学生騎士と恋物語《パンドラボックス》

福乃ミナ

第30話 瞳の性格

会話が終わると既に選手は入場しており、後は試合開始の合図を待っていた。
『さぁ〜選手が入場して来た所でここで軽い紹介をしておきましょう』
紹介?俺達の時はそんなもんなかったのに。
「その顔は分からない感じかな?」
「…顔に出てましたか?」
「出てるとも。お姉さんは顔を見ただけで何を考えているのか分かるのだよ〜」
凄いを通り越して逆に怖いな。
「しかも月影くんはすぐ顔に出すから面白くてついついからかいそうになっちゃうんだよね」
何だろうこの人。関わったら凄く嫌な予感しかしない。
「そ、そうですか…」
「その表情!!」
瞳は急に大声を出し、目を輝かせる。
「その表情がたまらなく良い!!」
頬を染め、手を頬に当てはぁ〜と言いながら笑う。側から見たらただの変人だ。
赤月先生〜この人の何処が礼儀正しいんですか?ただの変態ですよ。
亜紀斗が想像していた会長の図が一瞬で崩れていく。
想像していたのはもっと礼儀正しく、とても清らかで優しい人だと思っていたが、実際はただの変態だった。
顔を見るなり興奮するとかとんだヤベェ奴じゃねえか。
(変な奴に目を付けられたな)
全くだよチクショー!!
「何をやってるんですか会長」
後ろから軽いデコピンが来る。後ろに立っていたのは昨日戦った蛍だった。
昨日の事もあってか少し気まずいな…
「痛いよ蛍ちゃん。君は一応一年生だよ?」
「会長が暴走しそうだったので止めただけです」
これが暴走前!?暴走したらどうなるんだよ!?
そんな事を思っている亜紀斗をよそに二人は話を続ける。
「失礼な。私だって時と場所くらいは分かるわよ」
「分かってないから何度も副会長さんに怒られるんですよ」
「……怒られてないもん」
「おい、今の間は何だ?」
「間なんてないもん」
ほっぺを膨らませ、プイと顔を横に振る。
「これ…ふてくされモードに入っちゃた」
ふてくされモードって何だよ?子供かよ!え、何?うちの生徒会長は変態で怒られ過ぎるとふてくされるのか…完全に子供じゃねえか!!いや子供のはずない。多分。
「でも飴をあげたらすぐに直りますよ」
「完全に子供じゃねえか!!」
「子供じゃないもん!!」
やや泣き目で言い返してくる。後で泣くよこの人。どんだけハート脆いんだよ…
「なんて事を言うんですか!」
流石に子供は言い過ぎたな。
亜紀斗は少し反省をする。
「蛍ちゃん〜!」
「確かにこの人は度が付くほどの変態で少し…いや、完全に子供ぽっいですけど、やる時はやる人ですよ。多分」
「お前が何言ってんだよ!」
それ、褒めてるの?ディスってるの?どっちだよ!!
「うわぁぁぁぁぁ!二人がいじめて来る〜!!」
瞳は勢いよく立ち上がり、猛スピードで階段を駆け上がり観客席から姿を消す。
「あ〜あ。泣かせた」
「トドメ刺したのお前だよ」
「いや、四・六」
「俺が四か?」
「いや、あんたが六」
「ふざけんな十・ゼロでお前が悪い」
そう言うと蛍はえ〜と言いながら席から立ち上がる。

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