勇者が救世主って誰が決めた

えう

13.2_【閑話】南砦の親衛隊_2

 「えあ……… のーす? …おしえて?」

 血の気が引く。背筋を嫌な汗が伝う。いくら幼げとはいえ相手は女性だ。普通に考えて女物の下着を買ってくる男とか問題外だ。気色悪いってレベルじゃない。……しかしながらこの袋を持ってきたのが自分ノースだというのは知られてしまっている。

 もう言い逃れは出来ない。…それに、
 「のー、す……? おし…えて……?」

 潤んだ瞳で、上目遣いで、弱々しく頼まれて、…それを無下に出来る男なんて、居る筈がない。たとえ嫌われたとしても、彼女の頼みを切り捨てるなんて出来ない。

 ノースは、腹をくくった。



 「のーす? それ、のーと?どうぞ?」
 「あ……ああ」
 「えあ。えあ、……のーす、それ、おしえて?」
 「グゥ………ッ!」

 身体を起こし、手足を投げ出すように、丸めた布団にもたれかかるノート。
 その傍らのサイドテーブルに、袋から取り出した可愛らしい布切れ………女児用下着・・・・・を、次々と乗せていく。
 ……一方とうのノートは、こちらの心配をよそにこれといった嫌悪感を示すでもなく……かすかに震えるノースの手つきを、その指の運ぶものを、くいいるように見つめている。

 やばい。なんだこの背徳感。

 「それ、……んん、……のーと、それ、ない」
 「あ、ああ。……だから、買ってきた」
 「のーす?かて、…た? のーす、かっかちた?」
 「……ああ」
 「のーす、のーす。それ、おしえて」
 「これ………? ぱ、パンツ……?」
 「たん、つ。……? ぱ? ぱん、つ?」
 「そ、そう。そうだ」

 真剣な顔でぱんつ、ぱんつと連呼するノート。
 ……なにやら、大変なことを教えてしまったような気がする……。

 「………これは、な……こう」
 袋を一旦傍らに置き立ち上がり、自分の足先に手を添えるように、身を屈める。そのまま脚に沿わせて手を上へと……腰へと引き上げる。
 「こうやって……履くやつ。パンツ。……解るか?」
 真っ赤な顔で、自暴自棄になりながら説明する。
 学習能力が高いらしい彼女は、やはりというか、それで通じたらしい。パンツという単語を。それがどういう役割のものであるかを。
 …そしてその顔には、やはりというか一切の恥じらい、嫌悪感、忌避感の類は、見られなかった。
 ………それでいいのかお姫…

 気にしても仕方ない。既に取り返しのつかないところまで来てしまっている。
 かくなる上は一刻も早くこの場を逃れるしかない。
 これ以上はさすがに……さすがに精神的にたない。

 袋を持ち上げて刑務を再開する。やっとの思いで袋の中身……下着を、すべて出し終わった。

 あとはオマケのワンピースを手渡して、やっと終わる。この特大の羞恥プレイから、やっと解放される。
 そう安堵したのも束の間。


 更なる絶望が、彼を襲った。



 「のーす、のーす。 …えああ、……ぱんつ、……のーと、ぱんつ、うーうぇんで、………えあ………ない。
 …………のーす、ぱんつ、……うー、うぇ………、……ん、おしえて。……おしえて!」




 ………………は?


 何をいってるのか解らない。
 もしかして……と一瞬よぎった解釈は、ありえない。……あっては、いけない。

 「……なんだって?」
 唖然とした顔で、首をかしげて、訊ねる。

 彼女は困った顔を浮かべ、顔をかしげながら……懸命に言葉を紡いでいる。

 「んん……んー………ぱんつ」
 「……パンツ」
 「ん……うーうぇんで………んい……んい……」
 「うー…? …すまん、なんだって?」
 「んー………ぱんつ……んんー……のーと!ない!ぱんつない!おしえて!!」
 ……ついに、癇癪を起こしたかのように口をへの字に曲げ、寝台の上でぽすんぽすんと身体をゆする。

