学生騎士と恋物語《パンドラボックス》

福乃ミナ

第1話 人は見かけによらない

私立神明学園
入学セレモニーが行われる一時間前、月影亜紀斗は一人校舎の前に立っていた。
少し早く学園に着いてしまったな。周りを見ても何処も上級生ばかりだ。
「少しどころかだいぶ早く着いたぞ」
時計を見るも、後一時間くらいある。時間を潰そうにも周りは何処も作業中だしな。
何処も最後の仕上げに取り掛かっており、とても話掛けれる状態じゃない。
まあ当たり前か。それにしても困ったぞ。話し相手が居ないこの状況で一体何で時間を潰せばいいんだ?本はあいにく家に忘れて持ってきておらず、携帯の充電も残りわずか。無理だ。ここから一時間ボーッとして過ごすなんて。それだけは避けたい。
そうやってキョロキョロしていると、一人の教師が亜紀斗の元へと近づいて来る。
もしかして俺みたいに早く来た人の待機場所に連れて行ってくれるのか?
だが、近づいて来る教師はいかにもそんな雰囲気ではなかった。しかも何故か怒っている。
「何をキョロキョロしている!?」
「・・・はい?」
「はいでは無い。何故ここにいるのだ ︎」
もしかしてここに居たらダメだったやつか。一応聞いておくか。
「何か問題でもありますか?」
「問題・・・だと?有りまくりだ ︎お前はこの状況を見てまだ分からんのか!?」
分からん。一ミリも分からん。分かるのは上級生が何か作業をしている姿しか分からん。これで何を分かれと?分かるか ︎
「・・・分かりません」
一応素直に答えたつもりだ。もちろん真面目な解答だ。これが一番良い答え方だろう。
自信満々に答えると、目の前の教師は笑顔は笑顔でもとても怖い笑顔だ。
あ、アカンこれは一番ヤバい顔だ。
「分からないのなら教えてやる。今、先輩達は新入生を迎え入れる準備をしているんだ。この時間で全てを終わらせようとしている」
そんなもん見ればわかるわ。
「そこにお前は集合時間を無視して遅刻字で来たんだよ。分かるか!?」
「へぇ〜ってあんた何か勘違いしてるだろ!?」
「この後に及んでまだ言い訳をするつもりなのか?」
「いや、違いますよ!!」
この人完全に俺のこと二年生だと思っていやがる。まずその勘違いを正さないとまずい事になる。ここは・・・
「すみません、失礼します!!」
逃げよう全力で。
「あ、待て!!」
逃げるとは予想していなかったのか反応が少し遅れる。
「とりあえず門から出ればこっちの勝ちだ!」
が、走った先にはもう一人、教師が立っていた。
「まじかよ」
しかも、よく見たら女教師だ。身長は百六十くらいか?あの高さなら、
「跳び越えてやる!!」
亜紀斗は手前で力強く地面を蹴り、女教師を跳び越える。
「どうだ!?」
いくら教師でもこの高さは届かないだろう。跳んだ高さは多分二メートルくらい? 
「中々面白い手だ。だが・・・」
その数秒後、女教師は亜紀斗と同じくらいの高さまで跳ぶ。
「相手が悪かったな」
「嘘だろ!?」
次の瞬間、亜紀斗の腕と制服は掴まれ、地面に叩きつけられる。
「がはっ!」
叩きつけられた衝撃で周りの人間が一斉に亜紀斗達の方に注目する。
女教師は地面に着地すると周りの人間達に
「お前ら気にするな。これは訓練だ。さあ、早く作業を続けろ」
そう言うと、周りを見ていた女教師は次に亜紀斗の方を見る。
「まったく、私ではなかったらお前は逃げれていただろう。運の無い奴め」
「赤月先生、やり過ぎですよ!!」
赤月と呼ばれる女教師は男性教師に向かって謝罪する。
「すみません坂本先生。あんなことされたからつい・・・」
「ついじゃあありませんよ ︎しかもこの子伸びてますよ」
「あ、本当ですね。じゃあ保健室に・・・ん?」
赤月は亜紀斗の制服の胸のエンブレムに注目する。
「こいつは・・・坂本先生」
「はい、何ですか?」
「後始末を頼みました」
そう言うと赤月は亜紀斗を抱え、その場を去る。
「あ、ちょっと待って・・・ってもういない!」
赤月を見失い慌てる坂本をよそに赤月はある場所に向かう。
「こいつは運が良いな」

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