女嫌いと男嫌いの勘違い青春
25.ジョーカー
「ふぅ〜〜〜」
静かに息を吐く。
誰もいない廊下。床、壁は夕日色に染まり足元には長くなった影。不気味なほどに静かだ。
上を見上げる
ーーーーー理事長室
表札にはそう掲げ上げられていた。
「ふぅ〜〜〜」今度は意図的に肺奥底からゆっくりと息をつく。
もう一度上を見上げる
ーーーーー理事長室
やはりそこには堂々と掲げ上げられていた表札があった
そこに待ちわびているであろう魔王。今これから雄也は最終決戦に挑む。
雄也
「いくか…」
ドアノブに手をかける。ガッシリと力強く握る。
そして、そのままドアノブを捻り…
雄也
「こんにち…なっ!」
いきなり地面に叩き伏せられた。
雄也
「な、なんだお前」
雄也は組み伏せているのは屈強な男だ。
男と言うにはあまりにも老いている。というか…
雄也
(こいつ…どこかで………?でも?どこで……?)
「数時間ぶりじゃ。ご機嫌いかがかの?」
顎を上げ声の発生源に目を向ける。そこにはにこやかに笑みを浮かべる柊文子がいた。
いや、にこやかにという表情は適切ではない。確かに笑っている。笑ってはいるが、その奥には相手を嘲笑うかのような冷徹な感情が伺える。
さらに悪質な所はそれをあまり隠そうとしていないとこをだ。
文子
「大輝そろそろ解いて」
大輝
「かしこまりました」
音もなく雄也から離れる大輝と呼ばれる老人。
雄也
(大輝?たいき……たいき?……どこかで…それも凄い人だったような?あの格好を見るに執事だよな?執事で大輝……。柊に勤めて…っ!!!)
雄也
「もしかして………竹林大輝!あの、竹林大輝なのか!?」
大輝
「どの大輝かは知りませんが、竹林家の大輝とは私のことですな」ニコ
雄也の問いかけに己の身分を明かした老人。その答えに雄也は驚愕の色を示した。
竹林家、、、
それは草彅家などにも並ぶと言われている程の歴史を持つ家だ。
しかし、一般的には知られてはいない。
それも竹林家は古い歴史こそ持つ家でありながら昔から従者を生業としているの家であるからだ。
昔こそ、その力は大きく知らぬ者はいなかった程に大きかったが、終戦後にその力は衰退の一歩を辿っていった。
そのため一般的知名度が下がったのだ。
しかし、こうしてまだ竹林家が残っているのは権力者(政治を司る人)たちの秘書として、その腕を振るってこの世を渡ってきたのだ。
話を戻す。その竹林家、前筆頭の名前…それが竹林大輝。
つまり目の前にいる人ということになる。
つまりだ竹林大輝はもう執事家業を引退した身ではあるが、前筆頭とだけあって知名度、権力はそこそこある。
草彅家と竹林家とでは多少の上下関係はあるがほぼ同格と言っていいだろ。
そんな相手が柊家についた。
どうして俺にこだわるのかは知らないがまず逃げはないだろう。
雄也
(俺というよりは【草彅】に興味があるか…)
雄也は思考を巡らせる。
雄也の勝利条件は完膚なきまでに叩き潰すから、婚約の遅延&理由に変わった。
流石に分が悪すぎる。
婚約の理由に関しては雄也の爺(賢一)から聞き出せるから、婚約の遅延だろう。
そうと決まれば話は早い。
雄也
「さっさと要件を話してくれないか?俺も暇じゃない」
肩をコキコキ鳴らしながら催促する。
文子
「まぁー、いいじゃないか。ゆっくりと話をしよう?」
雄也
「ふざけるなよ?法律では結婚は自由だ!婚約だがなんだか知らないがとっとど解消しろ」
雄也は身振り手振り。なるべくオーバージェスチャーに訴えかける。
いつもの演技ではない。素の雄也100%がそこにはあった。
文子
「しかし、未成年の場合結婚するときは親の同意が必要。言ってる意味わかる?
