銀河大戦〜やる気なしの主人公が無双します〜
定期演習
第2話 定期演習I
「マティス総司令、各艦予定位置に着き演習用意整いました。いつでも開始可能とのことです」
「ご苦労。これより定期演習〈ワルム・ジャーク〉を開始する。各艦に連絡せよ」
「待ちたまえマティス君。始める前に私から全艦艇の乗組員に激励を贈ろうではないか」
「ネリ軍部大臣閣下。かしこまりました。それでは各艦にモニターで映す手配を致します。しばしお待ちを」
「通信員、艦橋の様子を演習参加全艦艇に送信せよ」
「はっ!それでは回線繋げます」
「私、マティス総司令より各艦艇に告げる。これよりネリ軍部大臣閣下より、激励のお言葉を賜る。各員、心して静聴するように!総員、敬礼!それでは、閣下宜しくお願い致します」
「連邦領辺境星系防衛艦隊の乗組員諸君!私はネリ軍部大臣である。諸君らは日頃から厳しい訓練に励み、帝国の魔の手から我が連邦をそして、そこに住む市民を守っている君たちのことを私は誇りに思う。この平和は、君たちの血と汗と涙と賜物であると、私は思う。此度の演習は過去最大規模になる。これからも我が連邦の為、一所懸命励むことを期待している」
「閣下、ありがとうございます。総員、演習を開始せよ!」
「閣下、ありがとうございます。僭越ながら各乗組員を代表して、改めて御礼申し上げます。これより演習を開始いたしますので、何卒ごゆっくりご観覧くださいませ」
これより、総勢2万の大小様々な艦艇が陣形を組み、敵国である帝国との戦闘を想定した演習が始まった。
陣形は艦隊旗艦ワリャーグを後方に置いた魚鱗の陣である。主賓である軍部大臣が、全体を見ることができるようにとの配慮から、この陣形が採用された。
陣形の様子を上から見ると、小型艦艇を頂点に、順に中型艦、大型艦と三角形を模した形となり、後方に大臣のいる旗艦ワリャーグが鎮座し、その後方、後詰の位置に中型艦の護衛をつけている。
ただし、宇宙空間での戦いは平面ではなく立体的なものとなる為、厚みのある形になってしまうことは、ご留意いただきたい。
クロイツが乗艦している特型駆逐艦ヨークは、先端部分に配置されていた。
「いやぁ〜まさかこんな前に置かれるとはね〜」
「クロイツ少尉、無駄口を叩くな。既に演習は始まっている。無駄口を叩く暇があるなら、しっかり働け!」
「働けったって、機関部員や通信員のように、機械に縛られてるわけじゃないんですから、やることないですよ。艦長」
「馬鹿者!貴様は艦の副官として着任してあるのであろう。副官は艦長を補佐する他に、各乗組員をまとめ上げ、各々がしっかりと職務を遂行しているか把握するのも仕事だろうが!」
(あちゃ〜艦長の堪忍袋の尾が切れたみたいだ…)
「か、艦長。それは重々承知しています。しかし、見るからに皆一所懸命に励んでいるものですから、大丈夫かと…。それに艦長、演習が始まってますので、お叱りはこの演習が終わった後にお願いします」
「うぐぐっ」
(よし!これで今は乗り越えたな。さてと、演習終わりの説教をどう回避するか考えないとな…)
突然、艦橋に通信室から連絡が入った。
「通信室より艦橋。前方より輸送船団が接近しています。如何いたしましょう」
「ご苦労。輸送船団に向けて警告文を打て」
「はっ!了解しました」
通信員は急ぎ、輸送船団は対して計画文を打電する。
特型駆逐艦ヨーク通信室
「こちらは連邦辺境星系防衛艦隊、特型駆逐艦ヨークである。当宙域は演習の為、10光秒の範囲内を航行制限宙域に指定している。速やかに退去されたし。繰り返す、速やかに退去されたし」
「……」
「艦長、船団より応答ありません」
「もう一度通信を試みよ。次は警告文に〈返信なければ警告射撃を実施する〉の旨を入れておけ」
「こちらは連邦辺境星系防衛艦隊、特型駆逐艦ヨークである。当宙域は演習の為、10光秒の範囲内を航行制限宙域に指定している。速やかに退去されたし。応答なくば警告射撃を実施する」
「……」
「…ザ…ザザ…あーあーゴホン!おっと、これは失礼した。何ぶんオンボロ船ゆえ、計器に異常があったようだ。貴艦の警告通り、速やかにこの宙域より退去しよう。さすがにこんな所で宇宙の藻屑にはなりたくないからね」
「艦長、輸送船団より応答あり。計器異常の為、迷い込んだとの由。輸送船団、当宙域より離れて行きます。艦隊司令部には連絡致しますか?」
「計器異常か。それならば仕方がないな。艦隊司令部には連絡不要。もし司令部より確認が来たならば ”民間輸送船団につき警戒不要” と伝えておけ。それと、輸送船団に”無事目的地に着くよう祈っている”と伝えるように」
「はっ!了解しました」
「通信室!危ない忘れるところだった。ついでに、周囲の艦艇に “警戒無用、演習に集中されたし” と伝えよ」
「はっ!」
自艦を含め、周囲の艦艇から緊張が解けた。たかが輸送船団だったのかと。しかも計器異常で迷い込んだと。本当についてない奴等だと笑った。しかし、それを見ていたクロイツだけは不審に思った。
(領域内において、当宙域の演習実施ならびに航行規制情報は政府報道によって周知のしていたはず。それなのに、偶然にも当宙域に流れ着くとは出来すぎている…)
「まさか…帝国の偽装船団…っなわけないか」
そんな、つまらない妄想をしているクロイツの頭にゲンコツが落ちたのはそう間も無くだった。
「っ!か…艦長、さすがに暴力はいけませんよ。イテテ…たんこぶできちゃったよ…」
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
1978
-
-
238
-
-
1512
-
-
157
-
-
3
-
-
11128
-
-
0
-
-
93
-
-
4
コメント