2次元脳のポタクがラノベ的超展開に巻き込まれ異世界に行き必死に頑張る物語

黒月

1話 まずは異世界行くまでの過程を話そう…

   
              

「はぁ…しんどいな」
俺は坂を自転車で登りながら呟いた 
「ふう…」
坂の上へ登りきった俺から見える景色はいつも通りの通学路だった

「よう、おはよう。」
「おう、おはよ。なぁ…宿題終わらせたか?」
俺はだるそうに答える
「まぁな、やらねぇと増えるしな」
「だよな〜…でさ、俺、分からん所あるんだけどどしたらいい?」
「分からなかったらそのままでいいだろ答えなんて無かったし」
「ならいいや。所で昨日見たか?」
「当たり前だろ、ポタク舐めんな」
(ちなみにポタクというのは俺が勝手に「オタクになりきれてない一歩前の状態」という意味で付けた名前だ。多分他に正しい意味があるのだろうけど考えないことにした。)
「昨日の作画、荒れてたけど大丈夫なのか?」
「いや、あれは荒く見せることで躍動感を大きくしてるんだよ。それともうひとつ理由があってだな・・・」

(俺はオタクじゃない
オタクが嫌って事じゃなく
単に名乗るだけの知識も無いだけだ
だからポタクと名乗っている
好きな物に近づきたいから)

などと話しながら語り口調で考えていると担任が教室に入って来た
「おはよう、じゃ、ホーム始めるぞ」
(俺はこの時いつも何か日常とは違う事がおきないかなとか思う。例えば爆発みたいな感じでなんか訳分からん事になったりしないかな?とか思…

                    『バァゴォォォォン!!!!』

…う?)

「ん、なんだ?今の音?」
教室にどよめく声がひしめく。
「ぎゃあああ!!」
「おい、君、何をしている!」
「やめっ、近づくな」
「おい、やめっ、うわぁぁぁぁぁ!」
下から騒々しい声が聞こえる
「なっ何だ!?」
先生が外を確認しに行くため廊下に出ようとする。
その時、先生の背中から剣が出てきた、いや出てきたというより刺されたのだ。
先生の服から血が染みでる。
「え?」
皆の時が一瞬止まった。皆何が起こったのか分からなかった。そして、次の瞬間、悲鳴が鳴り響いた

「キャァァァ!!」

皆、目の前に広がった残酷な光景に戸惑い恐怖した。
中には泣き叫び椅子から転がり落ちていたりした。
「は?嘘ッだろ?」
余りにも非日常過ぎる光景で頭が働かない
すると先生が廊下側へ倒れ込む。

そして刀を持った白い軍服を着た男(というより青年)が教室に入ってきた。皆の声が恐怖で静かになる。
「この中で1人だけこの教室に残れ。後は校外に出ろ。制限時間は30分だ、30分以上経ったら全員殺す。」

その男はドスを孕んだ声で俺達に言った。

教室が静まりかえる
男の手には血塗られた刀
廊下には先生の遺体
教室が沈黙に包まれる

(空気が重い、恐怖がいっぱいだ…あぁ…嫌いだ…嫌いだ嫌いだ。クソッ…何とかして変えないと…思い出しちまう…)

「ガタッ」

俺はいつの間にか立っていた。嫌いなものから逃げる様に考えも無く立ち上がった。皆が俺を見る、
(やめろ、すがるような目で見るな。何か、何か、言わないと)

「あーと、ですね…」

「なんだ?質問か?」
男が困ったように問う

「いや〜、なんて言うか空気重いし…嫌いなんですよね〜こうゆう雰囲気、ギスギスしてるのってなんか性にあわないし、だからはっきり言って怖いけど無理にでも立ち上がらなきゃって思ったんすよ!」

「へぇ〜お前凄いなこんな空気でそんな事言えんのか。面白い奴だなw」
男が少し口角を吊り上げて笑う

「いやまぁ嫌な思い出がよぎったから何とか思い出さないようにするにはこれしか無かったんですがねw」
自傷めいた口調で話す

「で?誰が1人残るんだ?」
「とりあえず、女子は残らないで、いいよな?」
俺は皆に確認するように言った。
「お、おぅ…」
「そりゃそうだよな…」
男子が口々に肯定する
「じゃあ、女子は皆、帰れ」
男が命令するように言う
「は、はい…」
「ぁ、わ、分かりました。」
女子達が早々と教室から離れる。
(あれ?…まぁいいかこれで誰か警察に通報してくれるだろう、まぁ警備会社に連絡も行ってるだろうが遠いしな…)