逆を言えばそれは親が、
いいと!言ったら結婚できるという事にもなる」
雄也
「…脅そうってのか?確かにアンタの言った通り親であれば勝手に婚姻届を役所に持っていっても受理されるだろうな。本人の同意なしに!」
文子
「そう!それには相手の親とも協力しなければならないからな」
そう、この問題にあたっては雄也のおじいちゃんである賢一が重要な役目を担っている。
さっきの理事長の発言は実際可能である。しかし中々できるものではない。
それは自分の娘には黙って婚姻させる事ができたとしても相手方の分も必要になってくるからだ。
しかし、本来味方になってくれるはずである保護者が裏切るとなったら別。
状況は一筋の光もない絶望だ。
裁判所?無理だ。この方法はしっかりと法に則っている。
この会話(証拠)でもあれば別だが…
雄也
(クッソ!携帯はカバンの中だ!こんなことなら常時ボイスレコーダーでも持ってるんだったな)
携帯は入口付近に転がっているカバンの中。
証拠も取れない。
文子
「あらあら?どうしたの?急に黙って?」
ウザい、超ウザい!
ワザワザ煽ってきやがって!
あれ?口の中が鉄臭い。どうやら唇を噛み切ったようだ。
それだけ今の雄也は追い詰められていた。
必死考える。ココからの逆転は!どうすれば!?
大輝
「主人。作業終わりました」
必死考えて考えているところ後ろで何か作業らしきしていた竹林大輝が文子に声をかける。
文子
「そう。ありがと。早速次の作業に移って」
大輝
「かしこまりました」
お辞儀をし、部屋から出ていく。
大輝が出ていったあと文子はこちらに目を向けて、ニヤリとする。
瞬間悪寒がはしった。
文子
「今のなんの作業だったと思う?」
雄也には皆目検討もつかなかった。
この口ぶりからすると雄也には不利益なことなのは間違いない。
しかし、それが分からない。
荷物は荒らされた形跡はない。さっき携帯の事を考えていたときにバックを見た。その時に確認済み。
大輝がいたところは雄也の後ろ。真後ろ。後ろに目があるわけではないので何をしていたかが分からない。
文子
「なら教えてあげよう。それはな………
貴様の拇印を作っているのよ」
言っていることが分からない。拇印とはアレだ。
指で押すハンコのようなもの。
雄也
「馬鹿なこと言ってんじゃねーぞ!なんのために!?だいたい作れるわけないだろ!」
雄々しく吠える。ここで吠えると言ったのは今まで叫んだことがないような声量で怒鳴ったからだ。
雄也には確かに分からない。拇印を作ったときの用途を。またどうやって作るかを。
しかし、分からない事だらけだが一つわかっていた事があった。
それは雄也にとって都合が良くないこと。弾いと文子は完全に雄也の心を挫こうとしている事。
文子
「そうね。一つずつ教えていってあげるか」
一つ二つと指を折って数えだす。
文子
「まず一つ。拇印は婚姻届に使うからじゃ。雄也君頭いいからただのハンコだと後々ひっくり返されかねないからね。拇印の方が効果あるだろうし。拇印を使うのじゃ」
これには納得がいった。いや、納得するしかない。
雄也が逆でもそういった方法の方が効果的だと考えただろう。指紋とはその人物であるということを証明する一番の証。
文子
「そして二つ目。それは君が握ったドアノブ。少しだけ油を付けていてね?大輝にはそのドアノブに粉をかけてもらったのよ。そしたらあらビックリ!?指紋が浮き出てくる。
………それでなその指紋を写真撮ってその写真をもとに全くそっくりなハンコを作るのじゃ!?………わかったかの?」
そんなことが可能なのか!?可能なら犯罪がしたい放題ではないか!写真2、3枚で拇印のハンコを作るだと!?
わかりたくない。聞きたくないことを聞いてしまった。
これはもう犯罪だ。完璧な犯罪。しかし、法廷で立証する事ができない。見過ごすしかない。
しかも、この様子から嘘という線はない。となれば全てが事実!
科学の進歩が恨めしい。
最早状況は絶望的。ここからの勝ち目は薄い。
だが
雄也
「………なら俺からも一つ発言させてくれよ……」
勝てないわけではない。雄也はいくら絶望的でも諦めない。
雄也
「これなんだけれど」
俺には切り札がある。
文子の顔が固まる。
雄也の手にあるもの。
それは、この戦いおいて雄也からの反撃手段。
いつまでもやられっぱなしじゃないぞ!
