巻き込まれ召喚された僕の、異世界冒険譚
4話
   僕が騎士ふたりのステータスを見て驚いていると、王女が戻ってきた。
「お待たせ致しました。」
「いえ、のんびりしてただけですから。
   それで、お話とは?」
   (まぁ、大体予想出来てる事だけどね。)
「お話とは、貴方にはこの国から出ていって欲しい、と言う事です。
   ……いえ、すみません。間違えました。
   欲しい では無くて、出ていってもらいます。」
   (うん。やっぱりね~。予想通りー)
「どうしてですか?」
   僕は敢えて分かりきった事を聞いてみた。
   まぁ、答えは思ってた通りだったけどね。
「我が国が無能を召喚した、と他国から言われるからですよ。
   安心して下さい。この国を出るまでは、そこに居る騎士ふたりが貴方に付いていますから。」
   (え。あの騎士ふたり?!
   …………まぁ、あのふたりには聞きたいことが有るから良いか。
    つか、護衛と言う名の監視?)
「分かりました。確かに無能を召喚したと言われるのは嫌ですもんね。」
「よかった、分かって貰えましたか。
   ………分かって貰えなければ強硬手段に出るとこでした。(ボソッ)」
   何やらボソリと不穏そうなことを言っている王女に、僕は構わずに質問をしていく。
「皆に聞かれたらどうするんですか?」
「……そんなの決まってますよ。
   貴方が、“無能な自分が皆の傍に居たら、皆に迷惑がかかるから、この国から出ていきます。”と、言ったと伝えます。」
   (返答に微妙な間があったけど?
   もしかして考えて無かった?)
「そうですか。
   …因みに、この国から出るのはどのくらいの時間が掛かりますか?」
「そうですね…………。
   一番近い隣国のアルフリーナ王国だと、ひと月半くらいでしょうか?」
   (ひと月半…ね。)
   僕はその返答にふむ、と頷いて自分の為の要求をする。
「では、その間の食べ物や衣服は?」
「え?何故です?」
   (わぁ……。何故、と言ったよこの王女様。)
   キョトンとして、本当に分からない。と言う顔をしている王女に、僕は自分の要求が通る様に説得?をする事にした。
「食べ物は、この国から出るまでは持たなければ途中で倒れて人に見つかってしまいます。
   衣服は、この姿だと召喚された勇者達のひとりだと、分かってしまうからです。
   僕も図々しいと思ってはいますが、そうしなければ王女様達に迷惑が掛かってしまいますからね。
   以上の理由から、ひと月程の食べ物と衣服を貰えると嬉しいです。」
   図々しいと思っているが、貴女達に迷惑を掛けたくないのだ。と言うと、王女が納得の顔をした。
「なるほど……。確かにそうですね。
   分かりました。今すぐ用意しましょう。
   勇者様達はこれから国王陛下と共に夕食を摂りますから、その間に此処から出てもらいます。いいですね?」
「はい、分かりました、王女様。」
   僕がきちんと返事をした事に機嫌を良くしたのか、王女は笑顔で頷き、指示をしに講堂から出ていった。
   (あ~ぁ。あの王女様は乗せられやすいのかな~?
   単純?天然?素直?
   まぁ、食べ物も貰えるみたいだし、別にいいか~
   はぁ、久しぶりに人を説得したな~、、、
   力尽きそうだよ……。)
   僕が暫く待っていると、王女が巾着の様な袋を持って戻ってきた。
「では、行きましょう。」
   王女の後に僕が続いて、その後ろを騎士ふたりが付いて歩き、やがて人が居ない城門に着いた。
「今は騎士を立たせていませんが、この門から続く道を行けば、一番近い隣国に着きます。
   それから、この魔法袋の中に貴方達の食べ物と衣服が入っています。」
   そう言って王女は僕に巾着の様な袋を渡す。
「こんなに綺麗な布を使ったモノを貰ってもいいんですか?」
「この布が王宮に有る中でも一番質の悪い布なんです。」
「これで質の悪い布?」
「まぁ、そんな事よりも、隣国への道はこの騎士達が知っています。
   ……では、くれぐれも隣国へ着く前に死んだりしませんように。あと、早く服は着替えて下さいね。
   それでは、私はこれで。」
「あ、待って下さい。」
「なんですか?」
   僕は帰ろうとする王女を引き止めて聞いてみた。
「あの、案内を付けてくれるのは助かりますが、この騎士様達は仕事等はいいのですか?」
「あぁ、そのことですか。
   大丈夫です。貴方が気にする事は有りません。
   聞きたいことはそれだけですか?
   ……それでは、私は行きますね。さようなら。」
   (む?大丈夫って何が?
   いや、僕が心配しているのは『その仕事』では無いんだけどな。
   ………ま、いいか。うんうん。)
「では、行きますよ。」
「早く此処から出なければ怒られてしまいます。」
   そう言った騎士ふたりに僕は頷いて、門から出ていく騎士たちのあとに続き歩き出した。
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