学生騎士と恋物語《パンドラボックス》

福乃ミナ

第13話 準備期間

朝。
カーテンの隙間から差し込む微かな光で亜紀斗は眼が覚める。
「…もう朝か」
昨日いつ寝たっけ?思い出せん。
色々考え事をしているうちに寝てしまったようだ。大きな欠伸と背伸びをし、布団から出る。
「寒いぞ」
キュウの声と同時に亜紀斗は布団の中に連れ戻される。
一瞬、何が起きたのか分からず、気づけば布団の中に入っている。そして疑問に思ったことがある。
「キュウ、何でお前がここにいる?」
「主の身体が暖かいから〜」
そう言うとキュウは亜紀斗の懐に飛び付き、また寝に入ろうとする。
「おい待て寝るな」
「イタッ」
軽いデコピンをし、キュウを抱え布団から出る。
「主〜さむい」
尻尾で顔をバシバシ殴る。
便利だなその尻尾。
「じゃあ狐に戻れよ。そっちの方が暖かいぞ!」
「嫌じゃ。布団の方が暖かいもん!」
手足をバタバタさせ、亜紀斗の腕の中で暴れる。一瞬投げ飛ばしてやろうと思ったが、後の仕返しが面倒だからやめて置こう。



キュウが暴れるせいで朝の支度がいつもより三十分くらい遅れる。亜紀斗は急いで鞄に必要最低限の物を入れて行き、玄関に行く。
「行ってきます!」
亜紀斗はそう言い残し、ドアを開ける。ドアを開けると、目の前には何故か蛍の姿があった。
「お、おはよう」
挨拶と軽い会釈をし、ドアを閉め歩き出す。
「ちょっと待って!」数メートル歩いた時点で蛍から肩を掴まれる。
「放課後、話があるから教室に残っておいて」
ん?今なんて?
あまりにも早口過ぎるので一部分聞き逃してしまう。
放課後に何処で待っておけ?最後の方がよく聞こえなかったな。
「何処に待っておけば良いの?」
「は?教室よ。何度も言わせないで」
言い方に少し棘があるな。
そう言うと、蛍は早歩きで亜紀斗の先を行く。
行く場所一緒なのに。
心の隅でそんな事を思ってしまう。



教室に入ると周りは騒がしく、亜紀斗が入って来てもまるで空気みたいな扱いをされる。
みんな元気だね。少なからずそんな事を思ってしまう。
亜紀斗が席に着くと同時に神咲が教室に入って来る。
入ると同時に黒板に一時限目の授業の内容の事を書き始める。

一時限目

学年別トーナメント戦の軽いルール説明。
主なルールは、魔獣とのタッグ戦である事。魔獣を出すタイミングはそれぞれ自由。
勝敗は相手の気絶。又は勝負の継続が不可能な状態といったてシンプル。
これは分かりやすくて良い。要は相手を戦闘不能にすれば良いだけだ。

そして、月野との約束した放課後

亜紀斗は蛍に言われたとうりに教室に残る。
誰もいない教室。何故か自然と落ち着く。目を閉じて、椅子に座っていると、廊下の方から足音が聞こえてくる。どうせ月野だろう。
その予想は見事にあたり、蛍は教室に入って来る。
「待たせたわね」
亜紀斗の目の前に来て、謝罪する。
「良いよ、別に。後、話があるなら手身近に〜」
「そう。なら単刀直入に聞くわ」
「おう」
「貴方の持っている強さは一体何?どうすれば手に入るの?」
「俺に強さを聞くのか」
亜紀斗は椅子から立ち上がり、背伸びをする。
「じゃああんたにはもう興味は無い」
「!?」
突然の発言に蛍は耳を疑う。
「興味が無い?ふざけるな!!」
蛍は亜紀斗の胸ぐらを掴み、壁に押し当てる。
「貴方もそうやって私をコケにするつもりか!?」
ああ、そうか。
亜紀斗は悟った。いや、悟ってしまったのだ。
こいつはただ力が欲しいだけか。それならこいつはかなり危険だ。
「一つだけ、忠告してやる」
「忠告?」
「ああ。力を欲する者はいずれ自分が求めていたその力に溺れ、嘆き、後悔する」
「どうゆう意味だ!?」
「いずれ分かる事だ」
そう言って蛍の手をどけると、荷物を持ち教室を出る。
それぞれの思い、目的が交差する中、学年別トーナメント戦が開幕する。

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