こんな異能と職業で俺にどうしろと

上条康

奴隷の女の子は妹になる?ー

朝起きてすぐにギルドに行き受付のおねえさんに泥棒スキルの習得の仕方につい教えてもらう。

「習得の仕方は、レベルとスキルポイントがあれば習得できます。ステータスカードを見たらそこに今覚えられるスキルが載っていますよ」
丁寧に説明を受ける。

「あ、本当だ」
「でも、ポイントがあったとしてもレベルが足りなくて覚える事のできないスキルもありますよ」
「なるほどですな」
スキル習得意外にも簡単だな。
レベルが上がったおかげで色々なスキルが出て来たのだろう。
例えば、

ースキルー

・【逃走】
(逃げる時足の速さ倍増)
必要ポイント2

・【隠密】
(隠れんぼが上手くなる)
必要ポイント2

・【盗み】
(盗みが上手くなる)
必要ポイント3

・【詐欺】
(人を騙すのが上手くなる)
必要ポイント5

・【疑い】
(何事にも自分が疑いを受ける)
必要ポイント5

・【犯人扱い】
(自分が犯人になる)
必要ポイント6

・【暗視】
(暗闇の中でも見える)
必要ポイント7

・【無音】
(音を消して行動できる)
必要ポイント8

・【空間把握】
(見なくてもその場所の構造が分かる)
必要ポイント10


二つほど最低なスキルがあるが、無視しよう。
盗みが上手くなっても、人を騙すのが上手くなっても、全然嬉しくない。
誰得?
まいいか、なんかスキル習得するか……
そして四つスキルを習得した。
ステータス確認

泥棒職Lv7
スキル1・【逃走】
スキル2・【暗視】
スキル3・【無音】
スキル4・【空間把握】

この四つである。
俺は別に泥棒職になりたくてなったわけではない、なので、盗み、詐欺といったスキルは論外。
ましてや、犯人扱いはもっと論外だ。
そしてギルドを後にした俺は街を歩く。



ーードン!
「あ、ゴメン」
俺は宿帰宅途中の帰り道に小さな女の子とぶつかった。
見た目は小学生といったところだろう。
ボロボロになっている服が印象である。
首輪みたいなものがついていて、ファッション?と思う。

でも、よくみると可愛い……いかんいかん、ロリ好き認定になるところだった、あぶない、あぶない。
そして女の子の手を取り立たせる。

「す、すみません」
女の子は泣きそうな声と表情で頭を下げて謝る、俺は女の子の頭を撫でて安心させる。

「気にしないで、よしよし」
すると、女の子は少し怯えた様子を見せる。
おれ嫌われ者?
「で、ではお兄ちゃんさよなら」
「お、お兄ちゃん?」
「はい……」
何年ぶりだろうお兄ちゃんと呼ばれるのは。

「待ちたまえ、もう一度お兄ちゃんと言ってもらおうか」
女の子は困った感じになっていたが、そこはスルーしてと。
「お兄ちゃん?」
「おお!」
なん度聞いてもこの響きはいい。
「あ、あのお兄ちゃんに一つお願いが……あります、あの……たす…………です」
「ん?」
声が小さくて最後の方は聞きこえなかった。

「やっぱり……なんでも……ないです。さよなら」
そして、女の子は去っていく。

止めようとしたが、急いでいる様子だったのでやめた。
俺に何かを言いかけたことが少し気になる自分がいた。

「不思議な子だったな」

「おい、そこのお前、首輪付けた女の子こっちに来なかったか?」
怖い顔をした中年男性が焦った様子で話しかけてくる。
「え、見ましたけど……なんでですか?」
「俺の飼ってる奴隷が逃げ出したんだよ!」
怒りに満ちた口調で怒鳴る。
いや、俺に怒鳴っても……
「え、奴隷?あの子が……」
「そうだよ!あいつ可哀想になあ、親に売られたらしいぜぇ、三年間ずっと奴隷生活、だからかわいそうだと思い俺がぁ一週間ほど前に、俺がお前を助けてやるって言って買った……クククク、まぁ、奴隷は奴隷らしい生活を今もおらせてるだけだがなぁ。そしてあいつが希望から絶望に変わる顔を見たときは、笑いがとまんなかったなあぁははは」
「オッサン、まじでいってんの?」
「当たり前だろ!笑わせるなガキが、奴隷に口無しってか、ははは」
「死ねば、オッサン」
「あ、なんだガキが、俺様と喧嘩する気か?調子にのるなよ!」
そして男が掴みかかってくる、俺は男の手を払い、腹めがけて一発殴る。
メキッと音がしたが、気にしないでおこう。
そして男は膝から倒れ落ち気絶した。



