銀河大戦〜やる気なしの主人公が無双します〜

グルクン

衝突III


         第8話 衝突III


 亡旗艦ワリャーグの航空隊による破壊攻撃により、レーダーと機動力を失った敵工作船は、宙に浮かぶただの標的でしかなかった。

 そこへ特型駆逐艦ヨークの対艦ミサイルが迫ってきている。


 それでも、敵は諦めていなかった。少しでも連邦に損害を出させる為に、悪あがきをしようとしていた。


帝国特殊作戦軍偽装輸送船団 工作船作戦実行部隊
「ありったけのエネルギーを兵器へ突っ込め!帝国のため一矢報いるぞ」

「はっ!…エネルギー充電急げ!敵を消し去るぞ」

「エネルギー充填70%。完了まで3分!」

「これが最後の攻撃となる。皆、心してかかれ!帝国のために!!」


「「「帝国のために!!!」」」



特型駆逐艦ヨーク 艦橋内
「敵さんの行動が何やら慌ただしいね。この機になって何をするのかな?」

「クロイツ少尉、敵工作船のエネルギーが例の兵器へ集まっています!」

「あぁ〜そういうことね。航空隊へ連絡、敵兵器の射線へ近寄るな」

「了解しました!」

「さぁ〜て、敵さんはどう動くのかな?」

 追い詰められている敵を目にしながら、クロイツは通信員へと指示を出す。

「通信員、航空隊へ追加連絡。後方にいると思われる、敵工作船団を包囲させてくれ」

「はっ!追加連絡了解しました」


 そこへイヴァンが横槍を入れた。

「クロイツ、何故、敵を生け捕りにするんだ?全員消せばいいじゃないか!これだけの死人が出ているんだぞ」

「…イヴァン。それもそうだが、情報が欲しいんだ。何故こんな事をしたのか。誰の指示であるか等ね」

 幾多もの命が消えていく様を見ていたイヴァンは、冷静さを失いかけていたが、クロイツの言葉で我を取り戻した。

「…そうか。いや、悪かった。冷静さを失っていた」

「しっかりしてくれよ。砲雷長として、親友として君を信頼しているんだから」


 対工作船作戦も終盤に差し掛かった。敵は尚も攻撃姿勢を崩さない。


旗艦ワリャーグ所属 航空隊

「ツヴァイ隊長。ヨークより連絡、敵工作船より離れ、後方にいると思われる敵工作船団を包囲せよとのことです」

「わかった。これより散開して敵工作船団を包囲する。各機我に続け!」

「「「了解!」」」


「おぉ〜いトマスぅ〜、さっきの通信聞こえたか?」

「そりゃ聞こえてるよ。聞こえてない方がおかしいって…」

「おぉ!それなら話は早い。競争するぞ!!」

「はぁ?ガキかお前」

「誰がガキじゃ!とりあえず競争な!負けた方が100年物のウイスキーって事で!よーいスタート!」

「ちょ、それはずりーぞ!」

 戦場である事を忘れたかのように勝負をしだすツヴァイとトマス…


それを見ていた部下たちは

「隊長たち余裕だな…一応、戦場なんスけど…」

「まぁ、あれぐらい余裕を持てって言う事だろうな。俺たちも隊長たちに遅れないように行くぞ!」

「「「おぉー!!」」」


 ツヴァイ&トマスと両名の部下との間に、思いがけない勘違いが生まれてしまっていた。

 ここには、その勘違いを指摘する者は居なかった…



その頃、敵工作船団は…

「シュトルフ大佐!敵航空隊が本船団へ向かって迫ってきています!」

「わかった。全ての船に連絡しろ。出せる全速力で当宙域より脱出する。遅いやつらは捨てて行く」

「了解しました!」

「よろしいのですか閣下。遅い奴等に対して自害せよとご命令なさらずに」

「構わんさ。言わずともやってくれると思うからね」

「そうですか…」

「心配するなシュナイダー。帝国の教育は完璧だ」

「…だが、万が一に備えて各船に極秘裏に設置してある爆弾を起爆させれるようにしておけ」

「御意に」


 出せうる全速力で航空隊から逃げる敵工作船団は、一隻また一隻と離脱していった。その度に船が勝手に吹き飛ぶ。それを見ていた他の工作船ならびに航空隊各機は恐怖に慄いた。

「ツ…ツヴァイ隊長。敵工作船が勝手に吹き飛んでいきます。これで2隻目ですよ。敵は何を考えているのでしょうか…」

「んなもん見りゃわかるわ。まぁ、あれだろ。捕虜の辱めを受けるよりは自ら死を捧げる的な感じじゃね?」

「こんな馬鹿なことが許されるのですか。自分にはとても…」

「そんな事気にするな!今は任務を全うするのみだろ!連邦軍人としての意地をみせろ」

「了解です。隊長」

「あっそうだ。一応、今起きている事をヨークに連絡しておいてくれ」

「はっ!」


 ツヴァイから指示を出されたパイロットは、急いでヨーク艦橋へ通信を繋げた。


「こちら航空隊。ヨークに連絡。敵工作船団、足の遅い船から順に自爆しております。対応指示をお願いします」

「こちらヨーク。了解した。しばし待て…」

「了解。」

 30秒ほど待ってようやく通信が再開した。

「こちらヨーク副官のクロイツ少尉です。これより指示を出します。今から言う通りに動いてください。まず、敵の背後から追うのを中止、各機散開したのちに前方及び側面から奇襲を仕掛けてください。この時、敵工作船団のレーダーの外から行うことに留意してください。本艦は後方より敵工作船団を牽制します」

「航空隊、了解しました。貴艦の御武運をお祈りします」

「そちらこそ。では、お願いします」


 クロイツからの指示を受けたパイロットは、隊長のツヴァイへとそれを伝える。

「ツヴァイ隊長、ヨークより作戦変更を受けました。データ送ります」

「おう!…そうか。よしわかった!これより散開して敵の前方、側面より敵工作船団を包囲する。後方はヨークが受け持つ。俺たちの部隊は敵工作船団の前方を抑える。側面はトマス隊、よろしく頼む。各機、作戦開始!」

 作戦変更データの詳細を見たツヴァイは、航空隊全機へ指示を出した。それにより、各機は各々のポイントへ向けて散開して向かった。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品