料理好きの侍?

きりんのつばさ

料理好きの侍?

ーーー時は江戸

将軍のお膝元と呼ばれる江戸の隅っこにある
食事処"小春屋こはるや"
「ほら、お侍さん!!注文が来てるよ!!」
「す、すまぬ小春殿・・・」
と明らかに自分より年上の男に
注意を飛ばしている女子は
小春といい、歳は18である。
性格は竹を割ったような性格のため
この年上の男であっても
言えてしまう。
そして小春に注意されている
細長く、優しい印象を与える男性は
内蔵助くらのすけと言う。
一応、侍の身分にはいるが色々あり
旅の道中で倒れているのを小春に
助けられて、現在小春の家に居候している。
この内蔵助という男は
侍の身分だが見た目はただの優男であり
刀を使うよりも、包丁を使って料理をする方が
得意という変わった男である。
そのため内蔵助は居候をさせてもらっている
代わりに料理を作っている。

しばらくして
「おお!!蔵さん!!
今日も小春ちゃんに言われているな!!」
と常連の大工の大将が話しかけきた。
「大将、それを小春殿に聞かれたら・・・」
「ーーー誰に聞かれたらだって?」
「こ、小春殿!?こ、これは」
「喋ってないでさっさと作る!!」
「ぎ、御意!!」
と再び料理の方に集中しだした。
「ギャハハ!!
蔵さん、しっかり小春ちゃんの
尻にひかれているな!!
これならもうあとは結納か!!」
「大将!?
私があ、あんな頼りないお侍さんと
なんて絶対嫌だよ!!」
「お、照れてる照れてる!!」
「・・・お侍さん、大将の料理抜きで」
「ぎ、御意」
「小春ちゃん!? そりゃないぜ!?」
と大将が嘆いていた。
今日も小春屋は賑やかである。

基本的には小春屋は賑やかだが
最近はそうでもない日がある。
「よぉ!! じゃまするぜ」
と明らかに容姿が悪そうな男達が入ってきた。
「また、あんたらか!!
悪いけどあんたらに
くれてやる飯はないよ!!」
と入るなり、男達にそのように言う小春。
「おいおい俺達はお客様だぜ?」
「礼儀がなってない客にくれてやる
飯は小春屋にはないよ!!」
「それよりもいつになったら、借金返して
くれるんだ?」
「そ、それは・・・」
とさっきまでの勢いは無くなった小春。
「払えなきゃこの店と土地をもらう!!」
「それは駄目!! 
この店はお父さんとお母さんの
形見の店・・・」
「なら借金、きっちり返しな!!」
「あんな膨大な借金返せるわけ・・・」
「お前、調子に乗んなよ!」
と1人の男が小春に向けて拳を振りかぶった。
小春は当たると思い、目を閉じたが
痛みは来なかった。
「・・・大丈夫ですか?小春殿?」
「お、お侍さん・・・」
その拳を内蔵助が抑えていたからだ。
「けっ!!
ひとまず今日は帰ってやるぜ!!」
と言うと男達は帰っていった。
「とりあえず今日は休みにしましょう。
小春殿」
「で、でも・・・」
「小春屋の看板娘がそんな様子だとお客さんが
悲しくなってしまいますよ」
「ごめんね、お侍さん」
「いえいえ」
その日は小春屋は休みにした。

その日の夜
「なかなか小春屋、どきませんね」
「くっ・・・そろそろお上からの期限が迫って
きているのによ・・・」
と昼間、小春屋に来た男達が集まり話を
していた。
「いっそ、あの娘をさらうか?あの娘性格は悪いが
見た目は中々の上玉だから、どこでも買い手が
いるだろ?」
「仕方ないな・・・」
「ーーーー何が仕方ないんだ?」
と急に後ろから声がして、男達が振り返ると
そこには・・・
「お前、小春屋の居候だな」
「確かにそれがしは小春殿の屋敷に
居候の身である内蔵助だ」
内蔵助が立っていた。
ただ昼間の料理をしている
優男の印象ではなかった。
腰にはきちんと刀を帯刀していて
表情も目つきがきつくなっていた。
「聞いていればお前達、小春殿のご両親に
膨大な利子をつけて金を貸したそうだな?」
「ああ、そうだ!!
だってあいつの両親が
金が必要だって言ってきたからな!!
借りた金は返すのが当たり前だろ!!」
「確かに返すのが当たり前だろうな。
・・・ただしきちんとした利子であればな」
と周りに人の気配がしたので周りを見ると
「確か、お前侍なんだってな!!
なら、この状況分かるよな!?」
10数人もの男達が内蔵助を囲んでいた。
「確かに多勢に無勢だな・・・
だがこの程度では某には勝てない」
と言うと内蔵助は自身の刀を抜いた。
「なんだと?お前は馬鹿なのか!?
この状況で勝てるとでも!?」
男達のかしらが勝ち誇った様子で言うと
内蔵助は刀を構えながら、こう言った。
「では、元御庭番衆頭
ーー梶野内蔵助、参る」


数分後
10数人いた男達は全員気絶していた。
内蔵助がわざと急所を外しながらも、
痛みが1番伝わる箇所を狙ったからだ。
残ったのは男達の頭だけになった。
「な、なんで御庭番衆が!?
しかもなんで料理人をしているんだ!?」
「某にも色々と理由があるのだが・・・
おい、頭」
と内蔵助は男達の頭の首を掴むと
「今すぐ江戸から出て行け。
そして二度と小春屋と小春殿に
手を出すな。出したら・・・」
と首を掴んでいない方の手で刀を持って
近くにあった障子に向かってふるった。
スパッ
と障子が真っ二つになった。
「次はお前らがこうなるぞ?」
「ひぃぃ!!」

次の日
「ちょっと!! お侍さん!!
また料理遅いよ!! 早くして!!」
「す、すまぬ小春殿・・・
今、急いでやっている最中・・・」
「口よりも手を動かして!!」
「ぎ、御意!!」
「お、また尻にひかれているな蔵さん〜」
と常連の大将がからかってきた。
「そ、それは・・・」
「お侍さん〜?」
「は、はい!! た、ただ今」
と急いで料理をしだす内蔵助。
昨日の男達と戦った人間と本当に同じ
なんだろうかと思ってしまうぐらい
情けない。
「あ、そういえば小春ちゃん」
「何、大将?」
「小春屋に金を貸していた連中なんだけど
朝見に行ったら、もぬけの殻だったぜ?」
「へっ?誰もいないの?」
「そうなんだよ〜昨日の夜は灯りがついていたから
確かにいたはずなんだが、朝になると誰もいない。
不思議な事があるもんだな・・・」
「本当ね・・・」
「こ、小春殿!! 料理でき・・・」
「じゃあ次に行く!!」
「ぎ、御意!!」

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