いずれ地に咲く

作者 ピヨピヨ

番外編 いずれ大人になる少女に

カルミアと木霊ちゃんの話
本編が終わって一年くらい経った時系列
カルミアは大体16ぐらいです。

木霊ちゃん視点、木霊ちゃんは神様の使いなので実は何百年も前から存在しています。カロンより年長です。
カルミアのことが大好き。




「木霊ちゃーーーーん!!ご飯だよーーー!!」

カルミアの呼ぶ声が聞こえた。
同じときにいい匂いも…今日はなんのごはん?

「あ!木霊ちゃん、今日も早かったね。はい、これ朝ごはん。」

木から飛び降りて、カルミアの前に出てくると、カルミアはお皿をぼくの前に置いた。
ここはカロンの家、ちょうど窓の縁がぼくのごはんの場所。

ウキウキしながら、お皿を覗き込む…
野苺のジャムが塗られた干しパンと目玉焼きだった。
おにく…はない。
けど、野苺は大好き。嬉しい。おいしい!

「オイシイ!カルミア、オイシイ!」
「ふふん、そうでしょそうでしょ。私頑張ったんだ!これならお店出せるでしょ。」

誇らしげに胸を張るカルミアの頭に、傍から伸びた手がゲンコツを喰らわす。
ゴッと鈍い音がした。

「うわぁぁん!?、痛い!!今の絶対本気だったよねぇ!?」
「うるさい、何がお店出せるだ。大体まともに料理したの一品だけだろうが、しかも微妙に焦げてるし。」
「いいじゃん!食べれるようになっただけマシでしょ?私、カロンみたいにできないよぉ!!」
「うるさい。」

不機嫌な顔をしたカロンが、頭を抑えて騒ぐカルミアをめんどくさそうに眺める。
カロンはいつも不機嫌そうだ、ぼく…アイツ、キライ。

「お前もなんでいるんだ。」

カロンがさらに嫌そうに、ぼくを睨む。

「なんでだって、一緒に冒険した間柄じゃん。」
「俺、こいつ嫌いなんだが、今すぐ追い出したいぐらいに。」
「ダメ!こんなに可愛い子を追い出すなんて…!!人のすることじゃないよ!、鬼だよ!」
「人ではない………それに鬼でもない。」

尚、言い争いを続けていたカルミアとカロンだったけど、やがて「いーっだ!」とカルミアが怒りながら言い捨てると、大きな音を立てて扉を開け部屋から出て行ってしまった。
カロンは後を追うでもなく、呆れたようにため息をつく。
そうして、カルミアが出て行った扉をじっと見つめる。

「………。」

ぼくは知っている、カロンはカルミアのことがすご〜く好きだ。
だからぼくはカロンがだいきらい。
だっていつもカルミア独り占めするから。

「何見てるんだ?木霊。」
「カルミア……スキ。」
「あぁ?なんだいきなり…」
「カロン、カルミア、好き!!」
「………………はぁっ!???」

カロンは一拍遅れて、大きな声を上げる。
その顔はまるで隠し事を暴かれた子供のようだった。
ぼくはさらに大きな声で、カルミアにも聞こえるように叫ぼうとした。
しかし途端大きな手がぼくを掴み上げる。

「お前…それ誰にも言ってないだろうな?」

低く唸るように聞いてきたカロンに、ぼくは「イッテナイヨ?」と答える。するとしばらくじっと険しい顔でぼくを睨んだ後、

「本当だな?本当に言ってないんだな、誰にも?」
「イッテナイヨ、イッテナイ!」
「ならいい、さっさと食って帰れ。」

ようやく手を離したカロンから離れて、ぼくは素早くごはんを食べた。
その間もカロンは、じぃ〜っとぼくのことを睨んでいたけど、ぼくがさっさと窓の縁から降りたら、やがてどこかに行った。

カロンがいなくなったスキにぼくは部屋に入り込む。

言わないわけがない。





「あれ、木霊ちゃん?なんでここにいるの?いつもはご飯食べたら帰っちゃうのに。」
「カルミア!カルミア!アソビ!」
「遊びたいの?もう仕方ないなぁ〜」

カルミアにぎゅーっと抱っこされる。
やっぱり女の子は良い、柔らかいし、あたたかいし、おにくも絶品。
良い匂いもする。

「カルミア、カルミア、あのね、アノネ。」
「ん〜何?何か話があるの?」
「あのね、カロンはカルミア、ス。」

そこまで言ったところで後ろの扉が素早く開く音がした。
そして次の瞬間、何かに頭をがっしり掴まれ、ぼくの世界はグルグル回ったかと思うと、気がついたときには、開いていた窓から飛び出て、思い切り空を飛んでいた。