「よし!じゃあ俺が1人で残る、皆それでいいか?」
語気を強めて男子に確認をする
「え?いや、でも…」
一人の男子が否定するように言おうとするが途端に口ごもる。

(まぁそうだろうな、誰か一人ここで残らないと全員が死ぬんだ。皆友達だから裏切れないんだろ)

「なぁ、あんた残るのは1人じゃないといけないのか?」
突然男子が男に向かって質問をした。
「あぁ、1人じゃないと駄目だ、もし出来ないならさっき逃がした女子も全員殺す。」
男が冷やかな目で言う。また空気が重くなる。

「だから大丈夫だって!手はあるから!」
安心させるように優しく言う
「だけど…」
「大丈夫だ、俺は自分で何とかできるから」
俺は心配する友達の肩に手をかけ、安心させるように言う

「さぁ皆帰れ帰れ、後から行くからな」
渋々皆は帰って行く

「で、残ったのはお前だけか」
「あぁそうだ、とりあえず自己紹介しようぜ、名前で読んだ方がいいだろ?」
「そうだな、俺の名前はウルだ。お前は?」
「俺は坂本涼さかもとりょうだ、中3の学生だ。」
続けてウルに問いを投げかける。
「で?残ったけどなにすんの?」
「あぁ、端的に言えば俺と殺し合いをしてもらう。」
「なるほど、いいよ」
「まぁ驚くのも無理はな…え?いいの?ホント?」
「あぁ、てかウルさんそのキャラやっぱり作ってたのね…」
「え?キャラ作ってたのバレてたの…???」
「いや、カマかけただけ…」
「」
「」
しばしの沈黙

「で、殺し合いの事なんだけど」
「ん?なんだ?質問があるか?」
「いや、武器とかどうすんの?ウルさんが用意するの?」
「武器はこっちで用意できる。後呼び捨てでいいぞ、さん付けは慣れてないんだ」

「なるほど分かった。で、もうひとつ聞きたいことがあってな、ウル、なんかしたか?」
「?なんかしたってどうゆう事だ?」
「いや、女子を逃がす時に違和感を感じたんだ、怯えているけどあんなにまで素直に逃げるのかってね、俺達のほとんどは小学校から一緒だ。そんな仲間を置いて何も言わずに逃げる訳無いんだよ。」

「フフッ、お前はほんとに凄いな…いいだろう話してやろうお前の読み通り俺はある事をした。それは魔法だ」
少し自慢げにウルは答える
「魔法?って言うとあれか?ゲームとかであるファイヤーボールとか?」
「そうだな、まぁ種類は色々あるがその認識でいいぞ、とまぁ魔法を使って言うことを聞かせたみたいな感じだ」
「なるほど…じゃあこの後の殺り合いでも使うのか?」
「いや、使わないよ、お前さん…じゃなくて坂本だっけか坂本は魔法が使えないだろ?」
「まぁな、魔法なんて創作物でしかありえないと思ってたよ」
俺は思い出したように最後の質問をする
「最後に1つだけ、なんでこんな事したんだ?」
男は少しニヤついて答えた。

「占いだよ、未来を決める」

「なるほど、なら殺り合う準備をしますか。」

男は刀と小刀を俺に渡してきた。
(机や椅子は校庭に放り出してある)
「悪いが武器はそれだけだ。はったりかましてすまなかったな。」

「いや、充分だよ」

俺は笑顔でそう返事した

「…そうか、そいじゃ、戦いますか。」

「あぁ!」

俺は刀を右手に、小刀を後ろの腰ベルトに挿した
そして、両手で刀を持つ、が俺は何も習っていない武道の武の字もない奴だ、だから、全て我流で望む、右足を前に、左足をやや後ろに、右手は刀の柄を少し握る、左手は鞘を強く握る、そして、直立姿勢をとる。

