勇者が救世主って誰が決めた
80_勇者と使者と旅は道連れ
焚火のはぜる音と、和やかな団欒の声が響く……街道沿いの野営地。平時であれば、は国を跨いでの交易商人たちが後をたたない……活気に満ちた場なのだが。
現在この夜営小屋の利用者は、たった一団体だけである。
アイナリ―の北門から、ほぼまっすぐ北へと伸びる北方街道。その街道沿いに点在する夜営施設の中で最もアイナリーに近い夜営小屋は……比較的しっかりとした、旅籠屋のような造りになっていた。
若干の費用(それでも都市内の宿屋に比べると非常に安価)を要する代わりに利用できる『客室棟』や屋外炊事用の焚火スペースも点在しており、アイナリーに出入りする行商人の中でも評価の高い施設だった。
……しかしながら。
ここ数日は利用客がめっきり減ってしまったとのことで、管理人は気が抜けているのかやる気がないのか…
利用の申し出に訪ねたアーロンソを一瞥すると……簡単な説明だけ済ませ、とっとと引っこんでしまった。
「……盛大に歓待しろ、などとは申しませんが………もう少し……」
「いや、まぁ………なんか申し訳ない」
利用手続きを済ませしょんぼりと戻ってきたアーロンソと、そんな彼を労うヴァルター。
気苦労が絶えない者同士、共感するところが多いのだろうか。行動を共にするようになってからまだ一日と経っていないが……この二名は意外な程に相性が良い様子だった。
「いえ、…勇者様…にお詫びされる程では。…………すみません、まだ少し違和感というか……立ち直れていないというか…」
「えっと、その………すまん」
「いえいえ、こちらこそ……」
アーロンソの言う…『違和感』。
つい先日まで勇者だと思い込んでいた――執拗に観察していた人物が…本人いわく『ただのまちむすめ』であり。勇者の付き人だと思い込んでおり殆どノーマークだった人物こそが『勇者』本人だったという……
アーロンソにとって、自身の情報収集能力を根底から疑わざるを得ない事態に直面し……獣人部隊の隊長は自信を喪いつつあった。
『わたし!! ゆうしゃ!! ちがう!! ばーか!!!』
先日、夜分に相対したときとに感じた――手の内すべてを見透かされるかのような、美しさの中にどこか得体の知れなさを秘めた――神秘的とさえ感じた姿は何処へやら。
ヴァルター達と獣人部隊を引き合わせ、改めて自己紹介を……と切り出した際に判明した、アーロンソにとって驚愕の事実。
そのことを認識した途端に幼稚な罵声を吐き、せいいっぱい罵ってきた姿は……
「………どう見ても幼子……でしたね。…………いやはや、あんな小さな子が『勇者様』だと思い込んでいたとは……他人の噂とはアテにならないものです。………いえ、単に早合点ですね。私の裏取りも不十分でした」
「はははは……」
カリアパカで耳にした噂話をほぼ鵜呑みにしてしまい、『只の町娘』を勇者と誤認してしまったと……そのせいで彼女本人はもとより本来の『勇者様』にも迷惑を掛けてしまったと嘆く彼。
自分が勇者であることは……まあ事実なのだが、ノートの実力を知っており彼女が『只の町娘』だなどとは到底思えないヴァルターは……曖昧な笑みを浮かべるしか無かった。
………………
「あるたー、あるた……ゆうしゃ、さま。……おかえり、おかし、あげる」
「ああ……ありがとな、ノート」
「……んい。……ゆうしゃ、さま」
「本当に……よく慕われているのですね」
「ははは……」
戻ってきた苦労人二名を出迎えたのは……自称『ゆうしゃのじゅうしゃ』ノート。勇者ヴァルターの袖をくいくいと引き、甲斐甲斐しく彼の世話を焼こうとする彼女を微笑ましく眺めるアーロンソであったが………
拭いきれない違和感に加えて、ことあるごとに同僚からの羨望の眼差しに曝されるヴァルターにとっては……とても胃の腑が痛む事態だった。
