【リメイク版】そのゴーレム、元人間につき
6話
ランドがBランクへと昇格し、1週間が経った。
いつもはギルドの依頼書が貼られているボードの前で突っ立っているランドだが、今回はギルド2階にある会議室にいた。
そこにはランド1人だけではなく、様々な冒険者が集まっており、広い会議室も狭く感じられる。
人数が多いと言うよりは、一人一人の体つきが大きく、部屋が狭く感じられると言うものだ。
勿論、女性の冒険者もいる。
冒険者どうしで話し合い、和気藹々としている中で、ランドはポツンと誰とも喋らず座っていた。
と言うよりも、誰も話しかけてこないと言うのが正しいか。
皆が皆、ちらりとランドを見ては視線を反らす。
ランドもその視線に気がついているのかいないのか、端から見ればわからないが、ただ等の本人は何も考えていなかったりする。
「早く終わらねぇかな」
そんなことをランドが考えていると、2つあるドアのうち、1つが開かれイトヲカシが悠々と入ってくる。
「やぁ、良く集まってくれた。では、今回の依頼内容を再度説明する!」
会議室全体に響くほど、活気と覇気をみせながら、告げる。
すると会議室内にいた冒険者達の緩んだ空気も一瞬で真剣なものに変わる。
ランドは相変わらずどこを見ているのか、表情一つ変えていない。
「まず、今回の依頼はアタイがあんたらに個人的に話した勇者〈・・〉に着いてだ! この王都になんか知らんがいつの間にかいた勇者の訓練にアタイ等王都ギルドに丸投げ……ゴホンッ! 依頼が来た。よって、今回はダンジョンに勇者達の引率としてあんたらに頼んだわけだ。ここまでは良いね?」
周りにいる冒険者全員へ視線を送りながら続ける。
冒険者達は頷く。
「……カッコつけたは良いけど。ぶっちゃけ話は終わりなんだなこれが」
会議室にコケた冒険者達の振動と鎧の音が鳴り響き、下の階の受付嬢達はビックリして気絶した者が居たそうな。
「ゴホンッ! まぁ、あくまでも最終確認だと思っておいて欲しい。そして、護衛対象は勇者だ、それもダンジョン初心者と来たしそれは戦いにおいても同じ。当然油断すれば死ぬ……いいかい、この依頼絶対に失敗は許さないよ! 何があっても勇者を生かして帰しな!」
「「「おぉぉぉぉ!!!!!」」」
「そして何と報酬は1人大金貨5枚だぁぁぁぁぁ!」
「「「おぉぉぉぉ!!!!!」」」
ランドは戦慄する。
「大金貨1枚は嘘だったのかアイツ! 騙された!」
ショックを受けたランドだが、5倍の値段が払われるのならと考えを改めて頷いた。
「ただし、騙した罰としてもう2、3枚は掠めとる」
黒い笑みを浮かべるのだった。
◇◇◇
王都の門前、そこには20人近い人の集団が並んでいた。
当然、街の前に20人近く人がいればどんなに頭の悪い者でも不思議に思う。そのせいか、さらにその近くでは人がごった返していた。
そんなに人数が集まると言うことは、魔物のスタンピードでもあるのだろうかと心配する者もいるのだが、聞き耳の早いものは何故こんなに人が集まっているのか容易に想像できていた。
門前に集まっていたのは冒険者達だった。
それぞれが自分のスタイルにあった装備をして、その活気はいつになく高い。報酬が今までにないほど高額だったからだろう。その冒険者達は心なしか士気が高かった。
「大金貨5枚なんて暫くは遊んで暮らせるぜ!」
「ばっか、お前! その分失敗できねぇっての!」
「そうだぜ? いつもならはしゃいで良いとは思うが実際問題ミスったら俺らは絶対に死刑確実だぞ」
「た、確かに……悪かった」
高額の報酬に目が眩む者もいるらしいが、パーティーメンバーがしっかりしているのだろう、なんとか油断せずにすむことができそうだった。
「ゆ、勇者の護衛だってよ……緊張する」
「なーにビビってんのよ! むしろ腕の見せ所じゃない、それに……この依頼が終わったら結婚資金が増えるのよ!? 頑張らなくちゃ!」
「そ、そうだな! お前との未来のためにもやるぜ俺は!」
カップルの冒険者は望む未来へ向けてより一層集中をしている様だった。
他にもダンジョン内でどう行動するか、万が一の事が起きれば誰が殿を引き受けるかなど、ちゃんと依頼に真摯に重く受け止める優秀なパーティーもいた。
そんな中、ランドは他の冒険者を色々と見ていた。
