キャラ選択で異世界漫遊
ギルドと初依頼
大通りに面した白煉瓦造りの洒落た大きな建物の前で玲子とオトモ3人が惚けーっと見上げていた。年季の入った酒場をイメージしていた玲子は良い意味で期待を裏切られた。
「此所ってギルド[聖なる杯]だぞぉ!?」
「なにも有名な"聖杯"で登録しなくても良くねー?」
「同感だよ~」
ギルド[聖なる杯]とは高い依頼達成率を誇り、依頼してから遂行完了までの迅速な対応に多くの人々から支持され"聖杯"という呼称で親しまれている。
さらに依頼したい、入隊たいしたいランキング(帝都調べ)では常に堂々の1位に輝く超絶人気のギルドであった。
「なら、他にお勧めのギルドがあるのかな?」
玲子の問にオトモ3人は視線をサッと反らす。
ゴロツキ擬きな彼らが素行の悪さから除名されたギルドは両手の指の数以上。唯一、敷居が高いからと登録すら試みなかった聖杯は彼らにとってギルド登録できる数少ない残された場所であった。
玲子はそんな3人を据えた目で見やり、余計な事を仕出かさないよう釘を差す。
「約束、私とパーティーを組んでいる間は問題を起こさない事。あ、それと全員偽名で登録するから宜しく」
「偽名だぁ?」
「そう。もう偽名は決めてある。文句は受け付けないので悪しからず。君は火の鳥から名をとってチャモ」
赤髪雑魚Aを指差して発表すれば、何とも度し難い表情で「チャモっておぃ……」と小さく口にした。
不満なんですね分かります。しかし、玲子は気にしない。次は「だっせー」と名付けセンスを馬鹿にしてゲラゲラと笑う緑髪雑魚Cを指差す。
「君は蜥蜴から名をとってメレオ」
「蜥蜴!?」
ショックを受けたように固まる緑髪雑魚C__改め、メレオの姿に玲子は心がスカッとした。
「ねっ、オレは~?」
「蓮の花から名をとってレンゲだよ」
「……レンゲ……うん、オレはレンゲね。宜しく~」
名を噛みしめるように数度呟き、やがて照れた笑みを浮かべた青髪雑魚B__改めてレンゲの頭をワシャワシャと掻き撫で回したい衝動にかられたが、玲子は袖の中で手をにぎにぎ動かして誤魔化すのだった。
「さぁ、入るよ」
偽名を付け終えた一同を伴い聖杯の玄関扉を開く。
ロビーはだだっ広く清潔感があり、ビジネスホテルを想像して貰うと分かりやすいだろう。内装もオシャンティーで感玲子とオトモ3人は「うわぁ」と感嘆に声をもらした。
「此方へどうぞー」
受け付けは3ヶ所あった。右側には老若男女関わらず身分も様々な者達が依頼を申し込み、中央では揃いの灰色のローブを纏ったギルド隊員らきし者達が整然と依頼受注と報告をし、左側では素材の買い取りなどをしていた。
ざっと観察した玲子は中央の受け付けにむかう。
 一泊遅れてチャモ、メレオ、レンゲもその背に続いた。
「お待たせしました。ご用件をお伺い致します」
灰色の制服に身を包んだ可愛らしい受付嬢が営業スマイル全快で玲子たち4人を迎えた。
受付嬢の薄桃色の瞳が質の高い贅沢な白のローブを注視したが、長年に渡り受付業務に勤めていただけあり他人に気取らせる事なく自然な対応をみせた。
「ギルド登録をしたいのですが此方の受け付けで出来ますか?」
「はい。大丈夫ですよ。では此方の規約書に目を通して頂き、合意可能であれば此方の登録用紙に名前、年齢、出身地、戦闘スタイル、備考欄に記入をお願いします。ペンはそちらに有るものをお使い下さい」
備考欄には持病があればその旨を明記して頂けると、もしもの際に職員並びにパーティーを組んだ隊員が適切な対応をとり易く成ります。と最後に付け加えて説明を終えた受付嬢が規約書と登録用紙を4人に渡す。
規約書はこの世界の共通言語で書いてあるが、御使いから貰った知識の指輪が翻訳機となり玲子は難なく用紙に目を通すことができた。
内容はざっと以下の通り。
1、死んでも自己責任。
2、報告連絡相談は大切に。
3、ギルドに不利益をもたらしたらシバく
