学生騎士と恋物語《パンドラボックス》

福乃ミナ

プロローグ

 これは亡き母が最後に書いた手紙だ。

『拝啓 今日から貴方は晴れて高校生になりますね』

 母は三年前に病気で他界した。

『貴方の制服姿が見れずにとても残念です』

僕も残念だよ。

『入学式の前日はよく眠れましたか?ご飯はちゃんと食べましたか?』

よく寝れたし、ちゃんと食べたよ。

『貴方は私に似て身体が弱いのでなるべく体調を崩さないようにして下さい』

崩さないようにするよ。

『それからネクタイはちゃんと結べるようになりましたか?曲がっていませんか?』

なんとか結べるようになったよ。曲がっては・・・いたね。

『やっぱり曲がっていましたね』

何でわかってんの ︎まさか予想して書いたのこれ?

『ビックリした?』

いや、ビックリしたよ。てかまた・・・

『それと最後に・・・』

もう最後か。

『立派な騎士になって下さい ︎』

最後の文章だけが大きな字で書かれている。多分それが母の小さな願いであり、俺が出来る唯一の償い。

「ああ、なるよ。立派な騎士に」

月影亜紀斗はそう心に誓い、学園の門に足を踏み入れる。

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