僕らのダンジョンアタカッーズ!

石神もんすとろ

ようこそ!ファンタジア学園へ!~特待生は注目の的でした 3~

「見えてきた!あれがファンタジア学園だ!」
「「「「おおおおっ!!」」」」

荷物を部屋からとってきた僕達五人は何時でも下船が可能なように準備を終えていた。そこで、残り僅かな時間を有意義に過ごせるように甲板へ上がり、外の景色を眺める事にした。
そして今、僕達は景色と一緒にファンタジア学園の全貌を眺めている。

「クニハル見てみろ!超絶でっかい建物だ!」
「もう見えてるよ……。あれが校舎なのか?どう見ても城じゃないか!」
「とても学園とは思えない規模だわ……。島一つまるごと学園の所有物だって話だし、相当な金と権力があるって事よねそれ」
「大陸で一、二を争う冒険者育成機関だからな。今までパンフレットや、アルネイの漁船からしか見たこと無かったから、ここまで近くで見たことは無かった。圧巻だな……」
「ウオッシャラァァァァ!!!俄然燃えてきたぜぇぇぇぇぇ!!!おれはぁ!!ここでぇ!!最高の冒険者になる!!」

各々が驚愕し、感嘆し、決意を固める。目の前に映るのは新たな場所、新たな生活、新たな挑戦、全てが新しいまさに未知。僕は自然と固唾を飲み込む。覚悟を決めたつもりだったが、それでも尚、体が震えている。武者震いならよかったが、残念ながらこれは緊張によるものだ。……でも、ここまで来たんだ。半ば強制的にこの世界に来て、死にかけた。つい数日前の事の筈なのにまるで昔のように感じる。
ーーもうあんな思いは沢山だ。何も出来ずに死ぬ気なんて無い。せめて、あの声の主を探しだす。そして一発殴る!理不尽かもしれないけど、そうしないと何というかこう、やるせない気分になる。
……これが僕の目標かな。何か小さい気もするけど。夢らしい夢がない僕には取り敢えずこんな目標しか立てられない。
それでも今はこの目標のために全力を尽くそう。それが僕にできる最善の行動だ。

「おーい!クニハル何やってんだ!そろそろ行くぞー!」

バスターが僕を呼ぶ。どうやらいつの間にか皆は船内に移動していたようだ。取り敢えず今僕が出来ることは皆においてかれないようにすることだな。色んな意味で。

「ごめん!今行くよ!」




『御乗船中の皆様、大変お待たせ致しました。当船はファンタジア学園へと到着いたしました。お降りの方々は荷物をまとめ、忘れ物に注意をした後、ゆっくりと下船をお願いします。繰り返しますーー』

「ついにキトゥアアアアア!!ファンタジア学園!!」
「うっさい!ちょっと落ち着きなさ「一番のりじゃオラァ!」ーーってちょっとぉ!?」


遂に目的地のファンタジア学園へと到着する。バスターは我慢出来なかったようで、我先にと船を降りていく。それをミファーが追いかけ、ロデルが深いため息と共にゆっくりと追いかけていった。そして見事に僕とレティアが取り残されてしまう。
まぁ、バスターがはしゃぐのも分からないでもない。訳ありの僕にだってドキドキと、確かな高揚感があるのだから。何だかんだで僕もファンタジア学園に興味があったらしい。今にして思えばこの世界に飛ばされる要因になったのも、元々は僕の好奇心が原因だったわけだし。
さて、どうやら他の人たちも下船を始めたようだし、ボクたちも後に続くとしよう。

「レティア行こう」
「うん!」

そういってレティアは自然に僕の手を繋いでくる。
もう大分慣れてきたとはいえ、流石にこうも人が多いと恥ずかしい気もする。まあだからといって離そうとは思わないけどね。





「シンドウ・クニハルだな」

な、何なんだこの状況は……。船を降りたと思ったら、いきなり白い制服を纏った人たちに囲まれてしまった。その中から一際威圧感のある帽子の男の人が僕の前にやって来る。

「おいおい!なんだよアンタらは!」
「クニハルに何のようだ」

レティアが腰の剣に手をかけて帽子の人を睨む。
でもーー

「駄目だよレティア」
「クニハル?」
「この人は強い。君より遥かに」
「使ったのか?」
「うん。つい、ね」

そう、ついこの人が出てきたときに、僕は自然と情報解析アナライズを発動していた。だがまだステータスが見えない。時間がかかりすぎている・・・・・・・・・・・。解析時間はおおよそ12~3分、今現在も解析中だ。ここまで長い解析は初めてだ。それだけこの人が強いというわけだ。今のレティアじゃ逆立ちしても勝てないだろう。