 「のーす!ぱんつ!!それ!!おしえて!!それ!!」

 自由に動かせない身体で、何かを懸命にアピール…要求する、彼女。
 ……そしてしきりに出てくる、パンツ。


 ……まさかとは、思う。

 サイドテーブルを占拠する、女児用下着を指差す。
 彼女が、頷く。
 ……そのまま指をスライドさせ、寝台の上の彼女を、指差す。
 彼女が、大きく頷く。
 ……そしてそのまま……彼女の下腹部を、
 パンツが役目を果たすべき、その場所を…何かに怯えるように、おっかなびっくり指差す。
 彼女は、何度も頷く。

 「……おしえる?」
 どうか間違いであってくれと、勘違いであってくれと祈りつつ、問う。


 彼女は目を輝かせ、ぶんぶんと、首肯する。






 「嘘だろ……」と、思わず零れた。 


 『パンツのはき方を、教えてくれ』と。
 ……彼女はそう言っていた。 



 三角形を、頂点の一つで二つ繫げたような形状の、布。
 繋がれた付近は布地が二重に補強され、残った四箇所の頂点からはそれぞれ紐が生えている。


 ……紐下着パンツである。


 決して短くない葛藤の末、彼は心を無にしてそれ・・を手に取った。彼女のほうを見ると、…一体何故なのか、期待に満ちた表情でこちらを見据えている。下着を両手で持ったまま、寝台の上で身動きが取れない彼女に近づくも、相変わらず一切の抵抗や拒絶の意が見られない。
 そんな馬鹿なそんなアホなとぶつぶつ呟きながらも手を伸ばし………『病衣の下を脱がせなければパンツを履かせられない』という当然のことに気がついた。
 下着を寝台の上、彼女の傍らに置き、震える手を伸ばして彼女の身に着けてい病衣……その下履きに、ついに手を掛ける。

 今からでも遅くはない。どうか間違いであってくれ。『ちがう』と、首を横に振ってくれ。

 縋るような思いで、こちらを見つめる少女の視線と合わせるも………
 ぱち、ぱちを目を瞬かせたかと思うと…何の遠慮もなく頷いた。
 それどころか動かしづらいだろう身体で健気にも、腰を浮かせようと試みている様子でもあった。


 ……無慈悲な、ゴーサインだった。


 『何でそんなに泣きそうな顔なのか』とでも言わんばかりに、きょとんとした無警戒な顔でこちらを見据える。
 「んっ。………………んっ。」
 形のいい顎をしゃくるように、ついに急かすような声が、…指示が下された。ガチガチに緊張してうまく動かせない手指を気合で無理矢理動かし、彼女のなだらかな腰から病衣の下履きを引き下ろしに掛かる。

 「んん……っ」
 引っ掛かりが外れたような手応えと、くすぐったがるような吐息が漏れると同時、病衣の腰紐が腰骨の位置を越える。そのまま彼女は細い腰……小さなお尻を左右に揺するように動かし、それに伴い、病衣は確実に擦り下がっていく。
 それはやがて太股のあたりまで下がり、肉付きの薄い太股の白さと内腿の間の隙間が、白日の下へ晒された。

 ……とてつもない、犯罪的な光景に、喉が鳴る。
 女性たる秘所こそ、上着の裾でかろうじて隠されているものの……下履きは今や、膝上あたりまで擦り下げられていた。
 とはいえ大切なそこ・・は、女性にとって不可侵の聖域とも言えるそこは、今まさに外気に触れている状態……剥き出しである。
 にもかかわらずとうの本人はというと…相変わらず少し眠たそうな表情で、動かせない両腕と両足を投げ出した体勢で、落ち着き払っていた。

 「……のーす? ぱんつ、おしえて」
 動きの止まったことを疑問に思ったのか、そう声が掛かる。
 しかしながら、これはどう攻略すればよいのか見当もつかない。そもそも自分達の下着とは構造が違う。自分達の普段使いの男物の下着しか…先の動作でも示したような、足先から通すようにして着る方法しか、知らなかった。
 かといって病衣を全て脱がせるのも、気が引ける。……なにしろ彼女のほっそりとした脚は、そのほぼ全てが包帯でぐるぐる巻きにされているのだ。……脱がしづらいのは勿論、強く触れてしまっては、それは恐らく痛みに繋がるであろう。


