リフレイン・フェイト

マサカズ

プロローグ1「666番」

  期待というものは、シャボン玉によく似ていると思う。

 徐々に膨らんだと思えば、突然に儚く消えてしまうからだ。

 ある男が、多くの人々の前で騒いだ。

 「 人には、それぞれの生きる自由がある」と

  男は、即座に兵士に取り押さえられ、一週間後、男の生首が街のど真ん中で晒された。

 人々は、心中で同じことを思っただろう。

「あぁ、またか」と……

 そしてまた、シャボン玉は人々の心の中から消えていくのだ。

  こんなことは、この国では頻繁に起きる。

  鎖に繋がれている僕は、演説を行なっている大人を見るたびに、毎回、毎回、結果は分かりきっていようとも、少しだけ期待をした。

  ドロドロに腐り落ちて腐敗臭が漂よう、この国を、 
  海の底で、水圧でグチャグチャに潰されてしまいそうな、僕の心を、

 救い出してくれないものかと――。

  だが、いつからだろう。僕の心の中からも“シャボン玉”は消えてしまったようだ

 今日は、“シャボン玉”はいくつ消えただろうか……

 自分の飼い主に鎖を強く引っ張られ、首の痣の上からさらに食い込み、すっかり慣れてしまった痛みを感じながら僕は思う、



     自由なんてものは絵空事だ。



  さぁ、今日も、死に物狂いで一日を生き抜こう。

 僕には、自由などないのだから。

  僕は、

      ――奴隷なのだから――

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品