「何をしているか知らんが、お前がシンドウ クニハルでいいんだな?」
「……はい。そうです」
「我々と共に来て貰う」

直球だなぁ。せめて何か説明を下さい。まぁでも、大方予想はついてる。おそらくマーヴェラス号に乗る前のあの案内状だ。あの時のガイドさんの様子から明らかに何かあるのは分かりきっている。おそらくこの人達もその関係でここにいるのだろう。

「おいまてよ!いきなり現れてなんだテメエら!クニハルを何処につれていく気だゴラァ!」

バスターが僕達の間に割り込み、白服達に食って掛かる。……あぁ、やっぱりこうなったか。説明不足だからバスターたちに余計な疑念を与えてしまったようだ。

「お前たちには関係のない話だ」

そんなぶっきらぼうな言い方しなくても。余計に拗れるだけですよ?

「ちょっとそういう言い方無いんじゃない?」
「俺達はこいつの友人です。何の用かは知りませんけど、俺たちにもこの状況の説明をくれませんかね?」

ミファーとロデルも僕と帽子の人との間に割り込んでくれる。嬉しいけど、この状況は余計に拗れるだけの気がする。

「はぁ、仕方あるまい」

帽子の人は溜め息をつくと、再び姿勢をただし、自己紹介を行った。

「私の名はルートヴァルツ・ノイトフリーク。このファンタジア学園の3年生であり風紀副委員長である」
「……風紀」
「……副委員長?」

この白服の人達は皆この学園の風紀委員なのか。異世界といっても委員会とかそういうのは変わらないんだなぁ。

「ますますわかりませんね。何だって風紀委員がいきなり現れるんですかい?俺達はここに来たばかりて何も風紀を乱した覚えはありませんよ?」
「そもそも副委員長ってなによ!普通こういう時はトップが来るでしょう!委員長はどうしたのよ!」
「委員長は現在別グループと入学式の準備中だ。それと何か勘違いをしているようだが、我々は彼を学園長室につれていくだけだ。処罰等ではない」

学園長室に?一体何故?

「何だってそんな偉い人がクニハルを?」
「言ったはずだ。貴様らには関係ない」
「だからそんな言い方ーー」

「僕が特待生だからですよね?」

「「「え?」」」

「そうだ。その事で学園長がお前に話があるそうだ」
「確かに色々手続きとかありそうですけど、わざわざ学園長が対応しなくてもーー「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」」」ーーうわぁなに何!!?」

三人の大声のせいで僕の心臓が口から飛び出そうになる。一体何だと言うのか、急に叫びだしたりして。

「どうしたんだ三人とも?超絶うるさいぞ」
「おまっ、おまぁ!!叫びたくもなるわぁ!!クニハルお前っ、特待生ってマジかぁ!!?」
「えぇ、うん。一応」
「何でそんな冷静なのよ!?特待生ってつまりあれよ!?もう将来を約束されたのと同義よ!?」
「まさか特待生だったとわな……。普通とは違う気がするとは思ってたけど、本当まさかだわ……」
「え、どういうこと?意味がわからないんだけど……」
「シンドウ クニハル」
「はっ!はいっ!」

ルートヴァルツさん、いや先輩というべきなのか?
ルートヴァルツ先輩が三人の事を無視して僕に話しかけてくる。

「どうやら貴様は事の重大さに気付いて内容だな。そこの貴様も同様にな」

そういってルートヴァルツ先輩はレティアの方へと顔を向ける。顔を向けられたレティアはいまだに彼に対して警戒を解いておらず、その手は僕の元から離れ何時でも抜剣できるようにしている。

「ほぉ、中々の殺気だ。まぁ、私にとってはそよ風のようなものだが……。まあいい、それよりもだシンドウ クニハル。説明を受けたいのなら学園長に動向して貰う」
「……わかりました」
「賢明だな。ならば行くぞ。ここからは私がつれていく。お前たちは持ち場に戻れ!」
「「「「はっ!!」」」」

ルートヴァルツ先輩の一声で他の風紀委員が一斉に散らばって行く。何というか貫禄があるなこの人。

「さて、それではついてきて貰うぞ。貴様らはそのまま学園へ迎え。そこに案内係がいる。そこで色々説明を受けろ」

バスター、ミファー、ロデルの三人は僕の方へと顔を向ける。僕としては心細いため、出来れば一緒にいてほしいけど、これは僕の問題だ。これ以上彼等をつき合わさるわけにはいかない。