「まーろんそ、も。おつかれ、さま。んい……かるめの、にく。つくる、じょうず」
「労いのお言葉。ありがとうごさいます。……お陰様で少し元気が出そうです」
「げんき……おにく、たべる。……げんき、なる。……かるめの、おにく、じょうず」
「ええ。……彼の料理は美味しいですよ」
「んい……おいしい、たのしみ」
小さな『従者』ノートに率いられ……借用した小屋の扉を潜る勇者と、後に続くアーロンソ。
彼らを待ち受けていたのは……保存食と現地調達の有り合わせとは思えぬ程に豪勢な食事と、それを囲む――種族も年齢もバラバラな――六名の男女だった。
「お帰りヴァル。……アーさんもすまんな、面倒事頼んで」
「いえ。こちらの都合ですので」
明るく鮮やかな空色の髪と、同色の瞳を持つ長耳族。そして彼女に抱っこされた人鳥。
ヴァルターの同僚にして付人ネリーは、旅の荷物を下ろしたラフな格好で二人を出迎えた。
「いやしかし……私もそれなりに料理出来る気でいたけどよ。………カルメロ、だっけ? あんたすげぇわ……手際良すぎ」
「でしょう? 我々の自慢の料理長ですよ」
「いえそんな僕なんて! そもそもネリー様のお陰で食材が豪華になったわけですし……」
野営の食事とは思えぬ程に豪華な品々を仕上げたのは、短く切り揃えた群青の髪と三角形の耳を持った線の細い青年――獣人部隊の料理長にして狙撃手――弓使いカルメロ・フレイル。
しきりに恐縮しっぱなしの彼であったが……料理の腕と獲物を仕留める手際は、なんとも見事なものだった。
「あまり卑下するもんでもねぇーぞ? 実際オマエのメシめっちゃウマイんだからよ。勇者サマも楽しみにしとけって! めっちゃウマイから!」
「あ、兄さま……勇者様の前です、もう少しお行儀よく……」
「長旅で……食事は極めて重要だ。我等はいつも助かっている。……事実だ」
緩やかに流れる赤毛と三角形の耳を持つ青年は、テオドラ・シェルバ。部隊の中では魔法支援を担当しており、同時に重要な賑やかし役でもある。
そんな彼を兄と呼び嗜るのは……うなじで纏めた長髪を靡かせる少女、アイネス・シェルバ。素早い身のこなしと自己強化魔法が得意だという、近接担当その一。
一見すると気難しそうな彫りの深い顔に、しかしながら意外な程柔和な笑みを浮かべるのは……がっしりとした筋肉を纏った、部隊のなかで一番の大男。短く刈られた灰鉄色の髪と髭、そして所々欠けが見られる三角形の耳が印象的な……近接担当その二、アンヘリノ・バレステロス。
事務方の一名はアイナリーで待機しているようたが………アーロンソ含めた実働部隊五名、全員がフェブル・アリアの………獣人族の特殊部隊員だった。
「カルメロも言っていましたが……ネリー様とシア様には驚かされました。………私の鳥たちでは、恐らくこうは行きません…」
「まぁ……私らも現地調達よくやるし、な」
「つってもこんな豪華な料理は無理だがな……」
「それなー」
そして個性の強い獣人族達を纏めるのは、大小さまざまな鳥類を眷族として使役する術者……フェブル・アリアの諜報員、アーロンソ・デ・ルーカス。
ヴァルターとネリーの、諦めとも羨望ともとれる嘆きに満足げに笑みを浮かべながら……いそいそと料理の前へ腰を下ろした。
………………
先日、アーロンソ達と詳細を詰めた後。例によって拠点の宿、ヴァルターの部屋にて……方針を定めるため顔を付き合わせていた。
そもそもがノートの勝手な判断により、本人不在の間に勝手に受諾してしまった依頼――アイナリーとマルシュ間の山岳街道に巣食う魔物駆除であったが………結果としてヴァルターはその依頼を呑んだ。
依頼人が王国の民ではなく、隣国の民からの非公式なものと知ったときには……ネリー共々軽く絶句していたのだが。
「……アイナリーに出入りする人々に……無関係じゃないだろうし……」
「大丈夫か? ヴァル……私外交とか知らねぇぞ?」