                      ウルが言う

                      「行くぞ!」


ウルは刀を持つ手をだらりとした姿勢から一気に、駆け出した、ウルは自らの頭上から俺の顔に向けて切り付けてくる、俺は刀の刃を上に向け受け止めるようにする。

『ガチンッ!!』

重く、高い音が出る、
刀が弾き合い、二人共、やや後ろに下がる、

ウルは間髪入れず左腰から薙ぎ払いを繰り出して来る、俺はでんぐり返しの要領で刀に当たらないように柄を胸に寄せ、薙ぎ払いを躱す。


俺は咄嗟に横に急いで転がった、次の瞬間、
俺が居た場所に刀があった。
「ウッ…危ねぇ…」
廊下を背にして刀の切っ先を相手に向けたまま廊下に出た。
ウルはゆっくりと教室から出てきて、
俺と対面し、正眼の構えをとった。
俺は刀を鞘に入れ居合の型をとり、相手に突っ込むように駆け出した。
ウルは刀を俺の方に真っ直ぐ向け、突きで向かって来た、
俺はそれを横飛びで回避し、壁を蹴り、ウルの背中を刀で切り付ける。
「サシュ…」
浅く切りつけたウルの背中から血が滲む
「お、中々やるな。」
しかしまるで痛みも感じてないように言ってくる
「なんで痛みねぇんだよ…クッソ、魔法か?」
「いや、これはただの慣れだ、よ!」
ウルは語尾と同時に横殴りに切りつけてきた。
「ウ、グゥ…」
(辛うじて刀で守ったがスタミナが持たないクソ!え?体力無さすぎ?デブ舐めんなスタミナなんてねぇよボォゲェ!)
自分にツッコミを入れながら後退する。

(あ…なるほど…こうゆう手もありか…)

俺は廊下の端に向かう

「ん?おい、逃げるのか?」
「違ぇ、よ!」
廊下の端についた俺はある教室の扉を蹴り壊した。

(ふぅー校舎がボロくて助かったぜ…)

「と、んな事より」
俺はウルが来る前に刀で管を切っていく。

そしてウルが教室の前までやってきた。

「ふぅ…いきなり走り出して逃げたかと思ったぜ」
「んなわけねぇよ。約束は守るよ。」
「で?ここで何をするんだい?」
ウルが困ったように聞きながらこちらに歩いて来る。

俺は余裕を持った声でこう答えた
「さぁ…理科室で何がおこるんだろな?」
そして途端に俺は駆け出しウルの右肩目掛け刀を振る。
しかし、ウルは左にひょいと避けた。
「太刀筋は悪くないんだがな、やっぱり力が…?」
ウルが鼻を手で覆い疑問を口にする。
「この匂い…は!?まさか、ガス?!」
「正解!」俺は理科室にあったチャッカマンで火をつける。そして、

「パァァァァン!!!!」

という甲高い音を立てて理科室が爆発した。
その衝撃で俺も吹き飛ばされる。
気がついたら向かいの教室の中に居た。爆発した衝撃で飛ばされたようだ。向かいの理科室はまだ燃えている。
少し意識が飛んでいたようだ。動こうとすると背中に痛みを感じる。
「クッ…ゥゥゥ…痛ってぇなクソが!」
痛みを堪えながら教室から出る
元の教室に帰ろうとすると、後ろから物音がする。
「おい、おい、爆発したんだぞ?」
後ろを見るとウルがこちらを見ていた。服はボロボロで血は体中から滲んでいる。
「爆発だぞ?爆発で血が滲むだけっておかしいだろぉ!」
「なぁ坂本ォ!お前、よくこんな事思いつくな、賞賛するぜ!」
ウルは嘘偽りなく本当にそう思っているかのように言ってきた。

ウルはズボンのポケットから何かを取り出し、俺の方に投げてきた。

俺はギリギリ受け止められた。何か石のようだ。

「なぁ…お前、この世界が好きか?」
「え?うーん、好きじゃないし嫌いでもないな。」

ウルは少し驚いた様な顔を見せた。
「なんだそれ、答えになってねぇじゃねぇか。」
「だってなぁ…嫌なことだってあるし嬉しいこともあるからな。」
ウルは真面目な顔になり、質問を続けた。
「じゃあ、この平和な世界にいたいか?それとも違う世界に行くか?」
「俺は…違う世界に行きたいな…」
「へぇ…理由は…?」
「疲れたんだよ、俺はたった15年ぽっちしか生きてないけどな人の付き合いとか色んなことで疲れたんだ。」
「そうか…ならこの世界を捨てれるか?」
「…多分…捨てれるな…あぁ、俺は捨てれるよこの世界を」

ウルは笑いながら言ってきた。
「はははは、なるほど良い答えが返ってきたな。」

「で?この石ころはなんなんだ?」

「それは魔石って言ってその名の通り魔力を満たした石の事だよ。」

ふと、頭に思い浮かんだ言葉を言う
「魔力結晶石…?か…?」

「ん?なんで正式名称知ってんだ?」

「いや、大体そんな名前だろ?」

「まぁ確かにそうか…」

(いや、いや、待て待て、何か忘れているような…)

