ゆるふわ系乙男召喚士、異世界に舞い降りる

ノベルバユーザー188303

第15話 クラウディオさんとの約束

「ただいま戻りました!」


はぁはぁと走ったことで上がる息を整えながら、クラウディオさん達がいる部屋に入る。


「あらあら、そんなに慌てずに帰ってこなくても大丈夫ですのに。
汗もかいているでしょうから、先にお風呂に入ってらっしゃい。」


クラウディオさんの隣で優雅にお茶を飲んでいたソフィーナさんが息を整えている僕に近づき、側にいた若い侍女の人に急いでお風呂の準備をするように言った。

クラウディオさんとソフィーナさんは結婚して30年以上経つらしく、今でも仲のいいおしどり夫婦だ。

そんなクラウディオさんとソフィーナさんには子供がいない。

いや、厳密に言うとお子さんはいたのだがお店を構える前、旅商人をしていた時に運悪く盗賊に襲われてしまい、息子さんを幼くして亡くしてしまったらしい。

もし生きていたら今の僕と同じ歳くらいになるといって、2人は僕のことを実の息子のように可愛がってくれている。

僕も優しいクラウディオさんとソフィーナさんが大好きで、2人のことを第2の両親だと思っていて、亡くなってしまった息子さんの分まで2人を大事にしようと思う。



「 ―――ってことを言ってました。」


侍女の人が準備してくれたお風呂から上がり、料理長が作ってくれたご飯を食べながらガルムさんが言っていたことをクラウディオさんに話す。


「ふむ・・・・・・。凄腕といわれているガルムにまで手伝いを頼むということは、本当に仕掛けようとしているのかもしれんな。
ウィルストから戻ってきた仲間の商人もなにやらきな臭い感じがするといっていたしのぉ。」


僕の話を聞きながら考え込んだクラウディオさんはあごひげを触りながらポツリと呟く。


「・・・・・・なんでウィルストの人達はこの国に戦をしかけてくるんですか?」


ガルムさんの歯切れの悪い言葉で薄々気づいていたが、クラウディオさんにも言われるとより一層現実味をおびてくる。

戦の話を聞いてから不思議に思っていた事をクラウディオさんに尋ねる。


「この国は他国に比べて、ひと山あれば巨万の富を得ると言われている鉱山が6つもあって資源が豊富なことから他国に狙われることが多いのだが、ウィルストは特にしつこくてのぉ。
ここ10年の間に4回も戦を仕掛けてきておる。
まぁ、ヴァルファード辺境伯が指揮する軍隊はドラゴン部隊があるからこの国に入ってこれたことなど1度もないのだがな。」


クラウディオさんの説明に納得しながら話を聞き、もし都市内にはいったらと一番心配だったことが1度もないという言葉に安堵の息を吐く。


「ん?ドラゴン部隊ですか?」

「あぁ。昴広は知らんだろうが、ワイバーンという翼をもつ竜がいてな。
そのワイバーンを調教して人を乗せて空中か攻撃をしかけて戦う部隊のことをドラゴン部隊というのだ。」


最後のデザートを食べながら、先程は聞き流していた聞きなれない部隊の名前に首を傾げる。

コテンと不思議そうに首を傾げる僕にクラウディオさんは優しくて説明してくれる。

フェンリルであるスハイルは子狼姿でいることが多いので、ドラゴンというファンタジー溢れる生物に瞳を輝かせる。


「ふふ。昴広さんもやっぱり男の子ね?」


そんな僕をみて僕達の話を静かに聞いていたソフィーナさんがクスクスと面白そうに笑う。

若干恥ずかしくなり頬を赤く染めて照れる。


「ふむ。ドラゴン部隊に興味があるのなら3日後ヴァルファード辺境伯のところに品物を届ける予定があるからワシと一緒にいくかのぉ?」

「え、いいんですか!?

あ・・・・・・でも、お仕事で行かれるんですよね?行くとしても貴族の方の前に出れる服がないです・・・・・・」


近所に散歩に行く時に誘うかのように軽く誘われて、俯いていた顔をバッと上げるがすぐに邪魔になるかもと考えショボンと肩を落とす。


「なにすぐに終わる用事であるし、ヴァルファード辺境伯とは用事が終わった後に一緒にお茶をするくらいの仲だから言えば快く見せてくれると思うぞ?
服はソフィーナに任せておけば相応しいものを用意してくれるとおもうのぉ。」


僕は目を細めながら笑うクラウディオさんの提案に悩む。

ファンタジーの中で特に人気のドラゴンはあまり詳しくない僕ですら知っているし、見てみたい気が強すぎるが本当にクラウディオさんの邪魔にならないのかと考える。


「・・・・・・本当にクラウディオさんのご迷惑にならないなら一緒に行きたいです」


ドラゴンの誘惑に負けた僕は恐る恐るクラウディオさんに頼む。


「では3日後に約束だのぉ。
ソフィーナや、昴広の服は任せたぞ?」

「えぇ。昴広さんに合うのを選んで来ますわ!」


ニコニコと上機嫌なクラウディオさんと約束すると、着ていく服を選んでくれるソフィーナさんにお礼を言い、どんな生き物なのだろうと想像を膨らませながら眠りについた。

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