シュガーランプ

薄氷

序章




人は死ぬとその身体は角砂糖になる。
心臓が止まった瞬間に角砂糖へと姿を変えてしまう。

身につけていた衣服はそのままで、事切れた時は服の中に角砂糖がコロン、と転がった状態だ。

この世界では、葬儀は行わない。
亡くなると、その角砂糖をハンカチなどに包んでランプストッカーの元へ持っていく。

ランプストッカーは、大抵街にひとり在籍しており、職業柄街中より離れたところに住んでいる。


角砂糖を保管、管理するのが仕事でランプストッカーの住居にはその街で生きていた人間の角砂糖が小瓶に入れられ、名前と生没年を明記したタグをつけ、直射日光や湿気を避けて保存されている。


死者の角砂糖はよく燃える。
燃え上がる際、強く甘い香りを放ち、それを嗅ぐと故人に関する思い出が脳内に蘇る。

この世界には年に1度、もしくは遺族が希望した時、ランプストッカーの元を訪れる。
角砂糖を少量削り、それに火を灯し香りを嗅ぐことで故人を弔う為である。
この、火を灯す役割は、普段角砂糖の管理保管を行っているランプストッカーが行う。

ランプストッカーという名称はここからついたとされている。


これは、そのランプストッカーと少年の話。








序章 深い森の奥



ジメジメと肌に付くような森を走る。
「わっ!」
ドジャ、と太い木の根に躓く。膝に鈍い痛みが走る。少年は大事そうに腕の中で抱えていたものを見る。

よし、壊れてはいない。
また大事な物をハンカチに包み、また走る。暫くすると、ひらけた場所に出た。

そこには、街とは違う、大きく白い洋風な家。
ひらけた場所と森の中の空気は、全くと言っていいほど違う。
「ここが...ランプストッカーの家...。」

少年は、力が抜け、その場で倒れ込んでしまった。



To be continue...

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品