「あ!?そういやなんでお前生きてんだよ!?爆発に巻き込まれたんだぞ!」

「あぁ、それは、自己再生能力があるからだな、辛うじて生きてたら再生するんだよ、まぁ首切られたら死ぬけどな、まぁ死んでも死なないもんだからね。」

「は?自己再生能力とか、最早チートじゃん
  後、 死んでも死なないってどうゆう事?」

「まぁ…首切られたら終わりなんですよ。
  死んでも死なないってのは、説明面倒いから言わないけど…」

「へぇ〜言いたくないならいいよ、てか、この魔石どうしろと?」

「飲み込め、そうしたらこの世界とはおさらばだ、新しい世界を見れる。」
ウルは真っ直ぐな目をして俺を見ながら言った。

そして、俺は石を噛み砕いて飲んだ。

「え?」
ウルから疑問の声が聞こえる。 

「んぁ?」

「え、いや、あの…なんで噛み砕いてんの…???」

「え?噛み砕くもんじゃないの?」

ウルが全否定するように言う

「いやいやいやいやいや、普通、噛み砕かないよ!だって石だよ!石!」

確かにそうだな…ウルの言うことも一理ある。

「いや、最初に噛み砕くなって言えよ…」

「噛み砕くとは普通思わないからな…」
ウルが続けて言う

「まぁおふざけは終わりだ。これからは本気の殺し合いだ、今までは合格するかどうかの試験みたいなものだ。だからお前も全力で、かかってこい!!!!」

ウルの覇気のような物に少し押される。
(でも…力が…身に染みる…多分これが魔石の効果か…なるほど…やれる!戦える!強くいられる!)

「よし!じゃあ殺り合おうか…行くぞ!!!!」
俺も覇気を孕んだ声で対する。

まずは切る!
左足で床を踏みしめ、蹴る!
立ち向かいざまに刀を振るう
が、
「うおおおおぉ?!」
刀は全く別の方へ行き、身体も逸れていった。
そして、壁に直撃する。
ウルが堪えるように笑う。
「クップップップ…ブフフフフフ…ヒュホ…ブハハハ」
(あっれー?おかしいよね!今、クッソカッコイイ言葉言ってたよね!あれ?主人公補正は?あ、無い、そうですか、分かってたけどね、いや悲しいね)
まだ堪え笑いをしているウルに向かって文句を言う
「お前絶ッ対!分かっててやっただろ!」
「いや、プッフフ…まさかここまで慣れないとはね、まぁでも…」

変わった。明らかに変わった。
目付きがさっきまで笑っていた目付きが、
まるで

「俺にとっては」

そう、
まるで獲物を見つめる獣のように

「ありがたいけどなァァァァ!!!!」

ウルが俺の方に刀を振り下ろす。
「な!?、バッカやろ!」

俺は思い切り横に飛ぶ。
もちろん、さっきと同じように
いや、さっきとは違い真っ直ぐに勢い良く飛び、壁にぶち当たる。
「痛って…」
(痛ってぇけどなんで…?さっきは真っ直ぐじゃなかったのに…そういやさっき慣れるとか言ってたな…もしかして…)

俺は立ち上がる、今度は居合切りをするような姿勢で、
左足をやや後ろに、右足を前に、相手との距離は刀よりやや離れている。
(力の流動だ、流れ、切る、力を流す。流し切る!)

上半身をしならせ前に、上半身が前に出る前に左足で床を蹴る!続けて右足で、飛ぶ!

近づく、ウルの身体が近づいてくる、心臓を狙う、2つに割るように、切りッ割く!!!!

「シッ!!」

鋭い声と共に刀を抜き、空を飛びながら斜め横からの、一閃、肉を切る感触が伝う、
周りがスローモーションに感じる。風を切る頬、骨を絶つ抵抗、刃から心臓の動きを感じる。
そしてまた骨を絶つ抵抗、肉を切る感触、
遂には、抵抗も感触も消え、刀の重みが残る、
俺は、風のような感触に浸っていた。
後は転がり落ちるだけ…だけど、
今は、風になれる、いや今、風になっているんだ。
なら、出来る。

左足で床を掴む。
足が軸になり、刀の遠心力で右方向後ろに回る、
右方向後ろ、つまり、ウルの背中が前にある。
回る、回る、さっきとは逆方向に俺は向いている。
右足を床に置く、右足がやや後ろに遠心力で動く、
そして、後は簡単だ、ウルの左肩から右腰にかけて、

全力で、叩き切る!!!!

「うっおぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!」

切る、切る、鎖骨も、肉も、肋骨も、肺も、背骨も、
全力で振り切る!!!!全て叩き切る!!!!

「ズバギャシャァァァァ…」

血肉と骨を織り交ぜた様な音がなる。

「フックッ…はァァァァ…」

力が一斉に抜ける。腰から床に落ちる。
「ふぅ…疲れた…」
集中していた身体から脱力感が溢れる。
暫く目を瞑り床に倒れる。

急に何か物音が聞こえてきた。
「グジュブグジュブ」
「まさか…」
正にそのまさかだった。

再生しているのだ。さっき切り倒した。ウルの身体が、
肝臓が動いている。骨が集まりあっている。

「ったく…いつまで経っても警察も警備会社も来ねぇじゃねぇか…この戦いが終わるまで来ねぇってか…いいじゃねぇか…上等だ。もう1回だこのやろぅ…」

再生し終わったウルの身体が目の前に立ち上がる。
「いや、良い太刀筋と力強さ、そして速さだったよ…」
「ならなんで生き返りやがったんだよコンニャロゥ」

皮肉めいた口調で聞いた。
「俺も本気を見せるって言っておいてああも簡単に殺られるとは思わなかったしね。だから今度は俺の番だ。」
 
瞬間、ウルの姿が消えた。
(な?後ろか!)

床に受け身をとる姿勢で足を動かす。
「シュ」
刀が空を切る音がした。すぐにウルに対面し刀を構える。
(速い…なんてもんじゃないな今のは)

「なぁ、今のはなんなんだい?強化魔法で速くなったのか?」
向かい合っているウルに話しかける。
「いや、今のは魔法じゃなくて、魔力操作のひとつさ」
言い終わった直後に上段から刀を振り下ろしてくる。
(受け止め…る!?)

受け止めた瞬間、両腕が痺れた。咄嗟に足を動かし、なんとか避けた。
「まだ本気を見せてなかったって事かい?ウルさん」
明らかに今のはおかしかった。力強さが段違いだ…
「まぁそうだね、さっき言った通りだよ。今度は俺の番ってね!」
今度は真っ直ぐな突きだ。
(右に躱して反げ…き?!)

ウルは躱した相手を逃がさないように突きの姿勢から右方向に振り抜いたのだ。
(クソッ…反撃出来ない…なにか方法は…)
考えている間にもウルは刀を振るい追い詰める。

逃げても逃げても刀が付きまとう。
(どうしたらいいんだ…せめて力だけでも勝てたら…?力…アイツは魔力で強くなった…なら俺も!」

「なら俺も魔力で強くなればいいんじゃねぇか!!!」
身体の奥から何かを絞り出すようにして刀に注ぐ
ウルは突きを放つ。俺はウルの刀の横をぶっ叩く!

「パッギィィィィンン」

甲高い音を響かせながら突きの方向を変える。
「なるほど…魔力を身体に染み込ませるみたいな感じか…行くぞ!ウル!」

魔力を満たした身体で翔ける。
下段からの切り上げを中段からの払い切りで逸らし、
ウルの身体に肘鉄を食らわせる。
「ゥ…」
ウルの口から微かに息が漏れる。
(これならやれる!)

「オォォォオオオオ!!!!」
ウルが突然咆哮する。
ウルは刀を構え、切りつけてきた。
右、左、斜め、下、上、横、
縦横無尽に切り結んでくる刀は全て避けることは出来ず、
身体に傷を作った。
(クソッ…身体が重い…絶対コレのせいだろ…)

「あぁ!クソッタレ!」
俺は理科室に向けて駆け出した。
当然後を追ってくるウル。
理科室に行くとさっきより燃えていた。俺が吹っ飛ばされた隣の教室ごと、

俺は理科室に飛び込んでいった。
ここで俺は刀を火にかけた。
燃え上がる炎に刀は段々赤くなった。
「またここか?」
ウルが追いつき聞いてきた。

「あぁそうだ、でも今度はアンタの事じゃない。俺の事だ。」
そう言い俺は真っ赤な刀を握る。
(やっぱり熱いな…)
ウルは刀を構える。俺がこのまま切りかかると思っているのだろう。しかし、まるで違う。

