ひねくれマイロード

クガ

十六

 二時間が経ち、武闘場にも、新学期初の決闘で、しかも新入生の中のSクラス同士という事で、人がドンドンと集まっていた。
 ゲント、ラミとマオ達はツバキによって合流。ツクヨミのみ少し席を外しているが、互いに紹介は終わっている。
 「うーん、どっちが勝つかなぁ。」
 マオがボソッと呟く。
 「「もちろん、コウメイ様です。」」
 リアとシャロが、確信を持って発言。その眼には羨望と憧れが宿っており、一切の不安は無い。
 「ですが、コウメイ様はそこまで強いのですか?殊、呪術や風水術に関しては、ずば抜けております。しかし、接近戦に持ち込まれたりするのなら、勝ち目は薄くなるのでは?」
 オキタが問う。口調はマオやゲントが居るので敬語になっているが、その言葉は自身の意見をはっきりと伝える事に成功する。
 その意見を一刀両断にしたのはゲント…ではなくツバキ。
 「いや、懐まで接近を許すはずが無い。駆け引きの強さは尋常で無い…と思う。」
 少し不安そうに答えたのを、
 「う〜ん、大丈夫だと思うぜ。」
 「そうなの?」
 ゲントがフォローする。
 試合が、始まろうとしていた。




 「来たか、ツクヨミ。早かったな。」
 「早いに越したことはないじゃろ?」
 「そうだな。…初めてだが、緊張は不思議と無くてな。そっちはどうだ?」
 「ふむ、妾もじゃ。」
 「そうか…」
 「では、始めるとするかの。いくぞ。」
 

『祇園総社の鐘の声、諸行無常の響き有りて、しかし我らには響かず。
 沙羅双樹の花の色は抜け落ちたりて、我が主よ聞こし召され。』
『花は爛漫として、時の中に咲き誇る。
 考慮無しのその花は色たる色を物す。』
 派手な光や音はない。ただ、ツクヨミの色が抜け落ちて、桜の花びらとなってコウメイに取り込まれていく。
 そしてツクヨミの身体は、蜃気楼のように揺れて、ひとつの武器となる。
 その武器は近場にあった鞭を取り込み、そして銀に光る、4メートルに及ぶ鎖のある蛇腹剣となった。
 更に、コウメイに取り込まれていた色は左手に集まり、そして2メートルの棒となる。
 柄をとって、蛇腹剣を通常の長剣の状態に戻す。
 「よし。成功だな。」
 『うむ、後は実践あるのみじゃ。優しく扱うんじゃぞ?』
 「さぁ?保証はできないな。」
 『え?!』
 



 「さぁ、今学期初の決闘は、新入生Sクラスの戦いだぁ〜!今回戦うのはコウメイとトート!
 勝敗条件はどちらが気絶!勝った側は負けた側に対してなにか一つ、言いなりに出来るという破格の決闘だ!」
 生徒会なのだろうか、何処からか司会の声が聴こえてくる。
 この決闘の条件は先程決めた為単純明快。
 「勝つからな?」
 「ボクは負けない、何故なら強いからね!君に勝ってボクがこの学年で1番だと、証明して見せる!」
 『ふむ、いかにも負けそうなセリフじゃな。』
 「それでは開始!」 
 

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