銀河大戦〜やる気なしの主人公が無双します〜

グルクン

捕縛


         第9話 捕縛


 敵工作船団を追跡し、作戦のため上下左右に展開した航空隊両部隊は敵レーダーの探知外へ出ることを急いだ。

 主な戦場が宇宙空間へと移ったこの時代、人類誕生の地〈地球〉で行われていた2.5次元の戦いは去り、完全なる3次元での戦いになっていた。その為、多種多様な戦術が取られるようになった。

 この敵工作船団捕縛作戦も、立体機動による航空隊の働きが大きく期待されていた。

 敵工作船団の包囲を命じたクロイツの居る特型駆逐艦ヨークは、敵実行部隊が自らの兵器の暴走で消えてゆく様を見ているしかなかった。

「あのエネルギーの流れが自滅への道しるべになるなんてな…」

「まぁ、敵さんも最後の悪あがきとして、本艦諸共消えさろうとしてたんじゃないかな?でもその前にミサイル向かってるしね〜。無駄なあがきよ」

「クロイツ、お前腹黒いな」

「いや、イヴァン。君ほどじゃないよ。まさかミサイル全機撃ち込むとは思わなかったし…」

「えっ?そーゆう意味で命令したんじゃないの?」

「……」

「マジかー!ならちゃんと言えよ!!」

「おいおい私のせいにするなよ?あれは砲雷長殿の判断に任せたんだから」

「この時ばかりに役職をアピールするな…」

「何はともあれ厄介な兵器を潰せたんだから良しとしよう。さて、これから航空隊の援護に行くとするか」


 クロイツは艦橋から機関部へ無線を使い、エンジンの調子を聞いた。

「機関部、これから全速力出せるかい?」

「おう!いつでも出せるぜ若いの!」

「ハハ…ありがとう。なら第1戦速で飛ばしていこう!」

「あいよ!野郎ども、しっかり働けよ。」



 その頃、敵工作船団を追いかけている航空隊は作戦を忠実に成し遂げようとしていた。

「そろそろレーダー探知の範囲外になるかな…」

「ツヴァイ隊長、全機探知範囲外に出ました」

「よし、そのまま敵の動きを封じ込めるぞ。全機反転!敵を驚かしてやれ」

 航空隊の追跡に対して、出せうる全速力で逃走を続ける工作船団は、今の状況のある異変を知る。


帝国軍特殊作戦軍属偽装輸送船団 艦橋内

「シュトルフ閣下、敵機がレーダーより消えました。何やら不穏な感じがします」

「そうだな。このまま逃げ果せる気配は全くない。随伴船を囮にしてでも逃げなくては。この船には我が帝国の機密情報が多くなってるからな」

「その通りでございます。つきましては、例の装置をお使いになられますか?」

「うむ。そうしようか。使わぬ宝は無いも同然だからな。敵に包囲された時が好機だ。すぐに使用できるよう用意しておけ」

「御意」



 航空隊はレーダー探知範囲外に散開して、敵工作船団を包囲する為に全機タイミングを見計らいつつ近づいていった。敵工作船団の後方からは、実行部隊を片付けた特型駆逐艦ヨークが全速力で迫っていた。


「ツヴァイ隊長、敵工作船団後方より友軍特型駆逐艦ヨーク接近中。ヨークより行動開始の合図が出ています」

「わかった。全機、行動開始!敵の動きを封じ込めろ」

「「「了解!」」」

「トマス、そっちは数が少ない分、ヘマをするなよ」

「任せとけって。お前じゃ無いんだ、完璧にこなすよ」

「何を!お前、この作戦が終わったら覚えておけよ!!」

「集中、集中。真面目にやれ」

「クソっ…こんな時に優等生ぶりやがって畜生!」



特型駆逐艦ヨーク 艦橋内

 敵影を捉える為、集中してレーダー画面を覗き込んでいた観測員から報告が上がった。

「前方に敵工作船団を捉えました。航空隊に合図送ります」

「頼む。これより敵工作船団の捕縛を開始する。砲雷長ら主砲発射準備しておいてくれ。機関部は速度を落として」

「了解!クロイツ」

「わかった若いの」

 各所へ指示を出したクロイツは独り言のように艦橋内で呟いた。

「さぁ大人しく捕まってくれよ。さっきみたいに無駄な抵抗はやめてほしいね。」

 そこへ後ろから急に声をかけられ、ビクッとなった。

「クロイツ。よくやってるな。新任の士官では…いや軍人として上々の艦の動かし方だ。本当に新任とは思えんよ」

「っ!これは艦長。お褒めに預かり光栄です。艦長、そろそろ指揮を取られますか?」

「いや、最後までお前がやれ。これはお前が考えた作戦だ。こんな作戦、お前しか運用出来んよ」

「では、引き続き私が取らせていただきます。艦長はごゆっくり観覧していてください」

「ハハハそうさせてもらおう。終始しっかりやるんだぞ」

「はっ!」


 航空隊は予定通り、敵工作船団の正面と側面に張り付いた。絶対に逃がすまいとする構えであった。

 それに対して敵工作船団の司令船だけは動きが違った。何やら不穏な動きがある。



帝国軍特殊作戦軍属偽装輸送船団

「後方より敵駆逐艦接近!我々の逃げ道を塞がれました」

「正面、側面は敵航空隊、後方は連邦駆逐艦と…側から見たら詰んでる状況だが我々は違う。そうだろシュナイダー?」

「はっ。例の装置はいつでも稼働可能です閣下」

「そろしい。それでは第2幕といこうか。帝国の凄さを思い知るがいい」


 航空隊及び特型駆逐艦ヨークは敵工作船の一隻より発せられた光によって目を眩まされた。レーダー画面すら見れない状況では敵の動きを把握することすらままならない。この戦いでは帝国の方が一歩上手だったというわけである。


 しかし、逃げたのは一隻。逃亡していた残りの2隻は無事に拿捕することができた。これにて当事件は終わったかのように思ったが…

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