女嫌いと男嫌いの勘違い青春

あさにゃん

10.事件勃発Ⅱ

花蓮
「もしかして…開かない!?」

雄也
「……ッ」ゼェーゼェー

花蓮
「そんな…どうして!?」

ガッ!ガッ!

何度開こうとしても開かない扉。

花蓮は緊急事態が為かいつもの冷静さが失われていた。

花蓮
「どうして!どうしてよ!」

花蓮
「なぜ開かないの!?」ガンガンガン

闇雲やみくもに扉を開こうとする柊花蓮。

しかし、花蓮の悲鳴ひめいにも似た叫び声だけが教具準備室に響くだけだった。

雄也
「………」ゼェーゼェー
(クッソ…扉が開かないのか…)ダラダラ

ガンガン!

雄也
(完全に冷静さを失ってやがるな…)ゼェーゼェー ダラダラ

花蓮
「このままじゃ…また…」

花蓮
「………」ポタポタ

突然先程までうるさいくらいになっていた扉の音が聞こえなくなった事から、雄也は首だけを動かし柊花蓮の方を見る。

雄也
「……ッ!」
(…泣いている!のか?)

気づけば扉の取っ手を掴みながらその場に座り込み、子供のように泣き崩れている柊花蓮がいた。

花蓮
「…ウッ……お……かあ…さ…ん…ッ」ボロボロ

ついには声を荒げながら泣き出した。

花蓮
「…ッ……おかあ…さん!……お母さん!」ボロボロ

雄也
「……ひい…らぎ!かれ…ん!」ハァーハァー

明らかに様子がおかしい柊花蓮に雄也は声をかけようと、なんとか振り絞りながら声をかける。

花蓮
「ううう…う…」

しかし、柊の耳には入らないのか反応をしめさない。

雄也
「ッ!ヒイラギ………柊!………ク!…カ…花蓮!」ゼェーゼェー

しかし、それでも諦めず上半身を起こし

今度は今出せるだけの精一杯の声を出す雄也。

花蓮
「…!う…く、くさなぎ…くん?」

どうやら今度は通じたようだ。

自分の涙を制服の袖でぬぐいながらこちらを見る。

花蓮
「草彅君!大丈夫なの!?」

先程まで泣いていた人間とは思えない勢いで詰め寄ってきた。

雄也
「ゼェーゼェー…く、薬を…」

花蓮
「え?薬?薬ってどこに!どこにあるの?」

雄也
「ズ…ボンに」

花蓮
「わ、分かったわ」

少し遠慮がちに雄也の制服のズボンのポケットに、手を突っ込む花蓮。

花蓮
「…あったわ…。だけどこれって…」

確かに花蓮は雄也のズボンに手を突っ込み薬を見つけることができた。

しかし、出てきた薬に花蓮は驚いた。

何故ならポケットから出てきたものは、この雄也の異常な腫れに塗るための塗り薬でもなければ、喘息ぜんそくなどに使われるような特殊な吸引機でもない。

そう、雄也のズボンにあった薬は

花蓮
「これって…睡眠薬?」

誰でも持っているようなゴクゴク普通の睡眠薬だった。

花蓮
(これはどう見ても睡眠薬よね?見た事があるし、使ったこともあるわ。…大体こんなもので腫れが治る訳が…)

雄也
「はやく…してく…れ」ハァーハァー

花蓮
「ご、ごめんなさい」
(こんな事考えいる場合じゃないわ)

雄也
「………」アーン

花蓮
「………」プチ スー ポイ

雄也
「………」ゴクリ

花蓮
「…どう?」

雄也
「………」

花蓮
「………」

雄也
「………」

花蓮
「………」

雄也
「………」

花蓮
「……寝たの?」

薬を飲んでから、うんともすんとも言わない雄也。

花蓮
「まぁー、睡眠薬を飲んだものね」

雄也
「………」

花蓮
「しかし、あの腫れ方見たことがないし…。睡眠薬を飲むとも聞いたことがないわ…」

少し冷静さが戻ってきたのか一人ブツブツと解析かいせきしようとしている柊花蓮。

そして、不意にチラッと雄也の顔を覗き込んだ。

花蓮
「なんにしても助けられた?のかしら」

本人が持っていた薬なのだ。もう安心だろうと一息を入れてその場に座り込む。

そして、そのまま雄也のすぐ横で横になる花蓮。

今は、男の隣に寝るなんて事は気にしていなかった。

最初の入学式の挨拶。教科書、ノートを集めていたときの作業。

そして、この突然の草彅雄也の発作など今日一日で沢山の事が起こった。

それはいくらなんでも疲れてもいるだろう。

花蓮
「よかった…よかった…」ポロ

横になりながらまた少し涙を流す花蓮。

【今度は】助けられた安堵感あんどかんひたりながら

花蓮
「………」スースー

花蓮もいつの間にか
眠りに落ちていった………




              次に続く

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