いかにもテンプレな規約に玲子は吹き出しそうになる。しかし、突拍子もなく規約を見て笑いだしたら変人のレッテルが貼られる事間違いなし。登録したばかりのギルドでそんな扱いは断じてゴメンだと玲子は表情筋に全力を込め、用紙にペンを走らせた。
「お預かり致します。アレイスターク様、チャモ様、メレオ様、レンゲ様ですね」
受付嬢が書類と玲子たち4人を照らし合わせながら内容の確認をし、アレイスタークの書類の空欄に目を止めた。
「アレイスターク様は出身地は無記入ですね。必須項目ではありませんが万が一に死亡した際の連絡や遺体の受け渡しが出来ない恐れがあります。無記入で宜しいでしょうか?」
「はい」
頷いてみせた玲子に受付嬢は「畏まりました」と頭を下げると、ギルドガードを発行するために席を離れて奥の部屋へと向かった。
「お待たせしました」
さして時間も経たぬうちに受付嬢が戻ってきた。その手には灰色のカードが4枚ある。差し出されたカードには各々アレイスターク、チャモ、レンゲ、メレオの名前とランクが表記されている。
「此方が皆様のギルドガードになります。ランクは登録したばかりですのでFランクになります。ランクは依頼の達成数と評価の両方で定められた基準に達しますと1つ上のランクにがります。依頼は入り口から左手にあります掲示板より選んで下さい。依頼の難易度はギルドランクと同程度のものをオススメしております」
スラスラと淀みなく説明する受付嬢に流石プロだと玲子は感嘆の眼差しを向けた。なんとこの受付嬢、あの長い台詞をノンブレスでしかも適度に間を空けながら言ってのけたのだ。
「依頼の受注、完了、破棄の報告や依頼に関する用件は全て此方の受け付けに承っております。以上で説明は終わります。……他にご用件はございますか?」
受付嬢の問いにチャモが「なぁ?」と声を上げた。
「灰色のローブって買わねぇと駄目なのかぁ?」
「隊員専用ローブですね。此方は初めて依頼を受注した際にギルドから支給されます。このまま依頼を受注されるのでしたら[うま茸の採取依頼]と[ゴブリンの駆除]の2つを紹介出来ます」
つまるところ、他の依頼がしたいなら入口側の掲示板から選んでもう1度受付に並ぶ事になる。そこまで手間でもないが玲子は紹介された依頼を受けることにした。
「[うま茸の採取依頼]の詳細は?」
「はい。[うま茸の採取依頼]はギルドからの依頼となります。必要な数は10個、納品期限はありません」
「受けます」
「かしこまりました。では、手続きは以上です。気を付けて行ってらっしゃいませ」
4人分の聖杯ローブを受け取った玲子はチャモ、メレオ、レンゲを連れてギルドを後にした。
賑わう大通りからそれ、人気の少ない小路に移動してから玲子は各々に聖杯ローブを渡した。
「うぉ、確りした手触りだなぁ」
「これが聖杯ローブかー」
「夢みたいだ~」
あの有名な聖杯のローブを手にしている事実に驚愕しつつチャモは伸縮性を確かめるかのごとく布を引っ張り、メレオは両手で持ってしげしげと眺め、レンゲは既に袖を着用しニマニマと頬を緩めていた。
「ぉ、おお……レンゲ着るの早いね」
「そ?えーと、アレイスターク……様だっけ?も着替えたら?今のその立派なローブで採取したら汚れるでしょ~」
レンゲの言うとおりである。
「それもそうだね。あと私に敬称はいらないよ」
チャモとメレオもローブに袖を通している。
玲子も二人に習い、聖杯ローブを着るために[貴公子のローブ]のフードをおろす。
太陽の下にさらされた星の瞬きの様に輝く白金色の髪。人形如し顔立ちは冷たい印象を与えるが、誰もが一瞬ドキッとしてしまう程に整っている。
「あ?」
「は?」
「え?」
そして何よりも3人が目を疑ったのは、この国の人間なら誰もが知る皇族に連なる血筋の者が持つとされる至高の色__碧色を両の瞳に宿しているのだから
「「「はぁああああああ!?」」」