「ちょっ!?カロン??なんで木霊ちゃん投げ飛ばしたのーー??!!」
「ああクソッ!やっぱりアイツ嫌いだ!!」
「ええぇ!?」




もう一度戻ってきた。ぼくの力があればあっという間だ。
リビングの様子を見るとカルミアが人間の街に買い物をしに行く準備をしている。
そうだ!カゴの中に入っちゃえば良いんだ!
ぼくはこっそりカゴの中に入り込むと、上に布をかぶせて身を隠した。

「じゃあ行こうかなぁ〜、ねぇねぇお小遣いちょーだい!」
「無駄遣いするなよ、つまみ食いももうしてくるな。」
「しないってば!あの時はちょーっと魔が刺しただけ…」
「どうだか……カゴ忘れるなよ。」

はーいってカルミアが元気よく返事をした。よし、これでカルミアと二人きり!
と思ってぼくはしばらくじっと身を潜めたあと、布が取られるのをずっと待った。
するとスルッと布はすぐ取られる。

目の前のカルミアにぼくはニコニコしながら顔を上げる。

すると目の前にいたのは、大変不機嫌な顔をしたカロンだった。

「え………?」
「嫌な予感がして見てみれば…やはりここにいたか。」
「カルミア…?ナンデ……カロン??」
「カルミアには別のカゴを渡した、それにしてもお前……覚悟はできてるだろうな?」

むんずっと頭を鷲掴みにされ、カロンに笑顔で言われる。
ぼくはもう一度空を飛ぶことになった。




もう一度来た。
次はうまく行くはず、だって次はカロンが家から出る用事があるから。
最近、カロンは仕事以外でも外出する、本当ならぼくは監視役だからついていかなくちゃダメだけど、今日は別にいいや。

「いつも誰に会いに行ってるの?友達?」
「友達…とは違うが近いようなやつに会いに行ってる。今日は帰りが遅くなるかもしれないから夕飯は先に食べてくれ。」
「はーい。」

カロンはカルミアを留守番にして、出かける。
ちゃんと、今度こそ、遠くに行ったのを見て部屋の中に飛び込む。するとカルミアがキッチンで何やらゴソゴソ漁っている音がした。

「カルミア?」
「わっ!…ってなんだ木霊ちゃんかぁ、カロンだったらどうしようって思った。」
「何?ナニ?シテルノ?」

カルミアは驚いたあと、小さな小瓶を持ってテーブルについた。
小瓶の中には白い粉がいっぱい。カルミアはそれを指で摘んでパクッと食べた。

「うん!、あま〜〜ぁ」
「カルミア、カルミア、ナニ?ナニ食べたノ??」
「お砂糖だよ〜甘くて美味しいんだ。木霊ちゃんも舐めてみる?カロンには内緒だよ。」

カルミアが白い粒がついた指を差し出す、パクッと口に加えると、思わず体がぶるッと震えた。なにこれ、とっても甘い!

「〜〜〜〜っ…キュ!!」
「ね、美味しいでしょ?私もカロンの家で初めて食べた時からずっと好きなの。これから作るクッキーやケーキも好きだけど、単体もなかなか美味しいの。」
「カルミア!カルミア!あま〜いちょーダイ!」
「ちょっとだけだよ、あまりないんだから。」

カロンのことなど忘れて砂糖に夢中になる。カルミアも「バレたらすごく怒られるんだよね〜」とか言いながら食べてる。
とってもあまあまでずっと食べていたい!!
あまりにも美味しいため、ぼくらは後ろで再び開く扉の音に気づかなかった。

「オサトウ、ウまぁ〜、あまぁ〜」
「ほんとだねぇ〜………ぁ…」

カルミアの顔が突然引きつる、ぼくの後ろを見ながらまるで蛇に睨まれたカエルみたいに…

「お前ら…何してるんだ?」

聞き覚えのある声と後ろの気配にくるっと振り返ると、紫色の瞳と目が合う。

「えっと…カロンこそ……なんで戻って。」
「忘れ物だ……しかしながらこれ一体どういうことだ?カルミア。」
「あはは、食べちゃった……。」
「砂糖は高級品で、なかなか手に入らないから手を出すなと、あれほど言ったはずだが?」