「…………まあ、大丈夫だろ……多分」
目指す場所が国境付近、両国間を隔てる大山脈ということもあって……『こちら側にも無関係とは言えない』『万が一にも魔物が流れ込んで来ないよう、先回りして駆除する』という筋書きで臨むつもりらしかった。
それに………自分の『勇者』の力が、人々の役に立つのなら。
そこに国家や所属やらを持ち込むつもりは……ヴァルターには無かった。
「俺が力になれるなら、な。なんとかしてやりたい」
「はいはい。勇者様はご立派ですねー」
「あるたー、ごりっぱ? ……ごりっぱ、ごりっぱ」
「誉められてるんだよな?」
意味ありげな笑みで返すネリーと、それを真似ようとして知能が低そうな笑みになったノート。正直誉められているようには見えなかったが……ヴァルターは問い質すことを諦めた。
そして、今回の遠征は……メアを除く四名(三名と一体)で臨むこととなった。
目的地まで距離があること、遠征期間は数週に渡る可能性もあること、メア自身が長旅に不馴れであり、そもそも体力面で不安が残ること。
そして………宿の従業員からの熱い要望と、他者と交流する機会を設けた方が良いとの判断から……ヴァルター達の遠征中、食堂で臨時従業員として、雇ってもらうこととなった。
……後になって判明したことだが、このときには既にメア目当ての客が少なくなかった……ということだったらしい。
ともあれ、それから数日を打ち合わせと準備に費やし……アーロンソ達五名とヴァルター達四名、総勢九名の所帯は、今朝早くアイナリーを発った。
「それでは………部下共々、暫くの間宜しくお願い致します」
「んい、ゆうしゃ、さま。がんまる」
「…………まぁ、なるようになるだろ」
王を介さずに交わされた、他国への非公式な『勇者』の派遣。
それは彼ら……アーロンソ達すらも予想だにしなかった、国の存続すら揺るがす程の騒動――その幕開けであったのだが……
このときはまだ誰も、そんなことを知る由も無かった。
現在この夜営小屋の利用者は、たった一団体だけである。
アイナリ―の北門から、ほぼまっすぐ北へと伸びる北方街道。その街道沿いに点在する夜営施設の中で最もアイナリーに近い夜営小屋は……比較的しっかりとした、旅籠屋のような造りになっていた。
若干の費用(それでも都市内の宿屋に比べると非常に安価)を要する代わりに利用できる『客室棟』や屋外炊事用の焚火スペースも点在しており、アイナリーに出入りする行商人の中でも評価の高い施設だった。
……しかしながら。
ここ数日は利用客がめっきり減ってしまったとのことで、管理人は気が抜けているのかやる気がないのか…
利用の申し出に訪ねたアーロンソを一瞥すると……簡単な説明だけ済ませ、とっとと引っこんでしまった。
「……盛大に歓待しろ、などとは申しませんが………もう少し……」
「いや、まぁ………なんか申し訳ない」
利用手続きを済ませしょんぼりと戻ってきたアーロンソと、そんな彼を労うヴァルター。
気苦労が絶えない者同士、共感するところが多いのだろうか。行動を共にするようになってからまだ一日と経っていないが……この二名は意外な程に相性が良い様子だった。
「いえ、…勇者様…にお詫びされる程では。…………すみません、まだ少し違和感というか……立ち直れていないというか…」
「えっと、その………すまん」
「いえいえ、こちらこそ……」
アーロンソの言う…『違和感』。
つい先日まで勇者だと思い込んでいた――執拗に観察していた人物が…本人いわく『ただのまちむすめ』であり。勇者の付き人だと思い込んでおり殆どノーマークだった人物こそが『勇者』本人だったという……
アーロンソにとって、自身の情報収集能力を根底から疑わざるを得ない事態に直面し……獣人部隊の隊長は自信を喪いつつあった。
『わたし!! ゆうしゃ!! ちがう!! ばーか!!!』