 悩んでいても仕方がない。行き当たりばったりで行動を開始する。手に取った紐下着の、三角形の大きいほう。こちらが恐らく後ろ側だろう。
 彼女の太股に手を伸ばし、一瞬躊躇う。
 「……脚。触るぞ。 ……痛かったら、ごめん」
 「ん。……ん。おしえて」
 恐らくは半分も通じていないだろう。それなのに、彼女は一片の迷いなく、頷いてみせた。
 すべすべとした肌触りと、瑞々しくハリのある感触を、どこか遠い意識の隅で感じながら、太股ふとももを軽く持ち上げる。彼女の太股と寝台との隙間に下着を差し込み、いそいそと寝台の反対側へと移る。同様にそちら側の太股を持ち上げ、下着の紐を引き出し、幸いにも身体の下に通すことに成功した。
 ……その間彼女は、くすぐったそうに吐息を漏らし、はにかむように笑うだけであった。

 ともあれこれで終わりではない。今下着が通っているのは太股ふとももの下である。これではお尻を覆うことが出来ない。……今からこれを、彼女のお尻の下へ通す必要がある。
 「ノート、ごめん……お尻、浮かせられるか?」
 「ん、んん? おしり?…かせ……か?」
 …やはり難しいか。とりあえず自分の腰を…お尻を示し、お尻を浮かせるような動き……腰を前に突き出すような動きを、何度か見せてみる。
 こくこくと頷くノートに安堵しつつも、今の自分の挙動を思い返す。……美少女の見つめる前で、一部硬直している腰をカクカク前後させるなど、どう考えてもただの変態であった。目撃者がノートでなければ投獄されていた。


 「ノート、ごめん。本当ごめん。……お尻、触るぞ」
 「ん、ん? …やうす。……どうぞ?」
 「ごめん。本当ごめん。本当ごめん」
 身体と寝台との間に、わずかに隙間のある腰下。そこから彼女の…驚くほどの柔らかさと、高い体温を感じつつ、お尻の下…片側へと、手を差し入れる。
 「んん……んふひっ」
 くすぐったかったのか、小さな身を悶えさせながら、こちらの意図を察した彼女によって身体が捩られ、圧迫と摩擦の減った下着は無事にお尻の下を通り、紐部分が腰後ろに来るあたりにまで、持ってこれた。
 あとはもう半分、寝台の反対側へと回り込み、同じ要領で繰り返す。同様に彼女の臀部の温もりから必死に意識を逸らしつつ、そちら側も無事に通し終えることが出来た。

 「ん、んいい、………おしり、んん……んんん」
 お尻の下に通された下着が落ち着かないのだろうか。お尻をもぞもぞと、上着の裾が軽く被さっただけの剥き出しの股間を、上下へ、左右へと蠱惑的に揺する彼女。
 ……控えめに言って、とても危険である。
 身体の血流は遠い昔に一箇所に纏まっており、今なお限界を越えて硬直している。…長くは持たない。


 ごくりと喉を鳴らし、彼女の内腿……その隙間を見据える。
 あとは簡単、ここから下着のもう半分……表側の三角形を引き上げ、紐を結ぶだけだ。
 ちらり、と、彼女の顔を窺う、
 やはりというか、脱力しきった様子の……相も変わらず無防備で、安心しきった様子の彼女。……とても下着を半脱ぎさせられてる少女のものとは思えなかった。

 その様子を見て、もはや開き直った。彼女は恐らくだが、全く気にしていない・・・・・・・・・。どうやら意識しているのは自分だけだ。余計な心配などせず、手早く終わらせてしまおう。
 自己暗示のように言い聞かせ、攻略を再開する。


 余計な贅肉など存在しない彼女の内腿は、膝を合わせていてもその隙間は埋まらない。下着を引き揚げようとその隙間に手を差し入れ、なんとか布地を摘まむ。震えながらも細心の注意を払い、少女の柔肌に触れないように引き上げ、

 下着の紐が、予想だにしなかった箇所を、少女の最大の急所・・・・・・・・を予期せず擦り上げ、
 「……ふゃっっ!!?」

 唐突に響いた、かわいらしい悲鳴に、危うく取り落とすところだった。
 見ると彼女自身、今しがた自分の喉から漏れ出た声に驚いているのか…珍しく目を見開いていた。

 「ど、どうした!?大丈夫か!?」
 「え…えあ…………ん、…だい、じょうぶ、…おしえて」
 「お……おう…」
 なんとか平静を保とうとするもの……完全に予想だにしなかった一撃によって、折角立て直した精神防壁には、早くも致命的なヒビが走っていた。