俺は真っ赤な刀を自らの腹に突き刺した。
「おま?!な…にを!?」
ウルは驚いていた。まさか自分に刺すとは思わなかったんだろう。

俺は刀を動かし、腹を切った。横にでは無く縦に切ったのだ。他の場所として二の腕、頬、足の脂肪を切った。

そう、坂本涼はデブだったのだ。
今まで、デカい身体を引きずりながら戦っていたのだ。
熱い痛みが広がる。刺した場所から火が出るように。

「クッソが!痛ったくねぇ痛くねぇ痛くねぇ痛くない!痛くない!痛くねぇぞゴラァ!!!!」
(痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くない痛くないなら!出来る!)

自分に自己暗示をかけるように言い続ける。
痛みを忘れるように。
そして、やっと邪魔な箇所の肉を全て切り終えた。
ふと、ウルの方を見る。
ウルはまるで憐れむような目をこちらに向けていた。

「醜いかい?俺の姿は?」
切った肉を持ち上げ、放りながら言う。
「いや…驚いただけだよ、まさか自分の身体を切るなんて考えもしないしな…」
ウルは途中から呆れたような口調で言う。
「なら、再戦といこうか…」
(血は止まっている…いつ傷が開くか分からない状態だ…なら早く勝負をしなくちゃな)
そんな事を思いながら俺は刀を構え、魔力を身体に染み込ませる。

まずは真上からの切り下ろし、
(ん?想像より速くなってる?肉を切り落とした影響で速くなるとは思ってはいたがこれ程とはな)
ウルは切り下ろしに対して横切りを放ち左、扉方向にバックステップをする。

対する俺は切り下ろした刃を下に切り上げを放つ。
しかし、少し遅くウルは易々と躱す。
そしてウルは背中を向けて廊下を走り出す。
俺は急いでその背中を追いかける。
あと少しで追いつける所まで来た。
だが、違和感を感じる。

(これ…何かに似てるな…)
そう感じた瞬間、ウルがこちらを振り返り刀を一閃、
横に振った。
(刀は鞘に納めてる、なら避けるしかない…か…!)

ウルの刃がこちらの身体に触れるまでに、避けなくてはならない。
上半身を後ろに反らせ、足は地に寝かすようにする。
足から滑るような姿勢をとる。
ウルの刃が近づく、ギリギリ額を掠めながらも避ける事が出来た。

でも、これで終わりじゃない、
足から滑りながら鞘から刀を抜きウルのアキレス腱を狙う。
(いや、多分これを避けようとするはず、なら少し上を!)
刀を抜きアキレス腱やや上を狙う。
しかし、上すぎたのか刀は腿より少し下を切った。
「クソッ!」

滑りながら悪態をつき、手で床を突き立ち上がる。
やや後ろによろめくが刀を構える。
「中々やるな!」
ウルが刀を振り下ろしながら言ってくる。
俺は刀を合わせ、鍔迫り合いをしながら答える。
「たりめーだ!ボォゲェ!」

鍔迫り合いをしている刀を押す。
ウルは押し返さずにバックステップをとる。
そして、踏み込み、切り込んでくる。
相手の刀の中頃を叩くように振るい弾く。
しかし、流れるような動作でまたもや切り込んでくる。
叩くように弾き、流れる動作で切り込まれる。
それを何回も何回も、弾いては切り込まれ、切り込まれては弾き返した。

(不味いな…相手のスピードに追いついているけど、技量が違いすぎる…このままじゃ相手のペースに呑まれる…)
変わらない戦い方が続く、しかしどこかで流れを変えなければ勝機は無い状況だ。弾かずに対処する方法…

(少し、戦い方を変えてみるか…)
頭の中でふとそんな考えが思い浮かぶ。
俺は今まで弾き返していた刀を避け、相手の身体に刀を振るう。
ウルは身体を捩り躱す。
(だけど、このままじゃいけない…もっと変えないと…)
俺はバックステップで距離を取る。
そして、俺は廊下から1面ガラス張りの広間のような場所に出た。

刀を鞘に納める。
「?どうした?諦めたのか?」
ウルが煽るように言ってくる。
「いーや、諦めるわけないだろうが、むしろこっからだ」

そう言い俺は素手で殴りかかる。
ウルが不審がる。何か裏があると思って思うようだ。
相手の刀の範囲内に入る。
横一閃に切りかかる。それを身を屈めて避ける。
そして、顎を撃ち抜くように掌底を繰り出す。
ウルが避けようと上体を反らし躱そうとする、
が俺はウルの顔の前で握り拳を作りそのまま全力で叩きつけた。