白昼の街の喧騒にオトモ達の叫びは吸収されたのだった。
「此所ってギルド[聖なる杯]だぞぉ!?」
「なにも有名な"聖杯"で登録しなくても良くねー?」
「同感だよ~」
ギルド[聖なる杯]とは高い依頼達成率を誇り、依頼してから遂行完了までの迅速な対応に多くの人々から支持され"聖杯"という呼称で親しまれている。
さらに依頼したい、入隊たいしたいランキング(帝都調べ)では常に堂々の1位に輝く超絶人気のギルドであった。
「なら、他にお勧めのギルドがあるのかな?」
玲子の問にオトモ3人は視線をサッと反らす。
ゴロツキ擬きな彼らが素行の悪さから除名されたギルドは両手の指の数以上。唯一、敷居が高いからと登録すら試みなかった聖杯は彼らにとってギルド登録できる数少ない残された場所であった。
玲子はそんな3人を据えた目で見やり、余計な事を仕出かさないよう釘を差す。
「約束、私とパーティーを組んでいる間は問題を起こさない事。あ、それと全員偽名で登録するから宜しく」
「偽名だぁ?」
「そう。もう偽名は決めてある。文句は受け付けないので悪しからず。君は火の鳥から名をとってチャモ」
赤髪雑魚Aを指差して発表すれば、何とも度し難い表情で「チャモっておぃ……」と小さく口にした。
不満なんですね分かります。しかし、玲子は気にしない。次は「だっせー」と名付けセンスを馬鹿にしてゲラゲラと笑う緑髪雑魚Cを指差す。
「君は蜥蜴から名をとってメレオ」
「蜥蜴!?」
ショックを受けたように固まる緑髪雑魚C__改め、メレオの姿に玲子は心がスカッとした。
「ねっ、オレは~?」
「蓮の花から名をとってレンゲだよ」
「……レンゲ……うん、オレはレンゲね。宜しく~」
名を噛みしめるように数度呟き、やがて照れた笑みを浮かべた青髪雑魚B__改めてレンゲの頭をワシャワシャと掻き撫で回したい衝動にかられたが、玲子は袖の中で手をにぎにぎ動かして誤魔化すのだった。
「さぁ、入るよ」
偽名を付け終えた一同を伴い聖杯の玄関扉を開く。
ロビーはだだっ広く清潔感があり、ビジネスホテルを想像して貰うと分かりやすいだろう。内装もオシャンティーで感玲子とオトモ3人は「うわぁ」と感嘆に声をもらした。
「此方へどうぞー」
受け付けは3ヶ所あった。右側には老若男女関わらず身分も様々な者達が依頼を申し込み、中央では揃いの灰色のローブを纏ったギルド隊員らきし者達が整然と依頼受注と報告をし、左側では素材の買い取りなどをしていた。
ざっと観察した玲子は中央の受け付けにむかう。
 一泊遅れてチャモ、メレオ、レンゲもその背に続いた。
「お待たせしました。ご用件をお伺い致します」
灰色の制服に身を包んだ可愛らしい受付嬢が営業スマイル全快で玲子たち4人を迎えた。
受付嬢の薄桃色の瞳が質の高い贅沢な白のローブを注視したが、長年に渡り受付業務に勤めていただけあり他人に気取らせる事なく自然な対応をみせた。
「ギルド登録をしたいのですが此方の受け付けで出来ますか?」
「はい。大丈夫ですよ。では此方の規約書に目を通して頂き、合意可能であれば此方の登録用紙に名前、年齢、出身地、戦闘スタイル、備考欄に記入をお願いします。ペンはそちらに有るものをお使い下さい」
備考欄には持病があればその旨を明記して頂けると、もしもの際に職員並びにパーティーを組んだ隊員が適切な対応をとり易く成ります。と最後に付け加えて説明を終えた受付嬢が規約書と登録用紙を4人に渡す。
規約書はこの世界の共通言語で書いてあるが、御使いから貰った知識の指輪が翻訳機となり玲子は難なく用紙に目を通すことができた。
内容はざっと以下の通り。
1、死んでも自己責任。
2、報告連絡相談は大切に。
3、ギルドに不利益をもたらしたらシバく
いかにもテンプレな規約に玲子は吹き出しそうになる。しかし、突拍子もなく規約を見て笑いだしたら変人のレッテルが貼られる事間違いなし。登録したばかりのギルドでそんな扱いは断じてゴメンだと玲子は表情筋に全力を込め、用紙にペンを走らせた。