「ほー、なかなか知らん奴がいっぱいいるな」
元々そこまで知り合いがいるわけではないランドだが、ギルドには顔を出すため、名前を知らないまでも、顔くらいは知っている者もいる。
それでも見た記憶のない冒険者パーティーが複数いた。恐らくは他所の街から依頼されたランクの高い者達だろう事は推測できた。
この場にいる殆どがCランク以上の冒険者で構成されており、中にはAランクの冒険者が混じっていた。
「おい、来たぞ!」
誰の声だろうか。
1人の冒険者が叫び、その方向には王族が使用するかなり豪華な馬車が数台並んでやってくる。
その馬車は冒険者達と少し離れた所で止まると、中から若い少年少女達が降りてくる。
「あれが……勇者か。まだ子供だぞ」
「もう少しで成人するかどうかじゃねえの?」
やって来た少年少女達はその殆どが黒髪の黒い瞳をしており、所々に派手な髪色の者もいるが冒険者達にもピンクのモヒカンなどが普通にいるため、特に気にしては居なかった。
ただし、向こうは少し驚いていた。
そしてそれぞれがかなり上質な装備をしており、きらびやかな鎧や光沢が輝くローブなど、その辺で気軽には手に入らない代物ばかりだった。
「すげぇ装備」
「あぁ、手ぇ出そうとするなよ? 奪ったとしても死刑は確実だぞ」
「バカか、そんな事よりも大金貨5枚の方が良いだろ」
実は勇者の装備が並大抵の者では無いことくらい分かっていたイトヲカシは、報酬を多目に用意し、略奪を未然に防ごうとしただめ高額の報酬をぶら下げた。
勿論、それでも盗みを働こうとする輩はいる訳だが、そこは事前に冒険者の素行をギルドで調査してある。
さて、装備を着ていると言うよりも着られていると言う感じの勇者少年少女達は冒険者達の前にまで来ると挨拶をする。
「今日は、私たちの訓練に付き合って下さり。本当にありがとうございます! 今日はよろしくお願いします!」
全員へが頭を下げた事で、多少驚く冒険者達、流石にそこまで丁寧なのだとは思いもしなかった様だ。
冒険者達は、勇者は貴族同様に傲慢な態度の者が多いと思っていたので拍子抜けする。
そしてすぐに気を取り直した冒険者の内の1人がお辞儀を返した。
「俺達の方も依頼をしてくれてありがたいと思っている。勇者様がたに会えるなんて光栄だしな! よろしく頼むぜ!」
「いえいえ、此方も勇者とは大層な名前ですが新人の冒険者と思って下さい。今日は色々学ばせていただきます!」
堅い握手を交わし、勇者も冒険者達も数人ずつに分かれ、作戦会議、ダンジョンでの立ち回り方などを教わっていた。
そして、パーティーが1つ余っていた。
「俺達を担当してくれる冒険者の人居ないのか?」
「流石にそれは無いと思うけど……」
整った顔立ちと騎士のような鎧をつけた少年が呟き、その隣にいたこれまた可愛らしい美少女が自信なさげに言う。
「だとしても遅すぎませんこと? これでは打ち合わせや連携など相談する時間がそれほどとれませんわよ?」
「桐ヶ崎の言うことも最もだね。だが向こうにも事情があるのかもしれない。もう少し待ってみよう」
お嬢様口調の美女が剥れっ面で文句をいい、それに男勝りな爽やかな美女が提案する。
提案に乗ることにした3人はもう少しだけ待つことにしていた。
──そこから数分。
「ぬぉぉぉ! 寝過ごした!」
猛ダッシュで四人の元へと走り込んできたのはランド、その顔は汗だくで恐らく宿から全力疾走したのだろう。
ズザザッ! と地面を削りながら四人の前に現れたランドは顔を見ること無く頭を下げた。
「遅刻して済まんかった! どうにも昨日の夕飯が美味くて!」
反省しているのかしてないのか良くわからない謝り方をされ、戸惑う四人だが、笑い会う。
「いえいえ、大丈夫です。顔を上げて下さい」
「お、許してくれるのか。ラッキーだ」
勢い良く顔を上げたランドは許してくれた少年に顔を向け、固まる。
その少年もランドの顔を見て固まった。
「あ、お久しぶりです」
「あー、あのときの」
「知り合いなの?」
「少しね、助けてもらったんだよ」
隣の美少女に笑顔を向け、ランドに向き直る。
「あのときはありが……ブヘッ!」
突然炸裂するアイアンクロー、犯人はランドだ。
「謝礼まだ貰ってねぇぞコラァァァァァァ!!!」