運命の分岐点。
最強の手帳
次に続く
静かに息を吐く。
誰もいない廊下。床、壁は夕日色に染まり足元には長くなった影。不気味なほどに静かだ。
上を見上げる
ーーーーー理事長室
表札にはそう掲げ上げられていた。
「ふぅ〜〜〜」今度は意図的に肺奥底からゆっくりと息をつく。
もう一度上を見上げる
ーーーーー理事長室
やはりそこには堂々と掲げ上げられていた表札があった
そこに待ちわびているであろう魔王。今これから雄也は最終決戦に挑む。
雄也
「いくか…」
ドアノブに手をかける。ガッシリと力強く握る。
そして、そのままドアノブを捻り…
雄也
「こんにち…なっ!」
いきなり地面に叩き伏せられた。
雄也
「な、なんだお前」
雄也は組み伏せているのは屈強な男だ。
男と言うにはあまりにも老いている。というか…
雄也
(こいつ…どこかで………?でも?どこで……?)
「数時間ぶりじゃ。ご機嫌いかがかの?」
顎を上げ声の発生源に目を向ける。そこにはにこやかに笑みを浮かべる柊文子がいた。
いや、にこやかにという表情は適切ではない。確かに笑っている。笑ってはいるが、その奥には相手を嘲笑うかのような冷徹な感情が伺える。
さらに悪質な所はそれをあまり隠そうとしていないとこをだ。
文子
「大輝そろそろ解いて」
大輝
「かしこまりました」
音もなく雄也から離れる大輝と呼ばれる老人。
雄也
(大輝?たいき……たいき?……どこかで…それも凄い人だったような?あの格好を見るに執事だよな?執事で大輝……。柊に勤めて…っ!!!)
雄也
「もしかして………竹林大輝!あの、竹林大輝なのか!?」
大輝
「どの大輝かは知りませんが、竹林家の大輝とは私のことですな」ニコ
雄也の問いかけに己の身分を明かした老人。その答えに雄也は驚愕の色を示した。
竹林家、、、
それは草彅家などにも並ぶと言われている程の歴史を持つ家だ。
しかし、一般的には知られてはいない。
それも竹林家は古い歴史こそ持つ家でありながら昔から従者を生業としているの家であるからだ。
昔こそ、その力は大きく知らぬ者はいなかった程に大きかったが、終戦後にその力は衰退の一歩を辿っていった。
そのため一般的知名度が下がったのだ。
しかし、こうしてまだ竹林家が残っているのは権力者(政治を司る人)たちの秘書として、その腕を振るってこの世を渡ってきたのだ。
話を戻す。その竹林家、前筆頭の名前…それが竹林大輝。
つまり目の前にいる人ということになる。
つまりだ竹林大輝はもう執事家業を引退した身ではあるが、前筆頭とだけあって知名度、権力はそこそこある。
草彅家と竹林家とでは多少の上下関係はあるがほぼ同格と言っていいだろ。
そんな相手が柊家についた。
どうして俺にこだわるのかは知らないがまず逃げはないだろう。
雄也
(俺というよりは【草彅】に興味があるか…)
雄也は思考を巡らせる。
雄也の勝利条件は完膚なきまでに叩き潰すから、婚約の遅延&理由に変わった。
流石に分が悪すぎる。
婚約の理由に関しては雄也の爺(賢一)から聞き出せるから、婚約の遅延だろう。
そうと決まれば話は早い。
雄也
「さっさと要件を話してくれないか?俺も暇じゃない」
肩をコキコキ鳴らしながら催促する。
文子
「まぁー、いいじゃないか。ゆっくりと話をしよう?」
雄也
「ふざけるなよ?法律では結婚は自由だ!婚約だがなんだか知らないがとっとど解消しろ」
雄也は身振り手振り。なるべくオーバージェスチャーに訴えかける。
いつもの演技ではない。素の雄也100%がそこにはあった。
文子
「しかし、未成年の場合結婚するときは親の同意が必要。言ってる意味わかる?
