学生騎士と恋物語《パンドラボックス》

福乃ミナ

第2話 名家の少女


カンカン

木と木がぶつかり合う音が部屋中に響く。
うるせえ。
「・・・誰だよ。迷惑だな」
目を開けるとそこはさっきまでいた場所とは別の場所だった。
辺り一面鉄で覆われており、目の前には窓ガラスのような物がある。
「どうなってんだ?」
周りは鉄で覆われているはずなのに、カンカンと木がぶつかり合う音は鳴り続いている。
そして一番謎なのが目の前にある窓ガラス。多分、この先から音はしてるのだろう。試しに一発殴って見る。
ガンッ
良い音はするがヒビが入っておらず、ただこっちの拳が痛い。
さてどうやってここから出るか?周りは鉄で覆われてるし、目の前の窓ガラスは硬過ぎて割れない。どう考えても八方塞がりだ。
「あ、荷物が無い!?」
ここで荷物が無いことに気がつく。
「まあ別にいいか。取られる物は入れてないし。それに携帯はポケットの中にある」
が、バックは少し名残り惜しいな。高かったのに。値段は千五百円。うん、そこまで高くないな。
そうこうしているうちに、何処からか赤月が出て来る。
「起きたか。見る限り大丈夫だな」
「あ、テメェ〜」
「ん、何だ?」
「俺の荷物、何処にやった!?」
「・・・もう一度言ってくれ」
「いやだから、俺の荷物。何処にやった」
赤月は呆れた顔をしながらため息をつくと、
「聞きたいのはそれだけか?」
「無いから俺の荷物」
「はぁ〜今年の一年は大丈夫か?」
頭を抱え、タバコを一本取り出す。
「一年?俺以外にも誰かいるのか?」
「ああ、お前以外にもう一人な」
そう言ってタバコに火を点けると、フゥーと息を吐き出す。
「そいつはお前より一時間早く着いてな。今ガラスの向こうにいる。見るか?」
「頼む」
赤月はリモコンを取り出し亜紀斗に投げる。
「おっと。で、何処のボタンを押せば良いんだ?」
「どれでも良いぞ。ただし、変な所を押すと電流が流れるぞ」
「おい、しれっとヤバいもん渡してくんな」
そう言って赤月に投げ返す。よくあるビリビリボールペンみたいなやつか。
「まったく情けない」
適当にボタンを押す。すると、さっきまで真っ黒だった窓ガラスが急に明るくなる。
「おい二人いるぞ。どう言うことだ?」
亜紀斗の目の前には背の高い男と背の低い女性が写っていた。
「ああ、男の方はウチの生徒会副会長だ。で、女の方がお前と同じ一年だ」
「名前はなんて言うんだ?」
「男の方が本山シン(もとやましん)。女の方が月野蛍(つきのほたる)だ」
「へぇ〜」
軽く頷くと、亜紀斗は蛍の動きに注目する。あの二人は木刀で打ち合いをしている。しかし、あの月野って女の動きはどことなく癖がある。あの癖は・・・
「もしかして月野ってあの・・・」
「そうだ。月野流剣術の伝承者、月野大佑(つきのだいすけ)の実の娘だ」
やはりな。動く時に少しだけ姿勢が猫背になる。動きやすいように猫背になったり、攻撃する時も猫背になる。それが月野流の特徴だ。しかし、何故あんな大物の娘がここにいるんだ?ダメ元で聞いてみるか。
「そんな大物の娘が何故ここに入学を?」
「・・・それは秘密だ」
ダメ元で聞いてみたが、やっぱりダメか。が、あの月野大佑の娘なら一度ぐらいは剣を交えてみたい物だ。
そんな事を思っていると、
「あの二人の所へ行くか?」
まるで亜紀斗の心を見たような質問だった。
「良いんですか?」
「ああ。お前が行きたいんならな」
「行きたいです」
「そうかなら付いて来い。案内してやる」
赤月は胸ポケットからカードキーを取り出すと、近くにある壁に当たる。
「認証中・・・認証中・・・読み取り成功。お気を付けてお乗りください」
機械の声と同時に壁が開き、エレベーターになる。これには亜紀斗もビックリする。
「どうゆう仕組みだ?」
「知るか。自分で考えろ」
赤月はそう吐き捨てるように言うと、早く乗れと言う。
それに亜紀斗は無言で頷くとエレベーターの中に乗り込む。
乗ったのを確認すると、扉を閉め、一気に上がる。
上がる速度は多分、東京タワーのエレベーター並みの速さだと思う。
チーンと音が鳴り、扉が開く。

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