銀河大戦〜やる気なしの主人公が無双します〜
2人の休日
第13話 2人の休日
シュトルフとシュナイダーは、司令長官から直属に3日間の休暇を出された。
司令部から出た2人は街へワインとチーズを求めに店に行った。そこで最高の2つを得た彼らは、シュトルフの屋敷へと帰宅する。
彼の屋敷は、爵位持ちらしく一般市民とは桁外れの大きさを構えている。
シュトルフの爵位は子爵。シュナイダーは、その従者兼執事を兼ねている。
屋敷の門へと車を停めると、そこにはすでに屋敷中の使用人とベシュタター家当主である彼の父ガレフが出迎えた。
ガレフは数々の功績を立て、伯爵位と新しい屋敷を皇帝陛下より賜り、元来持っていた屋敷と爵位をシュトルフに譲っている。
軍務のため、長く家を離れていたシュトルフは屋敷に対して非常に懐かしく思った。
「父上、ただ今戻りました」
「おぉ!我が息子よ、よくぞ無事に帰って来てくれた!」
ガレフは感情が高ぶったあまり、帰ってきたばかりの息子を抱擁する。
「父上、皆が見ています…」
「あぁ…すまん。あまりの嬉しさゆえ」
「いえ、わざわざ父上自ら迎えてくれたことを感謝します」
「そう固くなるな。息子の帰りを喜ばぬ親はおらんよ」
ガレフは大の親バカだった。これでも軍参謀本部に勤める中将である。そこにその面影は全くなかった。
「シュナイダー、よくぞ息子を無事に連れ帰ってくれた。感謝する。」
「光栄の至りにございます」
「父上、そろそろ中へ入りましょう。使用人達が可哀想です」
「おぉそうだった。そうだった。ささ、息子、シュナイダーよ、すでにディナーの用意は出来ている。中へ入ろう」
「さすがはガレフ様、用意がお早いですね」
「何せ息子の帰還だからな。豪華にやらねばガッハッハッ」
早く休みたいというシュトルフの思いとは真逆の方向へ進んでいく。
シュトルフとシュナイダーが解放されたのは、3時間も経った後だった。2人ともヘトヘトである。
「シュナイダーすまん。父上があのような感じで」
「シュトルフ様が謝られることはありません。私は楽しかったですよ」
「そう言ってくれるだけでありがたい」
ガレフが張り切って作らせた料理が山のようにあった為、2人のお腹には街で買ってきたワインとチーズが入る余地がなかった。
「しかし、このワインとチーズは如何致しましょうか」
「そうだな…明日にでもやろうか。今度こそ2人で」
「かしこまりました。…フフッ」
「何がおかしいんだ?」
「いえ、シュトルフ様と2人でお酒を呑むのは久しぶりな気がしましたので…つい」
「そんなことか。そういえば、ここ最近は無かったな。明日は楽しもう!」
「はい!それでは夜も遅いですし、私はこれで」
「そうだな。では明日、おやすみ」
「お休みなさいませシュトルフ様」
夜も遅くなった為、2人は各々の部屋で休むことにした。
2人は、任務で溜まった疲れがドッと出てきており、シュトルフの父ガレフに付き合うのも、正直キツかったのは内緒である。
夜が明け、日が昇る。
朝、小鳥のさえずりが聞こえてシュトルフは目を覚ます。
「ふぁ〜あ…朝か。っん…だいぶ疲れも取れたな」
その時、扉をノックする音が聞こえた。
…コンコン
「シュトルフ様、朝でございます。起きていらっしゃいますか?朝食のご用意が出来ております」
「起きてるよ。わかった、すぐいく」
シュトルフは、シュナイダーの奴はしっかりと寝ているのかと、いつも思う。どんなに遅く寝ても、しっかり朝起こしに来てくれる。一体どんな身体をしているのか不思議でならなかった。
寝室からリビングへ降りて来たシュトルフは、朝食を準備をしているシュナイダーを目にする。
それに気がついたシュナイダーは口を開く。
「おはようございます。シュトルフ様」