「ペキッ」という音と漏れでる吐息が手に伝わる。
ウルは背中を強打しながら倒れ右手に持っていた刀を左方向もとい俺へ振りかぶる。
俺は左足でウルの右手首を狙い蹴る。
刀は俺の左腕を少し切りつけた程度で止まり、ウルの手から離れる。

「オラァ!」
俺はウルの身体に殴りかかる。
しかし、当たる寸前でウルが消える。
拳は床に当たり、床が少し窪む。
「魔力操作に格闘術の合わせ技か?魔力は今さっき扱ったばかりなのにもう部分集中をやってんのか?アホみたいな天才かよ」
後ろからウルの声が聞こえる。

「さっきの技はなんだ?突然消えた奴」
俺は後ろを振り向きながら問う。
「ただの転移術だよ。」
「魔法じゃないのか?」
「あぁ、魔法は使わないって最初に言ったろ?ちゃんと約束は守るさ。」
「そうか、なら、行くぞ!」

俺は納得したように頷き覚悟を決めもう一度素手で殴りかかる。
ウルは左手を広げ差し出す。
俺はその手を掴む。その時、背中に熱い痛みが走る。

(だけど…今は、今は、やるべき事を!)
俺は背中の痛みを我慢しウルの左手を掴んだ右手を握りしめ、
ウルの後ろにある、ガラスにウルを叩きつけるように振り回す。

途中、ウルが意図に気づいたように止まろうとするも、
俺は魔力を足と腕に集中させ全力で振り回す。

                        『パッシャァァァァァァン』

甲高い音でガラスが割れ、空中にウルを投げるが勢い余って俺も身を投げ出す。

今さっきまでいた場所は2階だ。落ちたら骨の1本や2本、折れる程の高さだ。運が良ければ大きな怪我は無い程度だがガラスごと空中に投げられたり勢い余って無理な体勢で空中にいるのは訳が違う。

最低限でも受け身を取らねば死ぬかもしれない状況に俺はさっきまで背中に刺さっていた物を引き抜き、ウルに投げつける。

しかし、空中であると共に不安定な姿勢、確認もせず憶測で投げる物が当たるはずもないが、微かにウルの肩を裂いた。

(クソっ…ギリギリか…?!)
投げつけた姿勢から足を下にし魔力を足に集中させる。
身体中から魔力が筋肉や骨を這って足に溜まっていくのを感じる。

地に足が着いた瞬間右方向に飛び受け身をとる。
魔力のおかげか足の痛みはほぼ無かった。
怪我が無かったのを確認しウルの方を見る。

ウルは片膝を付いてこちらを見ていた。
投げた刀はウルの後方にあるがすぐに手元に現れるだろう。

(俺が蹴り、ウルの手元から離れたはずの刀が俺の背中に刺さっていた…これも転移術のひとつだろうか…でも転移術を使った時とは違い、左手を出していた…まさかあれは魔力操作のひとつか…クソっ…考えてたらキリがない…)

俺は刀を鞘から抜く
「なぁ、ここいらで終わりだろ?」
「あぁ、そうだな校舎も半分ほど燃えているしな」
ウルが話している最中に右手を開き刀が動いてウルの手元に納まった。

(動いた?なら魔力操作なのか…?)
疑問に思うが悟られてはいけない。
「じゃあ最終戦だ…全力で行くぜ…!」
俺は相手をしっかりと見据え構える。
「来い!殺してやる!」
ウルが獣のような目を滾らせながら構える。

                           『バァァァァァァァン』

校舎でどこかが爆発する音を皮切りに両者動き出す。
丁度、刀の範囲内に入った瞬間に左下から右上へ切りつける。
ウルはそれを受け止め、そのまま刀の根元まで押してきた。

両者鍔迫り合いの形で押し合う。
俺は後ろに倒れ込みウルの体勢を崩しウルの腹に蹴りを入れ後ろに投げ飛ばす。

すぐに起き上がり刀で上から振り下ろす。
しかし相手も抵抗し刀で受け止める。
ウルは刀を傾かせ体勢を崩そうとするが咄嗟に回避する。
その間にウルは体勢を戻し刀を構える。
「シッ!」
短い掛け声と共に切りかかる。
今度は鍔迫り合いをせずに弾かれる。
間髪入れずに打ち込む。またも弾かれる。
次はウルの刃が迫る。弾く。
そうやって何合も何十合も打ち合い攻守入れ替わりながら刀と刀をぶつけ合う。
しかし、終わりは時以外にも迫る。
もう何合打ち合わせたか忘れるほど打ち合わせ、遂にその時が来る。