「僕は大丈夫だから皆は説明を受けてきて?」
「クニハル……けどおまえ」
「大丈夫だから」

バスターの言葉を遮るように、大丈夫だと僕は言う。
バスターもそんな僕に対して何も言うことが出来ず、納得いかなそうにしながらもしぶしぶ下がっていった。

「それじゃあお願いします」
「了解し「ダメだ!」ーーむ?」
「レティア?」
「一人で行くのは超絶ダメだ!行くならワタシも連れていけ」

僕の事を心配してくれたのか、それとも自分が寂しいからなのか、どちらにせよその言葉は僕の不安を少しずつ消し去ってくれる。レティア、君は本当に優しい。優しすぎる。でもわざわざこんなことにまで首を突っ込まなくてもいいのに。それに先輩がこの事に頭を縦に降るとはーー
 

「いいだろう」

ーーいいのっ!?

「い、いいんですか?」
「そこの少女は貴様と行動を共にしていたのだろう?ならばお前の事に詳しいだろうからな。それに特待生について理解してもらう必要もあるのでな」
「ちょっと待てや!それなら俺達もつれてけや!!」
「お前たちはダメだ。おとなしく学園にむかえ」
「何でだよ!不公平だろうが!」

バスターの嘆願も一蹴される。だがそれでも噛みつき続けるバスターにルートヴァルツ先輩は溜め息をつきながらも説明してくれる。

「元々シンドウには少女の同行者がいることはわかっていた。一応特待生としてコイツの素性を知る必要もあるため、情報提供者が必要なのだ。そのために彼女もつれていく」
「だったら俺達もーー」
「バスター!もういい」
「ロデルっ!!」

なおも食って掛かろうとするバスターをロデルが止める。ルートヴァルツ先輩も、もう話すことはないと言わんばかりに背を向けて学園の方へと歩いて行っている。僕も先輩の後を追って学園へと向かおうとする。するとレティアに右手を掴まれる

「クニハル……」

どこか不安そうな顔をしているレティアに、僕は優しく語りかける。

「ありがとうレティア。実は僕も一人じゃ心細かったから素直に嬉しいよ」
「……うん!えへへ」

レティアの顔が笑顔へと変わる。うん、そっちの方が断然いい。
僕はバスター達へと向き直り、三人に先に行くよう伝える。

「それじゃあ僕達は学園長室にいくよ。またあとでね」
「ああ、また後でな」
「何かあったらいつでも相談してきてね。特にレティアちゃん!」
「納得いかねーけど仕方ねぇか。おし!また後でな!」

こうして三人は学園の方へと向かった。あとに残ったのは僕とレティア、そして遠巻きにこちらが来るのを待っているルートヴァルツ先輩だ。
いけない待たせちゃった!

「何をしている。早く行くぞ」
「はっ、はい!」
「むーあいつ超絶偉そう」

さて、僕達もそろそろ学園長室へーー『解析完了』ーーおっ!ここで解析が終わったか。僕は眼鏡を外し、ルートヴァルツ先輩のステータスを見る。



ルートヴァルツ・ノイトフリーク level.32

HP : 428/428
MP: 342/342

状態:正常

攻撃力 162
耐久力 202
魔力     175
俊敏力 133
智力     61

汎用スキル: 
ソード系level5 :ソード系のあらゆるスキルを内包している 現段階では全ての開示は不可能

シールド系level6: シールド系のあらゆるスキルを内包している 現段階では全ての開示は不可能

ランス系level5: ランス系のあらゆるスキルを内包している 現段階では全ての開示は不可能


マジックスキル:
ウィンド系level7:ウィンド系のあらゆるマジックスキルを内包している 現段階ではでは全ての開示は不可能

アクア系level6:アクア系のあらゆるマジックスキルを内包している 現段階では全ての開示は不可能

ヒール系level6: ヒール系のあらゆるマジックスキルを内包している 現段階では全ての開示は不可能

オリジナルスキル: 無し


うわぁ……。強いとは思ってたけど段違い過ぎる。レベル差がありすぎてほとんど情報解析アナライズが機能してないよこれ。
取り敢えず、おとなしく言うこと聞いておこう。そう心に近い僕はレティアと一緒にルートヴァルツ先輩の後をおうのだった。






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