 ともあれ、三角形の布は引き上げたのだ、これで尻下から足の間を通すことには成功した。あとはこれを彼女の下腹部に……上着の裾で辛うじて隠れているそこ・・に被せ、両脇を紐で縛れば完了だ。ここまで来た自分にとって、ゴールまであとほんの一息。……ほんの一息である。

 そこ・・を直視しないように、下着の両紐を持った両手を、上着の裾から差し入れる形で到達を試みる。
 ……が、あえて見まいとしていたことが……到達地点を目視確認していなかったことが、悪手となった。


 「んひゅ!?」

 再び、彼女の口から零れた、悲鳴のような声。
 今まで弛緩しきっていたその顔は、目をまんまるに見開き、心なしか徐々に赤みを帯び始めている。
 ……やばい。何かは解らないが、このままではマズい。
 冷や汗を滝のように溢しながら、必死に最後の仕上げに掛かる。すなわち…腰骨の上あたり、両サイドで、下着の紐を結ぶ。今まで渡ってきた幾つもの危ない橋に比べれば、序の口だった。
 ……その油断が、命取りとなった。


 「……んっ! ……ふっ、……んひっ……!」

 紐を結ぶだけ、とは言ったものの……腰を、素肌に直接触れられて無反応で居られる者が、果たしてどれだけいるのか。紐を結ぶことにより敏感な腰の柔肌にもたらされた刺激に、くすぐったがるような身悶えをもって反応を示す彼女ノート
 ……その反応の色が、変わってきているような錯覚を覚えた。
 焦るように、反対側へと回り込む。あと一点、こちら側さえ結び終われば、パンツを履かせることに成功する。……のだが。

 ……逸る気持ちが手元を狂わせ、


 「ぃあん………っ!」

 紐を……下着パンツを、思った以上に強く引いてしまった。



 澄んだ硝子のように透き通った瞳は仄かに浮かんだ涙で潤み、ひときわ深みのある輝きを纏っている。
 小さい口からは、熱を持った吐息がこぼれ、白く滑らかな肌は今や、うっすらと朱に染まっている。
 幼い声色で発せられた、今までとは違う毛色を含んだ、声。

 ……それには、もはや疑いようのない……


 が、混じっていた。




 そこまで認識したら、もうダメだった。







 今までの動揺が嘘のように、一転して落ち着いた動作でもって、下着の最後の紐を結び終える。可愛らしく身悶えする彼女を刺激しないように、そのまま丁寧に、病衣の下履きを元の位置へと戻す。
 「んん……っ、 ………ふぅん……っ、」
 下履きの腰紐が柔らかなお尻を、すべすべの腰を刺激するたびに、小さな口から熱を含んだ吐息がこぼれる。

 そしてついに、ノートに下着パンツを履かせることに、成功したのであった。


 険しい戦いを乗りきったノースは今や、晴れ晴れとした、スッキリとした表情で、サイドテーブル上に散らかっていた下着を袋へと戻した。
 その顔はどこか達観したような……当初の狼狽のは似ても似つかない、穏やかな表情だった。


 「? ………のーす? だいじょ…う? どうしたの?」
 「ん?大丈夫だぞ?どうもしないぞ?」
 「んん……えあ、……………あり、がろう」
 「ああ。どういたしまして」
 未だあかみの残る顔を可愛らしく傾げる彼女をよそに、纏め終えた袋をテーブル上に置く。
 「お世話の人が来たら、その人に渡してくれ。服も入ってるからな」
 「う……? …んい……… あり、がと……?」
 「よし。それじゃあ。早く良くなってくれよ」
 「んい………んいい……? ……やうす…?」
 満足げに頷くと、爽やかな表情でノースは医務室を後にする。


 「のーす………?」
 あとには肌に朱みを残しつつも、顔中に疑問符を浮かべたままのノートが残された。






 そうして彼は一仕事を終えると自室を経由し着替えを引っ掴み、入浴時間には少し早い、無人の風呂場へと駆け込むのであった。


 年頃の彼には、あまりにも過ぎた刺激であった。

 耐えられる筈など、無かった。

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