魔術学院の二重奏者

田村タム助

決闘不可避

 天童と呼ばれた少年がいた。
 どの属性の魔術にも長け、魔術協会に招かれることもあった。
 だがある時、少年はその能力を失った。
 魔術協会の研究・実験に協力していた時のこと。
 組み上げた魔術式に不備があり、魔力が暴走したのだ。暴走した魔力は僕の魔力回路を逆流、魔力を自身から切り離す出力装置を破壊した。それ以来僕は魔術がつかえない。
 この左胸に校章がないのもそのせいだ。
 学院にいることのみ許された、Fランクの劣等生。
「大丈夫、ソウトには身体強化エンチャントがある。それにほら……」
「ユキネが焦ってどうするのさ。ユキネはいつも冷静でいてくれないと、ね?」
 ユキネは無口で静かな方だけど、僕の過去を知ってるだけに、僕が気を落とさないように一生懸命励ましてくれる。ホントに、いい幼なじみだ。……寝込みを襲うことは除く。
「やあやあ無月、今日から二年次だねぇ。お、無月はDランクか。」
 そう言いながら(ユキネの)進路を塞いできたのは、1年の時からユキネにちょっかいをかけてきている三下みしたカズヤ。何度も冷たくあしらわれているはずなのに、メンタルが強いのか単なるバカなのか。
「こんなザコじゃなくて俺のモンになれよ」
 その言葉にユキわネはただ見下すような表情で一言
「あなたじゃソウトに傷一つ付けられない」
「ちょ、ちょっとユキネ!」
 慌てて静止に入るが時すでに遅し。彼の沸点は低く、先程の一言で簡単に超えてしまったようだ。
「ァんだと?」
「事実」
 二人の間で物理的に火花が散る。膨張した魔力どうしが干渉しているのだろう。
「よぅし。ならいいぜ、やってやる。おい、Fランク!」
「な、なにかな?」
もう何が言いたいかは理解しているつもりだ。でも、まだ勘違いの余地は……
「俺と決闘しろ!」
「デスヨネー」
 ないようだ。
「僕、戦いたくないんだけどダメかな?」
「戦わないならそれでもいいぜ?それでも俺は攻撃をやめないぜ?」
 どうやら彼はただユキネに自分の強さを誇示したいだけのようだ。
(これは断れない感じだね。多少は評価をあげないと一緒にいるユキネまで馬鹿にされるかもしれないし。)
 それだけは耐えられない。
「分かったよ」
「そう来ないとな。魔術学院Cランク生 三下カズヤ、Fランク生 黒鉄ソウトに決闘デュエルを申し込む!」
 わあ、なんて悪い笑顔だ。これは、少し痛い目を見てもらわないといけないかも。
「その決闘、受けて立ちます」

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2話目、出すのが遅くなってしまって本当に申し訳ない限りです。どうやら1人、こんな僕の作品をフォローしてくださっているようで感謝の雨嵐です。台風ですよ。
これからはもっと早く更新できるように頑張ります!

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