ゆるふわ系乙男召喚士、異世界に舞い降りる

ノベルバユーザー188303

第14話 戦の足音

「はぁー疲れたぜー」


スハイルとベルム君が寝ている所を見ているうちに、いつの間にか僕も寝てしまっていたみたいで、カランカランと入り口のドアが開く音でハッと目を覚ました。


「あ・・・・・・ガルムさん?おかえりなさい・・・・・・。」


寝起きのぼんやりとした目を擦りながら、帰ってきたらしいガルムに眠気の残っている声でおかえりという。


「おぅ!こんな時間までベルムの面倒見せてわるかっ・・・・・・たな・・・・・・って、おい昴広!」

「んっ・・・・・・??」


持っていった仕事道具を片付けていたガルムは、お礼を言おうと昴広の方に目線を向けると同時にピシリと固まり、突然大声を上げた。

呼ばれた昴広は、眠たそうにしながら首を傾げる。


「服の前を綺麗に整えろ!!お前が男だと分かっていても目に毒だ!」


ガルムはそう言いながら、昴広に視線を向けないように横に目をそらす。

昴広はガルムのその様子に、不思議そうにしながらも言われた通りにはだけている部分を綺麗にして、緩んだ紐をきちんと結び直した。

寝ていた影響で浴衣の帯のような紐が緩み、昴広の白い素肌が見え、サラサラとしたプラチナブロンドの髪がいい具合にはだけた部分を隠していて、なんとも言えない妖艶な姿になっており、その姿を見たらガルムじゃなくても同じようなことを言うだろう。


「はぁ・・・・・・。少しは危機感を持て。お前のそのひ弱な体じゃあっという間に押し倒されるぞ。」


整えましたというと、一緒にテーブルに座ってガルムが入れたお茶を飲みながらいつになく真剣な表情でガルムが注意してきた。

ガルムは昴広の貞操のことについて心配して言っているのだが、昴広は冒険者活動のことについていっているのかな?と全く違うことを考えながら、わかりましたと返事をする。


「あ、お友達さんの応援は大丈夫だったんですか?」


ガルムが出ていってからのことを一通り報告が終わると、お昼前に出ていって日が暮れたこの時間に帰って来たということはとても大変なものだったのだろうと昴広は考え、思い切ってベルム君を任された経緯の内容を訊ねる。


「おう。おかげさんで領主様から頼まれた騎士団に納品する剣5000本作り上げてきたぞ。」

「剣5000本ですか?」


流石に重労働だったらしく、ガルムは疲労の見える表情を浮かべながら重い息をはく。

予想以上の返答に聞き間違いかと目を軽く開きながら問い返すが、ガルムの様子に聞き間違いではないことを悟る。


「まだ確定ではないらしいんだが、どうやら隣国のウィルストが戦を仕掛けようとしているらしい。」


日本にいた頃は外国の戦争の話を他人事のように見ていた昴広は、身近な存在になった戦という言葉に不安げに眉を寄せる。

ガルムはそんな昴広を見て、まだ未確定だからと安心するように肩を軽く叩く。


「急にベルムの面倒頼んでこんな時間まで居させて悪かったな、助かったありがとうな。
日が暮れ始めたし送るぞと言おうとしたが、どうやら心配症のセバスが迎えに来たみたいだな。」


「え・・・・・・?」


昴広がガルムからのお礼の言葉に返答をし帰るために立ち上がろうとすると、入口のドアの方を見てガルムがガハハと大きな声で笑い出す。

なぜここでセバスチャンの名前が出るのかと昴広がキョトンとした表情を浮かべる。


「失礼致します。
昴広様のお帰りが遅く御身に何かあったのかと心配になり、お節介かと思いましたがこのセバスチャン、お迎えに上がりました。」


面白そうにガルムが笑い出してから数分もしないうちに入口のドアが開き、ピシッとの皺の1つもないスーツのようなものを着こなしたセバスチャンが入ってきて、そうすることがさも当然の如くスっと昴広に頭を垂れる。

ガルムの予言どおりに現れたセバスチャンを昴広はポカンと見つめ、なぜ分かったのかとガルムに目を向ける。

どうやらドワーフ族は土の精霊と親密な関係で、500メートル先の音なら特定の音を聞き分けられるらしく、セバスチャンの足音でこちらに向かっていることが分かったらしい。


「昴広様。日も落ちてしまっていますし、クラウディオ様と奥様がお帰りをお待ちしておりますので、今日はこの辺でお暇致しましょう。」


土の精霊というファンタジーな生物に興味を示した昴広がどんな生き物なのかとガルムに質問しようとするが、また後日にとセバスチャンに言われる。

クラウディオ達をあまり待たせるのも気が引けるので、まだ寝ているベルム君の頭を撫で、ガルムに後日来ますといい、セバスチャンの言う通りに帰路を急いだ。

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