逆を言えばそれは親が、
いいと!言ったら結婚できるという事にもなる」
雄也
「…脅そうってのか?確かにアンタの言った通り親であれば勝手に婚姻届を役所に持っていっても受理されるだろうな。本人の同意なしに!」
文子
「そう!それには相手の親とも協力しなければならないからな」
そう、この問題にあたっては雄也のおじいちゃんである賢一が重要な役目を担っている。
さっきの理事長の発言は実際可能である。しかし中々できるものではない。
それは自分の娘には黙って婚姻させる事ができたとしても相手方の分も必要になってくるからだ。
しかし、本来味方になってくれるはずである保護者が裏切るとなったら別。
状況は一筋の光もない絶望だ。
裁判所?無理だ。この方法はしっかりと法に則っている。
この会話(証拠)でもあれば別だが…
雄也
(クッソ!携帯はカバンの中だ!こんなことなら常時ボイスレコーダーでも持ってるんだったな)
携帯は入口付近に転がっているカバンの中。
証拠も取れない。
文子
「あらあら?どうしたの?急に黙って?」
ウザい、超ウザい!
ワザワザ煽ってきやがって!
あれ?口の中が鉄臭い。どうやら唇を噛み切ったようだ。
それだけ今の雄也は追い詰められていた。
必死考える。ココからの逆転は!どうすれば!?
大輝
「主人。作業終わりました」
必死考えて考えているところ後ろで何か作業らしきしていた竹林大輝が文子に声をかける。
文子
「そう。ありがと。早速次の作業に移って」
大輝
「かしこまりました」
お辞儀をし、部屋から出ていく。
大輝が出ていったあと文子はこちらに目を向けて、ニヤリとする。
瞬間悪寒がはしった。
文子
「今のなんの作業だったと思う?」
雄也には皆目検討もつかなかった。
この口ぶりからすると雄也には不利益なことなのは間違いない。
しかし、それが分からない。
荷物は荒らされた形跡はない。さっき携帯の事を考えていたときにバックを見た。その時に確認済み。
大輝がいたところは雄也の後ろ。真後ろ。後ろに目があるわけではないので何をしていたかが分からない。
文子
「なら教えてあげよう。それはな………
貴様の拇印を作っているのよ」
言っていることが分からない。拇印とはアレだ。
指で押すハンコのようなもの。
雄也
「馬鹿なこと言ってんじゃねーぞ!なんのために!?だいたい作れるわけないだろ!」
雄々しく吠える。ここで吠えると言ったのは今まで叫んだことがないような声量で怒鳴ったからだ。
雄也には確かに分からない。拇印を作ったときの用途を。またどうやって作るかを。
しかし、分からない事だらけだが一つわかっていた事があった。
それは雄也にとって都合が良くないこと。弾いと文子は完全に雄也の心を挫こうとしている事。
文子
「そうね。一つずつ教えていってあげるか」
一つ二つと指を折って数えだす。
文子
「まず一つ。拇印は婚姻届に使うからじゃ。雄也君頭いいからただのハンコだと後々ひっくり返されかねないからね。拇印の方が効果あるだろうし。拇印を使うのじゃ」
これには納得がいった。いや、納得するしかない。
雄也が逆でもそういった方法の方が効果的だと考えただろう。指紋とはその人物であるということを証明する一番の証。
文子
「そして二つ目。それは君が握ったドアノブ。少しだけ油を付けていてね?大輝にはそのドアノブに粉をかけてもらったのよ。そしたらあらビックリ!?指紋が浮き出てくる。
………それでなその指紋を写真撮ってその写真をもとに全くそっくりなハンコを作るのじゃ!?………わかったかの?」
そんなことが可能なのか!?可能なら犯罪がしたい放題ではないか!写真2、3枚で拇印のハンコを作るだと!?
わかりたくない。聞きたくないことを聞いてしまった。
これはもう犯罪だ。完璧な犯罪。しかし、法廷で立証する事ができない。見過ごすしかない。
しかも、この様子から嘘という線はない。となれば全てが事実!
科学の進歩が恨めしい。
最早状況は絶望的。ここからの勝ち目は薄い。
だが
雄也
「………なら俺からも一つ発言させてくれよ……」
勝てないわけではない。雄也はいくら絶望的でも諦めない。
雄也
「これなんだけれど」
俺には切り札がある。
文子の顔が固まる。
雄也の手にあるもの。
それは、この戦いおいて雄也からの反撃手段。
いつまでもやられっぱなしじゃないぞ!
運命の分岐点。
最強の手帳
次に続く
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