突然、刀が「ギィシィィ…」という気味の悪い音を出す。
そして、打ち合った瞬間、「ピッシィィ!」という縦割れの音を鳴らし刀の中頃が砕け散った。
俺は後ろに後退する。

「ん、折れたか…さぁどうする?いよいよあとが無いぜ?」
ウルが刀を垂らし聞いてくる。
(クソっ…不味い不味い不味い不味い…どうしたらいい?ほんとにあとが無くなる…)
俺の焦燥を察したようにウルが続けて言う
「まぁ…そんな刀1本でどうにか出来る問題かな?」

(そうだ…こんな折れた刀1本じゃ…ん?1本…?いや、ある…あ…もしかして…忘れているのか…?なら…勝機が見える…いや、勝てる!)
溢れる希望を隠すように焦燥した目を続ける。

「なぁ…次の1合で勝負をつけよう。俺の刀はもう続ける事は出来ない。だから、次で最後だ。」
さも、諦めたような口調で言う。
「あぁ、いいぞ。次で終わりだ。」

ウルはそう言い刀を構える。
今までの構え方とは違い、刀を逆に持ち刃を上に左手は刃の先を摘み、右手は柄に柄は腰の位置に、左足を前に出し右足を後ろに、身体はくの字に曲げ構える。まるで相手を突き刺すような構えだ。

俺は折れた刀を鞘に入れ左手は鞘に右手は柄に左足は後ろに右足は前へ上半身は前屈みに構える。見様見真似の形だがそれなりにはなっている。

僅かに荒い息を吐き、目を合わせる。瞬間

両者動く。

ウルは少し身を屈め右足を踏み締めてこちらの頭を狙い突きを繰り出す。

俺は頭ごと身を屈めて刀を鞘から引き抜く。

ウルの突きは俺の目を撃ち抜くように突き出される。
俺は折れた刀で刀の先端を打ち払うように刀を抜く。

「パシィィン…」

冷ややかな音をたてて俺の刀が飛ぶ。
そして、ウルの突きが俺の頭を、

貫かなかった。

ウルが突きを放っている場所は俺の脇の間、5センチ下だ

俺の左足は今、ウルの身体の中心部とほぼ並行にある。
つまり、俺の右足より前だ。

俺は刀を鞘から引き抜くと同時に刀から手を離し突きを回避する為に魔力操作で身体を速くした。

そして、今、俺は右手を後ろの腰ベルトに回している。
そう、それは最初に渡された、渡したウルでさえ忘れていた刀、小刀へと手を回した。

俺は小刀を掴み、全力でウルの首に振るう。
何も阻むものも無い。その首へ

                             「ザクィリッシュ」

俺は首を切り、鎖骨を折り、脇の関節を潰した。

俺はウルの後ろに抜けた。

でも、まだだ。

アイツがウルが言っていた。殺し方がまだ残っている。

俺は右足を軸に左足をまたウルの身体の中心部と並行にする。

そして俺はウルの首を切断する。

刃が肉に通り、中にある骨を絶って背骨に到着する。

刃は背骨を綺麗に分けた。骨と骨の間を絶つように、

                                「グシュブ」

ウルの身体と頭が離れる。

「なぁ…お前は…『首切られたら終わり』なんだろ?」

俺は意識の無い骸に後ろを向いて話しかける。

「ガッガハガハガハ…」

途端、口から大量の血が出る。内蔵が裂けているようだ。

「クッソ…無理しすぎたか…」

座り込んだ瞬間疲れが溢れるように頭がちかちかと意識を手放そうとする。

「グ…ゥ…ふぅ…でもよ…」

痛みと血と我慢し意識を保ちながら骸に向いて言う。

「ありがとな…少しは非日常って奴を味わえたぜ…お前さんには感謝…だ…ぜ………………」

そう言いながら意識が無くなっていく。

燃える校舎に二人。

1人は首を無くし

1人は魂を失くした。

二人の地には血の池

辺り一面に広がる赤

これが、始まりでもあり、

別れでもあった。

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コメント

  • 朝日 祥

    ここまで細かく戦いの描写が書かれてることに驚きました。続き楽しみしています。

    1
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