先日、夜分に相対したときとに感じた――手の内すべてを見透かされるかのような、美しさの中にどこか得体の知れなさを秘めた――神秘的とさえ感じた姿は何処へやら。
ヴァルター達と獣人部隊を引き合わせ、改めて自己紹介を……と切り出した際に判明した、アーロンソにとって驚愕の事実。
そのことを認識した途端に幼稚な罵声を吐き、せいいっぱい罵ってきた姿は……
「………どう見ても幼子……でしたね。…………いやはや、あんな小さな子が『勇者様』だと思い込んでいたとは……他人の噂とはアテにならないものです。………いえ、単に早合点ですね。私の裏取りも不十分でした」
「はははは……」
カリアパカで耳にした噂話をほぼ鵜呑みにしてしまい、『只の町娘』を勇者と誤認してしまったと……そのせいで彼女本人はもとより本来の『勇者様』にも迷惑を掛けてしまったと嘆く彼。
自分が勇者であることは……まあ事実なのだが、ノートの実力を知っており彼女が『只の町娘』だなどとは到底思えないヴァルターは……曖昧な笑みを浮かべるしか無かった。
………………
「あるたー、あるた……ゆうしゃ、さま。……おかえり、おかし、あげる」
「ああ……ありがとな、ノート」
「……んい。……ゆうしゃ、さま」
「本当に……よく慕われているのですね」
「ははは……」
戻ってきた苦労人二名を出迎えたのは……自称『ゆうしゃのじゅうしゃ』ノート。勇者ヴァルターの袖をくいくいと引き、甲斐甲斐しく彼の世話を焼こうとする彼女を微笑ましく眺めるアーロンソであったが………
拭いきれない違和感に加えて、ことあるごとに同僚からの羨望の眼差しに曝されるヴァルターにとっては……とても胃の腑が痛む事態だった。
「まーろんそ、も。おつかれ、さま。んい……かるめの、にく。つくる、じょうず」
「労いのお言葉。ありがとうごさいます。……お陰様で少し元気が出そうです」
「げんき……おにく、たべる。……げんき、なる。……かるめの、おにく、じょうず」
「ええ。……彼の料理は美味しいですよ」
「んい……おいしい、たのしみ」
小さな『従者』ノートに率いられ……借用した小屋の扉を潜る勇者と、後に続くアーロンソ。
彼らを待ち受けていたのは……保存食と現地調達の有り合わせとは思えぬ程に豪勢な食事と、それを囲む――種族も年齢もバラバラな――六名の男女だった。
「お帰りヴァル。……アーさんもすまんな、面倒事頼んで」
「いえ。こちらの都合ですので」
明るく鮮やかな空色の髪と、同色の瞳を持つ長耳族。そして彼女に抱っこされた人鳥。
ヴァルターの同僚にして付人ネリーは、旅の荷物を下ろしたラフな格好で二人を出迎えた。
「いやしかし……私もそれなりに料理出来る気でいたけどよ。………カルメロ、だっけ? あんたすげぇわ……手際良すぎ」
「でしょう? 我々の自慢の料理長ですよ」
「いえそんな僕なんて! そもそもネリー様のお陰で食材が豪華になったわけですし……」
野営の食事とは思えぬ程に豪華な品々を仕上げたのは、短く切り揃えた群青の髪と三角形の耳を持った線の細い青年――獣人部隊の料理長にして狙撃手――弓使いカルメロ・フレイル。
しきりに恐縮しっぱなしの彼であったが……料理の腕と獲物を仕留める手際は、なんとも見事なものだった。
「あまり卑下するもんでもねぇーぞ? 実際オマエのメシめっちゃウマイんだからよ。勇者サマも楽しみにしとけって! めっちゃウマイから!」
「あ、兄さま……勇者様の前です、もう少しお行儀よく……」
「長旅で……食事は極めて重要だ。我等はいつも助かっている。……事実だ」
緩やかに流れる赤毛と三角形の耳を持つ青年は、テオドラ・シェルバ。部隊の中では魔法支援を担当しており、同時に重要な賑やかし役でもある。
そんな彼を兄と呼び嗜るのは……うなじで纏めた長髪を靡かせる少女、アイネス・シェルバ。素早い身のこなしと自己強化魔法が得意だという、近接担当その一。