いつもはギルドの依頼書が貼られているボードの前で突っ立っているランドだが、今回はギルド2階にある会議室にいた。
そこにはランド1人だけではなく、様々な冒険者が集まっており、広い会議室も狭く感じられる。
人数が多いと言うよりは、一人一人の体つきが大きく、部屋が狭く感じられると言うものだ。
勿論、女性の冒険者もいる。
冒険者どうしで話し合い、和気藹々としている中で、ランドはポツンと誰とも喋らず座っていた。
と言うよりも、誰も話しかけてこないと言うのが正しいか。
皆が皆、ちらりとランドを見ては視線を反らす。
ランドもその視線に気がついているのかいないのか、端から見ればわからないが、ただ等の本人は何も考えていなかったりする。
「早く終わらねぇかな」
そんなことをランドが考えていると、2つあるドアのうち、1つが開かれイトヲカシが悠々と入ってくる。
「やぁ、良く集まってくれた。では、今回の依頼内容を再度説明する!」
会議室全体に響くほど、活気と覇気をみせながら、告げる。
すると会議室内にいた冒険者達の緩んだ空気も一瞬で真剣なものに変わる。
ランドは相変わらずどこを見ているのか、表情一つ変えていない。
「まず、今回の依頼はアタイがあんたらに個人的に話した勇者〈・・〉に着いてだ! この王都になんか知らんがいつの間にかいた勇者の訓練にアタイ等王都ギルドに丸投げ……ゴホンッ! 依頼が来た。よって、今回はダンジョンに勇者達の引率としてあんたらに頼んだわけだ。ここまでは良いね?」
周りにいる冒険者全員へ視線を送りながら続ける。
冒険者達は頷く。
「……カッコつけたは良いけど。ぶっちゃけ話は終わりなんだなこれが」
会議室にコケた冒険者達の振動と鎧の音が鳴り響き、下の階の受付嬢達はビックリして気絶した者が居たそうな。
「ゴホンッ! まぁ、あくまでも最終確認だと思っておいて欲しい。そして、護衛対象は勇者だ、それもダンジョン初心者と来たしそれは戦いにおいても同じ。当然油断すれば死ぬ……いいかい、この依頼絶対に失敗は許さないよ! 何があっても勇者を生かして帰しな!」
「「「おぉぉぉぉ!!!!!」」」
「そして何と報酬は1人大金貨5枚だぁぁぁぁぁ!」
「「「おぉぉぉぉ!!!!!」」」
ランドは戦慄する。
「大金貨1枚は嘘だったのかアイツ! 騙された!」
ショックを受けたランドだが、5倍の値段が払われるのならと考えを改めて頷いた。
「ただし、騙した罰としてもう2、3枚は掠めとる」
黒い笑みを浮かべるのだった。
◇◇◇
王都の門前、そこには20人近い人の集団が並んでいた。
当然、街の前に20人近く人がいればどんなに頭の悪い者でも不思議に思う。そのせいか、さらにその近くでは人がごった返していた。
そんなに人数が集まると言うことは、魔物のスタンピードでもあるのだろうかと心配する者もいるのだが、聞き耳の早いものは何故こんなに人が集まっているのか容易に想像できていた。
門前に集まっていたのは冒険者達だった。
それぞれが自分のスタイルにあった装備をして、その活気はいつになく高い。報酬が今までにないほど高額だったからだろう。その冒険者達は心なしか士気が高かった。
「大金貨5枚なんて暫くは遊んで暮らせるぜ!」
「ばっか、お前! その分失敗できねぇっての!」
「そうだぜ? いつもならはしゃいで良いとは思うが実際問題ミスったら俺らは絶対に死刑確実だぞ」
「た、確かに……悪かった」
高額の報酬に目が眩む者もいるらしいが、パーティーメンバーがしっかりしているのだろう、なんとか油断せずにすむことができそうだった。
「ゆ、勇者の護衛だってよ……緊張する」
「なーにビビってんのよ! むしろ腕の見せ所じゃない、それに……この依頼が終わったら結婚資金が増えるのよ!? 頑張らなくちゃ!」
「そ、そうだな! お前との未来のためにもやるぜ俺は!」
カップルの冒険者は望む未来へ向けてより一層集中をしている様だった。
他にもダンジョン内でどう行動するか、万が一の事が起きれば誰が殿を引き受けるかなど、ちゃんと依頼に真摯に重く受け止める優秀なパーティーもいた。
そんな中、ランドは他の冒険者を色々と見ていた。
「ほー、なかなか知らん奴がいっぱいいるな」