「お預かり致します。アレイスターク様、チャモ様、メレオ様、レンゲ様ですね」
受付嬢が書類と玲子たち4人を照らし合わせながら内容の確認をし、アレイスタークの書類の空欄に目を止めた。
「アレイスターク様は出身地は無記入ですね。必須項目ではありませんが万が一に死亡した際の連絡や遺体の受け渡しが出来ない恐れがあります。無記入で宜しいでしょうか?」
「はい」
頷いてみせた玲子に受付嬢は「畏まりました」と頭を下げると、ギルドガードを発行するために席を離れて奥の部屋へと向かった。
「お待たせしました」
さして時間も経たぬうちに受付嬢が戻ってきた。その手には灰色のカードが4枚ある。差し出されたカードには各々アレイスターク、チャモ、レンゲ、メレオの名前とランクが表記されている。
「此方が皆様のギルドガードになります。ランクは登録したばかりですのでFランクになります。ランクは依頼の達成数と評価の両方で定められた基準に達しますと1つ上のランクにがります。依頼は入り口から左手にあります掲示板より選んで下さい。依頼の難易度はギルドランクと同程度のものをオススメしております」
スラスラと淀みなく説明する受付嬢に流石プロだと玲子は感嘆の眼差しを向けた。なんとこの受付嬢、あの長い台詞をノンブレスでしかも適度に間を空けながら言ってのけたのだ。
「依頼の受注、完了、破棄の報告や依頼に関する用件は全て此方の受け付けに承っております。以上で説明は終わります。……他にご用件はございますか?」
受付嬢の問いにチャモが「なぁ?」と声を上げた。
「灰色のローブって買わねぇと駄目なのかぁ?」
「隊員専用ローブですね。此方は初めて依頼を受注した際にギルドから支給されます。このまま依頼を受注されるのでしたら[うま茸の採取依頼]と[ゴブリンの駆除]の2つを紹介出来ます」
つまるところ、他の依頼がしたいなら入口側の掲示板から選んでもう1度受付に並ぶ事になる。そこまで手間でもないが玲子は紹介された依頼を受けることにした。
「[うま茸の採取依頼]の詳細は?」
「はい。[うま茸の採取依頼]はギルドからの依頼となります。必要な数は10個、納品期限はありません」
「受けます」
「かしこまりました。では、手続きは以上です。気を付けて行ってらっしゃいませ」
4人分の聖杯ローブを受け取った玲子はチャモ、メレオ、レンゲを連れてギルドを後にした。
賑わう大通りからそれ、人気の少ない小路に移動してから玲子は各々に聖杯ローブを渡した。
「うぉ、確りした手触りだなぁ」
「これが聖杯ローブかー」
「夢みたいだ~」
あの有名な聖杯のローブを手にしている事実に驚愕しつつチャモは伸縮性を確かめるかのごとく布を引っ張り、メレオは両手で持ってしげしげと眺め、レンゲは既に袖を着用しニマニマと頬を緩めていた。
「ぉ、おお……レンゲ着るの早いね」
「そ?えーと、アレイスターク……様だっけ?も着替えたら?今のその立派なローブで採取したら汚れるでしょ~」
レンゲの言うとおりである。
「それもそうだね。あと私に敬称はいらないよ」
チャモとメレオもローブに袖を通している。
玲子も二人に習い、聖杯ローブを着るために[貴公子のローブ]のフードをおろす。
太陽の下にさらされた星の瞬きの様に輝く白金色の髪。人形如し顔立ちは冷たい印象を与えるが、誰もが一瞬ドキッとしてしまう程に整っている。
「あ?」
「は?」
「え?」
そして何よりも3人が目を疑ったのは、この国の人間なら誰もが知る皇族に連なる血筋の者が持つとされる至高の色__碧色を両の瞳に宿しているのだから
「「「はぁああああああ!?」」」
白昼の街の喧騒にオトモ達の叫びは吸収されたのだった。
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