうに顔をこれでもかっと言うぐらい真っ赤に染め上げていた。
そして三度目のくちづけ。
今度は私の上唇を軽く唇で挟み込み、吸い付くようにしてキスをしてきた。
しかも今回、唇だけではなく莉里那の舌も私の唇に軽く触れているようで、そのため莉里那のくちづけは次第に水気を帯び、それが潤滑油となりより一層の密着度を私たちにもたらしている。
しかしキスとはこんなに気持ちの良いものなのか。
そこで私もされるだけではなく、莉里那の柔らかな唇を味わいたい欲求に駆られてしまい出す。
でもこちらからしてしまうと、私が狸寝入りをしている事がバレてしまう。
でも少しなら、ほんの少しだけなら——
そうだ、軽く唇を動かすだけなら無意識に動いたと思ってくれるかもしれない。
そうして吸い付いてくる莉里那の唇に、私はそっとだけ吸い付き返した。
——柔らかい。
少し吸い付き返しただけなのに、密着度は更に上がった。
ただし唇と唇が少しだけ離れてしまった時に、軽く『チュッ』とリップ音がなってしまう。
静まり返る室内では、その小さな音でさえ心臓が飛び出そうなぐらいの大音量に聞こえたのだが、莉里那は気づかなかったのかくちづけを止めない。
いや、さらに過激になっているような——
「んっ、んっ」
しかし不味いかもしれない。
キスがもたらす予想以上の快楽に、脳は痺れもっと激しく弄りあえとさらなる信号を送ってくる。
私はその欲求を必死に耐えようとするのだが、気持ちよくもモドカシイ気持ちで頭が支配されてしまっている。
しかし終わりはやってくる。
そっと離れる莉里那の唇。
そこで私は、残念なほどの名残惜しさを感じる自身に気付く。
これは……私は、莉里那を完全に一人の女性としてみてしまっているのでは?
血は繋がらないが、……繋がらないとはいえ、これは妹ととの不埒な関係。
それが続き進んでいけば——
しかしそれは社会的にどうなのか?
そこで抱きしめられる。
そして私の首筋に柔らかな感触が。
これは莉里那が私の首筋にキスをしているのだ。
わざとらしく『チュッチュッ』と何度もリップ音を鳴らす、可愛らしくも扇情《せんじょう》的な気分にさせられる、熱いキスを。
そして暖かくぬめっとしたものが私の首筋に触れ、あまりの気持ち良さでぞくっと身体が震えてしまう。
これは莉里那の舌!?
私の首筋に触れる莉里那の舌先は、触れるか触れないかのところを、ツーとゆっくり下から上へと這ってくる。
ぞくぞくとした心地良い感触に、声を上げてしまいそうになるのを耐え動かないでいると、ついに莉里那の舌先が耳朶《みみたぶ》にまで辿り着いた。
そこからハムハムされる私の耳朶。
唇での吸い付く音が、ねちゃねちゃと這い回る舌先の音が、そしてはぁはぁと漏れ出る熱い吐息が、私の頭を莉里那で一杯にする。
しかし莉里那は脈略もなく、その私をトリコにする動きを何故か止めてしまう。
そして少しだけ私から離れた莉里那は——
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