魔術学院の二重奏者

田村タム助

魔王

「何勝ち誇ってやがるんだァ?このメンヘラ女が」
雰囲気が変わった。
「私は先輩とあいしあってたのですよ。悪魔は引っ込んでてください」
敵対心を前面に出しながら逆流リバーサルは吐き捨てるように言う。
「ははっ、これまたひどい扱いじゃねェか?コイツは俺、俺はコイツじゃねェか、なァ?」
「黙りなさい。先輩と貴様じゃ月とスッポン、いや恒星とスペースデブリ程の差があります。それに貴様に私を殺すことは出来ないでしょう?その時点でアウト、帰ってください」
その言葉にソウト改め悪魔は顔をしかめる
「あ"ァ"?お前、状況わかってんのか?」
「だってそうでしょう?貴様は魔術しか使えず、身体はボロボロ。これのどこに私が負ける要素があるのかしら?」
「じゃあひとつ聞こうかァ」
悪魔はおかしな所を1つだけ、問う。
「なぜ俺は生きてる?」
「それです。何故生きてるのですか。先輩のように己を守るすべを持っていないというのに何故、貴様は生きてるのですか。私にはわからない。まさか先輩が貴様に劣っているからなんて言わせませんよ。先輩は1番の存在なんです先輩は最強なんです先輩は世界一美しくカッコイイんです先輩は先輩は先輩は……」
逆流は壊れたようにブツブツと呟いている。
「あーもーうるせェ。《ちと燃えてろ》」
一言。彼はたった一言で上級炎性魔術屍河流炎レメゲトンを発動させた。
消えること無き冥土の炎が逆流に襲いかかる。
「ハッ!馬鹿ですか!まあいいです。私から殺しに行く手間が省けました、褒めて差し上げますよ、悪魔!」
そう言いながら右手で炎に触れ、魔術を通じて魔力を逆流させる。すると
「グゥッ……!」
彼女の右手、肘から先が焼け落ち無くなっていた。
「ッ!まさか……」
「お、気づいたァ?」
悪魔の表情を悦びが支配する。
「考えてみりゃわかるよなァ?魔力が逆流してやられるんだったら、お前が触った瞬間に自分の魔力を逆流させてやればそれは普通の流れに戻る。つまり、お前は自分から焼かれに来たってことだよ、わかってくれたかなァ?メンヘラマゾ女!」
「何んですかその原理は。無茶苦茶がすぎますよ」
意味がわからないと言った様子の呟き。
「木原くんって知ってるか?」
「誰ですか?その人は」
「知らないならいい。さて」
悪魔は笑みと狂気を浮かべ、問う。
「まだやり合うか?それとも大人しく俺に殺されるか?選べよ」
「そう、ですね……」
逆流は真っ直ぐ悪魔を見つめ答える。
「私はまだ、諦めていませんよ」
「やっぱそう来なくっちゃなァ!《炎球隊》《1番》《2番》《3番》《4番》!各自最適解を求めアイツを殺せェ!」
一方逆流は……
「また会いましょう先輩!それまで、死なないでくださいね!それと悪魔!貴様は死んでていい!むしろ死ね!」
魔術のアシストを受け、むしろほとんど魔術の力で、音速に届こうかという速度で去っていった。
「あ"!?おい!逃げてんじゃねェよメンヘラマゾ女ァ!おいゴルァ!……チッ…ったく。それと、俺は悪魔じゃねェ、魔王だ」
後には苛立った悪魔と、呆然と校舎からグラウンドを眺めている学生や教員だけが残った。

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