一見すると気難しそうな彫りの深い顔に、しかしながら意外な程柔和な笑みを浮かべるのは……がっしりとした筋肉を纏った、部隊のなかで一番の大男。短く刈られた灰鉄色の髪と髭、そして所々欠けが見られる三角形の耳が印象的な……近接担当その二、アンヘリノ・バレステロス。
事務方の一名はアイナリーで待機しているようたが………アーロンソ含めた実働部隊五名、全員がフェブル・アリアの………獣人族の特殊部隊員だった。
「カルメロも言っていましたが……ネリー様とシア様には驚かされました。………私の鳥たちでは、恐らくこうは行きません…」
「まぁ……私らも現地調達よくやるし、な」
「つってもこんな豪華な料理は無理だがな……」
「それなー」
そして個性の強い獣人族達を纏めるのは、大小さまざまな鳥類を眷族として使役する術者……フェブル・アリアの諜報員、アーロンソ・デ・ルーカス。
ヴァルターとネリーの、諦めとも羨望ともとれる嘆きに満足げに笑みを浮かべながら……いそいそと料理の前へ腰を下ろした。
………………
先日、アーロンソ達と詳細を詰めた後。例によって拠点の宿、ヴァルターの部屋にて……方針を定めるため顔を付き合わせていた。
そもそもがノートの勝手な判断により、本人不在の間に勝手に受諾してしまった依頼――アイナリーとマルシュ間の山岳街道に巣食う魔物駆除であったが………結果としてヴァルターはその依頼を呑んだ。
依頼人が王国の民ではなく、隣国の民からの非公式なものと知ったときには……ネリー共々軽く絶句していたのだが。
「……アイナリーに出入りする人々に……無関係じゃないだろうし……」
「大丈夫か? ヴァル……私外交とか知らねぇぞ?」
「…………まあ、大丈夫だろ……多分」
目指す場所が国境付近、両国間を隔てる大山脈ということもあって……『こちら側にも無関係とは言えない』『万が一にも魔物が流れ込んで来ないよう、先回りして駆除する』という筋書きで臨むつもりらしかった。
それに………自分の『勇者』の力が、人々の役に立つのなら。
そこに国家や所属やらを持ち込むつもりは……ヴァルターには無かった。
「俺が力になれるなら、な。なんとかしてやりたい」
「はいはい。勇者様はご立派ですねー」
「あるたー、ごりっぱ? ……ごりっぱ、ごりっぱ」
「誉められてるんだよな?」
意味ありげな笑みで返すネリーと、それを真似ようとして知能が低そうな笑みになったノート。正直誉められているようには見えなかったが……ヴァルターは問い質すことを諦めた。
そして、今回の遠征は……メアを除く四名(三名と一体)で臨むこととなった。
目的地まで距離があること、遠征期間は数週に渡る可能性もあること、メア自身が長旅に不馴れであり、そもそも体力面で不安が残ること。
そして………宿の従業員からの熱い要望と、他者と交流する機会を設けた方が良いとの判断から……ヴァルター達の遠征中、食堂で臨時従業員として、雇ってもらうこととなった。
……後になって判明したことだが、このときには既にメア目当ての客が少なくなかった……ということだったらしい。
ともあれ、それから数日を打ち合わせと準備に費やし……アーロンソ達五名とヴァルター達四名、総勢九名の所帯は、今朝早くアイナリーを発った。
「それでは………部下共々、暫くの間宜しくお願い致します」
「んい、ゆうしゃ、さま。がんまる」
「…………まぁ、なるようになるだろ」
王を介さずに交わされた、他国への非公式な『勇者』の派遣。
それは彼ら……アーロンソ達すらも予想だにしなかった、国の存続すら揺るがす程の騒動――その幕開けであったのだが……
このときはまだ誰も、そんなことを知る由も無かった。
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