その後急いで女の子を追いかけた。
自分でも分からないけど必死になって。
そしてすぐ近くの公園らしきところで見つける。


「おーい」
俺はすぐに女の子の所まで駆け寄る。

「どうしたの?……お兄ちゃん、なんでここにいるの?」
少し嬉しそうな、でも悲しそうな表情で聞いてくる。

「お前を探してたオッサンに君の過去の事聞いて少し心配になってな」
「え、ご主人様今どこにいますか?」
ご主人様と呼んでるんだな。
「ああ、安心して、君のご主人様当分動けないと思うから」
そういうと、少し安心したようにそっと息を吐く。
「……もう……あの家に帰りたくない……です」
下を向き俯く。
「なんで、今まで逃げなかったんだ?」
「それは……紐で縛られていて逃げようにも……逃げれなくて……どうしようもありませんでした……」

もはや奴隷というより監禁だな。
「君はこれからどうすんの?まさかご主人様のところには帰らないだろ」
「絶対に……帰らない……帰りたくないです!……でも…………」
言い終わる前に女の子は黙り込んでその場に腰掛ける。
「帰る場所がないんだろ。君がいいならだけど……俺の宿に来るか?」
あ、つい、いきよいで言ってしまった。
「なんで……私なんかに優しくするの……」

これは同情なんかではない。
俺はこの子に世界の楽しさを教えてやりたい、もっと楽しく生きて欲しい、ただそれだけの願い。
俺がここまで思うのは、多分由香と重ねているからだろう。
「ま、なんていうか……自由気ままな日々を送るのは楽しいぞ、この世界に来てそれを体感してる。自由最高ー。……笑っていこうぜ笑わないと可愛い顔がだいなしになっとゃうぞ」

あ、一つだけ、俺はロリコンではない。
「私が自由になって笑っていたらバチがあたる……」
こんな小さい女の子の言うセリフじゃないだろーに。
「お前はこれから自由に生きていけばいい。笑顔で楽しく過ごし、時に泣いて、時に怒って、時にはキツク辛い時も、そしてまた笑顔で楽しく過ごす。自分のやりたい事をやりたいままに送る日々つまり、自由だ、俺は君に自由をあげよう!どうだ、欲しいだろ、欲しい人この指と〜まれ」
「うぅ、お兄ちゃんは……やさしすぎます」
そして涙交じりに俺の指をそっと握り俺に初めての笑顔を見せる。 

「人生ゼロから再スタートだな」
「はい、不束者ですがこれからよろしくお願いします」
笑顔のまま深く頭を下げてくる。
「おう!」
俺は優しく頭を撫でてやる。
「あの〜、お兄ちゃんの名前聞いてませんでした」
「ああそうだったな、眞田龍魅よろしく!……君の名前は?」
名前を聞くと少し戸惑ったように下を向く。

「わしは自分の名前が……分からりません……だから私に名前をくれると嬉しいです」
「名前ねぇ、んー、」
俺は腕を組んで考える、名前なんてペットにだってつけた事ない、だから一生懸命考える、そして。
「よし決めた!姫由だ!どうだ?」
そういうと、
「タツミお兄ちゃんがつけてくれた名前はなんだって嬉しいです!」
下から俺の顔を見つめてくる。

危なかった、一瞬惚れてしまうほどの可愛さ。
「あ、おおそうか」
「はい」
「よし、宿に帰ろう!」
「グゥ〜」
姫由の腹の音が聞こえた、すると姫由は何でもないですと言ってごまかす、気を遣っているのはすぐに分かった。
お腹が空いてるのなら言えばいいのに。
だから、

「あぁ俺お腹すいた、食い物買いに行こうぜ」
俺はそう言って姫由の手を握り歩く。
その時姫由が嬉し涙を流して俺の手を握りしめていたことに俺は照れくささを感じる。



それから宿に帰り異世界銭湯に入り姫由の服選びをしていた。
「なぁ、姫由〜なんかいい服見つかったか?なんでもいいぞー」
なんでもいいと言ったものの、持ち金がほとんどない、すごく高額な服を持ってきたらどうしよう?俺はこの時自分の不甲斐なさを感じる。
「この服かわいい……あ」
姫由は俺に気を使ってか一度手に取ろうとした服を元の場所へと戻す。
多分値段を見てやめたんだろう、ここは俺が買ってやらねば。
俺は腹を決め、姫由が一度選びかけた服を手に取る。
金は後でクエストをして稼ごう。


「お兄ちゃん……本当に良かったの……この服高かったけど」
買った服を見ながら申し訳なさそうに言う。
「ああ、気にするな!」
「でもお兄ちゃんこの服買う時おかしくなってたよ。クエストしてお金を稼がないと生活が……とか言って泣いてたよ」
そう、俺の持ち金が無くなったのである。

「ははは……。よっしゃーー、クエストでも受けに行きますかああ!!!」






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