元々そこまで知り合いがいるわけではないランドだが、ギルドには顔を出すため、名前を知らないまでも、顔くらいは知っている者もいる。
それでも見た記憶のない冒険者パーティーが複数いた。恐らくは他所の街から依頼されたランクの高い者達だろう事は推測できた。
この場にいる殆どがCランク以上の冒険者で構成されており、中にはAランクの冒険者が混じっていた。
「おい、来たぞ!」
誰の声だろうか。
1人の冒険者が叫び、その方向には王族が使用するかなり豪華な馬車が数台並んでやってくる。
その馬車は冒険者達と少し離れた所で止まると、中から若い少年少女達が降りてくる。
「あれが……勇者か。まだ子供だぞ」
「もう少しで成人するかどうかじゃねえの?」
やって来た少年少女達はその殆どが黒髪の黒い瞳をしており、所々に派手な髪色の者もいるが冒険者達にもピンクのモヒカンなどが普通にいるため、特に気にしては居なかった。
ただし、向こうは少し驚いていた。
そしてそれぞれがかなり上質な装備をしており、きらびやかな鎧や光沢が輝くローブなど、その辺で気軽には手に入らない代物ばかりだった。
「すげぇ装備」
「あぁ、手ぇ出そうとするなよ? 奪ったとしても死刑は確実だぞ」
「バカか、そんな事よりも大金貨5枚の方が良いだろ」
実は勇者の装備が並大抵の者では無いことくらい分かっていたイトヲカシは、報酬を多目に用意し、略奪を未然に防ごうとしただめ高額の報酬をぶら下げた。
勿論、それでも盗みを働こうとする輩はいる訳だが、そこは事前に冒険者の素行をギルドで調査してある。
さて、装備を着ていると言うよりも着られていると言う感じの勇者少年少女達は冒険者達の前にまで来ると挨拶をする。
「今日は、私たちの訓練に付き合って下さり。本当にありがとうございます! 今日はよろしくお願いします!」
全員へが頭を下げた事で、多少驚く冒険者達、流石にそこまで丁寧なのだとは思いもしなかった様だ。
冒険者達は、勇者は貴族同様に傲慢な態度の者が多いと思っていたので拍子抜けする。
そしてすぐに気を取り直した冒険者の内の1人がお辞儀を返した。
「俺達の方も依頼をしてくれてありがたいと思っている。勇者様がたに会えるなんて光栄だしな! よろしく頼むぜ!」
「いえいえ、此方も勇者とは大層な名前ですが新人の冒険者と思って下さい。今日は色々学ばせていただきます!」
堅い握手を交わし、勇者も冒険者達も数人ずつに分かれ、作戦会議、ダンジョンでの立ち回り方などを教わっていた。
そして、パーティーが1つ余っていた。
「俺達を担当してくれる冒険者の人居ないのか?」
「流石にそれは無いと思うけど……」
整った顔立ちと騎士のような鎧をつけた少年が呟き、その隣にいたこれまた可愛らしい美少女が自信なさげに言う。
「だとしても遅すぎませんこと? これでは打ち合わせや連携など相談する時間がそれほどとれませんわよ?」
「桐ヶ崎の言うことも最もだね。だが向こうにも事情があるのかもしれない。もう少し待ってみよう」
お嬢様口調の美女が剥れっ面で文句をいい、それに男勝りな爽やかな美女が提案する。
提案に乗ることにした3人はもう少しだけ待つことにしていた。
──そこから数分。
「ぬぉぉぉ! 寝過ごした!」
猛ダッシュで四人の元へと走り込んできたのはランド、その顔は汗だくで恐らく宿から全力疾走したのだろう。
ズザザッ! と地面を削りながら四人の前に現れたランドは顔を見ること無く頭を下げた。
「遅刻して済まんかった! どうにも昨日の夕飯が美味くて!」
反省しているのかしてないのか良くわからない謝り方をされ、戸惑う四人だが、笑い会う。
「いえいえ、大丈夫です。顔を上げて下さい」
「お、許してくれるのか。ラッキーだ」
勢い良く顔を上げたランドは許してくれた少年に顔を向け、固まる。
その少年もランドの顔を見て固まった。
「あ、お久しぶりです」
「あー、あのときの」
「知り合いなの?」
「少しね、助けてもらったんだよ」
隣の美少女に笑顔を向け、ランドに向き直る。
「あのときはありが……ブヘッ!」
突然炸裂するアイアンクロー、犯人はランドだ。
「謝礼まだ貰ってねぇぞコラァァァァァァ!!!」
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