ひねくれマイロード

クガ

十七

 開始の合図と同時に、トートは大きく踏み込み、身体の関節を駆使して槍を繰り出す。
 心臓に対して放たれたひと突き。左手に握った棒(如意棒の様な外見)で軽く受け流し、上に添えていた右手も左手も逆向きに握り、横なぎ。
 もちろん一歩下がってトートは躱す。
 コウメイも一歩下がって距離を取り、呪術を使用。
 「渦巻く風たつまき
 コウメイの棒を中心として、風が激しく渦巻く。
 呪術は基本、使用する事象を詳しく説明し、術者と対象が理解。そしてその事象を術者が呪力を行使して引き起こそうとする。対象(事象となる物)はその説明通りに変化する。
 コウメイはその作業を一節で終わらせる。
 「な!速い!」
 コウメイの攻撃をまともに受けてしまえば、竜巻に巻き込まれてしまい、大きなダメージを受ける。
 当然竜巻を起こすという荒業を繰り出すことはそう何度もできず、維持も大変な為、せいぜい一撃が限度。
 そう判断してトートは魔法を使った。
 「マジックアロー!」
 矢の形の魔力の塊。五つ同時に放つ。
 操作は見受けられないが、初めて見る魔法に、コウメイの頭を不安がよぎる。
 結局竜巻を解除しないまま、棒を振るうことで、矢は叩き落とす事に成功したが、解除しなかったので空気抵抗は激しく、その分動きが鈍る。
 「つぁ!」
 5つ目を叩き落とすのと同時に、コウメイに槍が。
 


 「ちっ!」
 咄嗟に腰の剣を抜き、切り払う。
 棒は地面に刺し、片手で長剣を操る。神の肉体で出来たので、軽くしかし丈夫になっている。
 連撃を繰り出す。空気を切る音は一つに聞こえる程速く。
 コウメイのテンポが変わり、必死に応戦する事になったトートは、しかし速く重い連撃に、身動きが取れない。
 「光よ!」
 途端に強い光が放たれ、視界が遮られる。
 目を潰された。至近距離だからこそ意味のある、長物使いの奥の手。
 一気に形成が逆転する。コウメイはすぐに目を開けるが、そこには連撃が待っていた。
 受け流し、はじき、躱す。が、距離が遠くて反撃ができない。
 蛇腹剣ということを今、バレてしまうのは危険だ。槍で絡め取られてしまう。
 呪術はこの状況を打開できるようなものは無い。
 どうする事も出来ないまま、小さな傷が増えていく。
 だが、重い武器を扱い、よって動作もトートの方が必然大きくなる。このまま堪え続ければスタミナが無くなる。
 そう判断したのはコウメイだけでは無かった。
 
 『炎天翼イカロス


 トートの背中から、炎の翼が出てくる。身体能力が一気に上昇。
 「何っ!なんだそれは!?」
 コウメイは未知の技を見て驚く。
 「終わりだよ。」
 槍に、翼が纏わりつく。
 先の何倍も速く強く鋭い連撃が、コウメイの防御を突き破って刺さる。
 激しい出血と熱い炎に焼かれ、腹は貫かれた。が、それでも足りないと言わんばかりに武闘場の端の壁に凄まじい速度で激突する。
 動けないコウメイに追撃は加わらない。トートも大技を使って消耗している。が、圧倒的な優位に変わりはなく、ゆっくりと間合いに入るまで近づく。そこら辺に転がっていた拳大の石ころ投げつけ、様子を見るが、当然壁にめり込んで重症のコウメイに直撃。
 うめき声を上げながら、なんとかコウメイは壁から出て、ふらつく脚を踏ん張る。膝は笑い、口からは血が。目の光も薄まり、腕は力が入らない。
 「ま、じか…そんな技があるとはな…」
 気絶はしていないので、負けてはいないが、それでも意識は夢と現の間。
 心臓の音は何度も響いて、体中は熱い。血が巡る感覚。
 それでも思考はたった一つの事に向いていた。
 (…武器が……ない?) 

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