カルミアがヘラヘラとこわばりながら、カロンと会話している間にぼくは逃げ出そうとこっそり移動する。

「それはともかくだ。」

カロンがぼくの首根っこを引っ掴む。途端に身体中から冷や汗が出てきた。

「なんでお前もいるんだろうな?木霊。さ……………そんなに空を飛びたいか?」
「ピ…………」

ぼくはまた鳥になった。





あれからもう一度、もう一度と同じことを繰り返した。
でも全然だめ、カロンには全く歯が立たない。
瞬間移動も何度も考えたけど、ここまできたら使ったら負けな気がして、使わないことにした。
何度も投げ飛ばされるのも、もう慣れた。というか、あれ、結構楽しい。

「こーだまちゃん!」

木株で休んでいるとカルミアが声をかけてきた、空っぽのカゴをぶら下げて。また花を摘みに行くらしい。
カロンはいない。

「私と一緒に花摘みに行かない?一人だとなんだか寂しいからさ。」
「オハナ?オハナ?」
「うん、今ならガーベラが一番見頃だよ。」
「ガーベラ、ガーベラ?」

ガーベラがなんなのか分からないけどついて行くことにした。
花畑に着くと赤っぽいオレンジのたくさん花びらがついた立派な花が、背高く咲いている。カルミアはそれをハサミで切りながら手際良くカゴに入れた。

「そういえばさ、最近どうもカロン木霊ちゃんに当たり強いと思うんだけど、なんか喧嘩でもしたの?」

カルミアが聞いてくる。
ぼくはカゴにたまる花を分けながら、なんの気無しに答えた。

「カルミアを、カロンが…スキ…をツタエタカッタノ。」

あ、今言えたって言った後で気づいた。
あまりにあっさり言えたせいで、感動は薄いけど。
カルミアは一瞬目を丸くして、ぼくをチラッと見た後、ぷっと吹き出しながら「だからかぁ〜」っておかしそうに言った。
思ってない反応に、ぼくは首を傾げる。

あれ?もしかして、カルミアも好き?

「カルミア、カルミア。カルミアはカロン、スキ?好き?」
「うーん、まぁそうかなぁ〜よくわかんないけど、好きだと思うよ。カロンが私のこと好きってこともずっと前から知ってる。」
「カロン、どこがスキ?」
「えっとね、どこが好きって言われてもなぁ、わかんないけど、カロンだったらいいかなぁって…なんだかそう思ったの。」

パチンと花を切って、カルミアはハサミをしまう。

「あとちゃんと私が大人になるのを待っていてくれるところ……かな。もう私、子供も生めるのにずっと待ってくれてるの。そこが思いやりがあって好き。」

カルミアは穏やかに笑う。その顔は大人みたいな子供みたいな不思議な笑顔だった。

そうなんだ、カルミアはカロンのこと好きなんだ。
なんだかつまらない、でも大好きなカルミアの好きな人は嫌いって言えない。
つまらない、つまらないけど…仕方がない。

「木霊ちゃんも好きだよ、だからこのこと内緒。ちゃんと約束できるよね?」
「ヤクソク?ヤクソクって、ナニ?」
「このことを言わないって私に誓うこと、私、いつかカロンが言ってくれるのを待ってるの。だから内緒にしてね、木霊ちゃん。」

ヤクソクはなんだかめんどくさそう。
でも大好きなカルミアの頼みだ。
断れない…本当は嫌だけど、嫌だけど仕方ない。
カロンには勝負に勝った。
でもなんか…負けた気分。

「ワカッタ、コダマ、ヤクソク守る。」





カロンはカルミアが好き。

コダマもカルミアが好き。

カルミアもコダマが好き。

でもカルミアはカロンが一番好き。

「ヌゥぅ………」
「どうした木霊、妙に難しい顔をして。」

カロンが覗き込んできた。
心配してくれてるみたいだけど、今は顔を見るのもなんかやだ。
プイッと顔を逸らすと、カロンは「あ?」と変な声を出した。

「人がせっかく心配してやったってのに…やっぱこいつ嫌いだ。」
「そんなこと言わないの!難しいお年頃なのよ!きっと。」
「…そういえば、こいつ一体幾つなんだ?俺より前にいたような……」
「ん〜そういえば…なん歳だろ?」

カロンは嫌な奴だ。
僕のカルミアを盗るなんて許せない。

もう、一生大嫌いだ!!

カロンのバカ!!









終わり

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コメント

  • 哀乃

    まだ1話目ですが、とても面白かったです(*⌒▽⌒*)

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