とある駄作家の最期の言葉

Knight

こんな作家が居たという事だけ覚えて欲しい

 あるサイトに、クロスオーバー作品を投稿、更新していた作家Aが居た。Aが投稿していたクロスオーバー作品はまだ誰も挑戦していないもの同士のクロスオーバー作品だった為、投稿初日からそれなりに人気があった。

 そんなAの元に一通のメッセージが届く。差出人はAが投稿していた作品を非常に気に入ったファンBからだった。そんな事は初めてだったAは有頂天になり、執筆により一層気合いが入った。

 ある日の事、ファンBからAの執筆支援も兼ねてのプロットを含めたメッセージが届く。当時自力で頑張って書いていたAだったが、次第にネタ詰まりに陥っていた。そんな時にプロットが届いた為、それを参考に……いや、多少自分の言葉で書くだけでプロットそのまんまを書いていた。

 Bの支援もあってか、Aの小説は段々と人気が出始め、遂には評価バーに色が付く。感想も倍以上に書かれるようになった。それを見たAは更に有頂天になる。Bが送るプロットもより詳しいものがAの元に送られるようになった。

 プロットが送られて来たその日から、AはBのプロットに頼りきりとなり、自分が考えていたプロットは全部捨てていた。そう。Aは気づかぬ内にBのアイデアそのまんまを自分の小説として書いていたのだ。

 だが、二人の関係はある時を境に崩れ去る事となる。AはBのプロットを多少改変して最新話を投稿した。そこへ、BはAの元に苦情も兼ねたメッセージを送る。苦情が来るとは思っていなかったAはBに対してこう、反論のメッセージを送った。


 「B様が送ってくださったプロットを私なりにアレンジして書いています。そこへ苦情をぶつけるんですね? 私はこれを書いている作家ですよ。貴方様にどうこう言われる筋合いは無いんですが?」


 あまりにも喧嘩腰かつ上から目線なメッセージを見て、激怒したBはAにこのようなメッセージを送った。


 「貴方が書いている小説の物語は私が送ったプロットそのまんまです。それの何処がアレンジなんですか? 貴方が書いているのは只の丸写しです。ですが、貴方がそうまでしてこれはアレンジだと仰られるのであれば、もう私は支援しないので。どうぞご自由に執筆なさってください」


 その日を境にBはAのお気に入りを解除し、Aの元から去っていった。Aはその後、自力で物語を書こうとしたが、なかなか纏まらない。そこで、Bから送られてくるメッセージを待った。だが、Bからは何の連絡も無い。そこでAは自分がしでかした事がどれだけ大きいかという事にやっと気づいた。


 「自分は、なんて愚かな真似をしたんだ。自分の小説がここまで来れたのは紛れもない、B様のお陰だ。それなのに私は、B様に喧嘩腰でがーっと言ってしまった。それの結果がこれだ。私の手元には、何も無い。今まで支えてくれていたB様は、もう私を見限ってしまった。今更悔やんでも、後の祭りだ。失った物はもう、元に戻らない。過ぎ去った時は、もう戻らない。発した言葉は、消えない。私は、とんでもない大馬鹿者だ……」


 そうして、その日を境にAはそれなりに書いていた小説ごとそのサイトから姿を消した。彼はもう、そのサイトには戻って来ないだろう……


 これは、紛れもなく実話である。世の中にはこういった作家が居たという事をどうか覚えて欲しい。そして、この作家を反面教師として活用し、小説を書いている皆様が彼と同じ道を辿る事が無いように祈っている……

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