「おはようシュナイダー。ゆっくり休めたか?」
「おかげさまで絶好調でございます」
「そうか。それはよかった」
「シュトルフ様は如何でございますか?どこか悪いところございませんか?」
「いや、私も絶好調だよ」
「さぁ、シュトルフ様。ご飯が冷めてしまいます。まずは朝食を」
「そうだな。では頂こう」
シュナイダーは、昨日の料理が脂っこいものだった事を考慮して、あっさり目の朝食を用意していた。些細な気配りができるのも、シュトルフの世話をする従者としての手腕である。
「ご馳走さま。シュナイダー、今日はあっさりした朝食だったな。昨日の晩餐を思い出してのことか?」
「さすがはシュトルフ様。ご孝明でございます」
「いや、褒められるべきはお前だ。さすがシュナイダーだ」
「光栄でございます」
シュトルフもシュナイダーの気遣いには気がついた。かれこれ20年の付き合いは伊達ではない。
「シュナイダー、今日の午前中の予定は?」
「はい。えぇ……ございません」
「……。」
「如何致しますか?」
突然、休暇を与えられた2人は、勿論ノープランだった。何をするか思いつかないシュトルフは、シュナイダーに助けを求めた。
「…シュナイダーは何かやりたい事はないか?」
「シュトルフ様がおやり遊ばせるものでございましたら、何でも歓迎いでございます」
「そういうのを聞きたいのではない。何かやりたい事はないのか?」
「それでしたら…ご一緒に鹿狩りは如何でございましょう」
「鹿狩りか…。うん、良いな!やろう」
「かしこまりました。それでは準備を致しましょう」
シュナイダーの提案で、鹿狩りに行くことにしたシュトルフは、狩り用の衣装を見にまとった。
シュトルフの屋敷の裏手には、木が生い茂った林があり、そこには様々な動植物が生息していた。そこに勿論の如く鹿がいる。
2人はそれぞれ馬に跨り、狩猟用のライフルを手にしている。
この狩猟用ライフルは、実弾を使用せず高圧力のレーザーで獲物を仕留める作りになっていた。その為、多くの実包を持つ必要がなく、身軽に動き回れるようライフル自体も軽量化されている。
シュナイダーが早速獲物を見つけた。
「シュトルフ様、2時方向、距離150、雄鹿一頭発見しました」
「わかった」
シュトルフはライフルのスコープを覗き込む。このレーザーライフルは実包を使用しない為、風向きや風力、慣性を計算する事なくスコープの照準を獲物に合わせ、引き金を引くだけで仕留めることができる。
獲物がそれに気がついたとしても、発射されるレーザーへ光の速さで来る為、逃げる事はまず不可能である。
…チュン
レーザーの発射される音が僅かに聞こえる。
発射されたレーザーは、雄鹿の脳を焼き切る。もちろん即死だ。
双眼鏡で獲物を確認していたシュナイダーが結果を伝える。
「お見事でございますシュトルフ様。しっかりと命中しております」
「やったか。これでワインのつまみが増えたな!」
シュトルフは、シュナイダーを見て笑みを浮かべる。
「さすがはシュトルフ様、お父上同様抜かりがありませんね」
「それは褒めてるのか?」
「勿論でございます」
2人は狩った獲物を前にして笑いあった。
シュナイダーは、シュトルフの狩った雄鹿の血抜きに取り掛かる。血抜きせずに持っていくと、血の臭みが肉や脂肪に移り、味を損なってしまう。そうなれば、せっかく街で買ったワインが台無しだ。
慣れた手つきで、素早く血抜きと内臓を取るシュナイダーを見ていたシュトルフは、私もシュナイダーの様に器用にできるようになりたいと思うのだった。
全ての作業を終えたシュナイダーとシュトルフは、雄鹿を馬に乗せ屋敷へと戻った。
雄鹿を使用人に渡し、後の処理を任せる。
使用人が雄鹿の処理をしている間に、シュトルフは風呂へと向かった。
コメント