それでも僕は歩み続ける(仮)

みきトラ

第1話終わりと始まりと

死んだ…。


そう、俺は死んだ…、何もかもを目の前で失い、助ける事も手を伸ばすことも声を出す事もできず唯、呆然とバカやった仲間達が愛する人が守るべき子供達が死んで行く姿を俺達が住んでいた国が壊れて行く姿を見ていた。


何も出来ない…何も守れない…誰も救えない。


奴は俺を殺す時に言った。



「どうだ?全てを失った気分は?悲しいか?苦しいか?愛しい者が目の前で失った気分はどうだ?私が憎いか?憎いだろう?仇を討ちたいか?どうだ?」



俺は何も言えなかった何も…、考えられなかったそして何も言えず、俺は…。



「いい表情だ、絶望したその表情最高だ!あぁぁぁぁ!!良い!!それだ!それを見たかった!!貴様の!英雄と呼ばれた貴様の絶望したその姿!悲しみに満ちたその表情!ククククク…ハハハ!!!最高だよ!英雄君!良い物を、見せてくれた褒美に一思いに殺してやろう…。ありがとう『王都ラムスニア』の英雄君、数百年ぶりに手応えのある遊戯だったよ。さらばだ可哀想な英雄よ。」


そして、死んだ…。


何をされたのかどうやって死んだのか?魔法によって殺されたのか?それとも何か武器を使われて心臓でも刺されたのか?それとも、首を飛ばされたのか?わからない、わかりやしない。


唯、わかっている事は自分が死んだという事


そして、2回目となるこの場所に再度きたという事


そう、神のいる魂の管理区に。


「久しぶりですね。」



何処からか声が聞こえた。
約三十年ぶりだろうか?
相変わらず姿は見えないが綺麗な声なのは確かだ。



「褒めていただき、ありがとうございます。後正確には二十六年と8ヶ月ですね。」



あぁ、そういえばそうだったな、思った事が全て聞こえるんだっけ?


「はい、その通りでございます。」


それで、俺はこの後どうなるのかな?一様言われた事は全てやったと思うんだけど。


「はい、貴方は魔王を倒し世界に新しい発展をもたらすという目的を果たして頂いたので。お礼として私の出来る範囲で願いを叶えようと思っております。」


そうか、なぁ質問いいか?


「はい、答えられる事に制限はございますが…。」


俺を、いや、《ラムスニア》を襲撃した奴は一体何者なんだ?


「悪神です。」


悪神…神か、そうか…


「はい、魔王を作り出した者の一人です他には魔神と邪神が存在しております。ですが、気にしないでください彼らを討伐できる者は、【勇者】の称号を持つ者でないとまともに戦う事すらできませんから。英雄であった貴方では何も出来ず死んでしまったのは仕方のない事なのです。」



あの世界に勇者はいるのか?



「はい、存在します。しかし今はまだ8才児の子供です、もし出会ってしまったら今のままではすぐに殺されてしまうでしょうね。」



そうか、俺では倒せないのか



「貴方の気持ちもわかりますが、それは出来ないと言わざるをえません。すみません。」



そうか…。なら、それなら…


「俺を消してくれなんて言うつもりだろう?バカな事を言うんじゃないよ!!」


「ふざけんじゃねーぞ!?テメー何様だと思ってんだ!!」


「ユウがそんな事を言うの、私は許さないわよ?」


「勝手に消えようとしてんじゃねーぞ!クソ野郎が!」


「君が罪を背負おうと思う気持ちは、わからないでもないが。それを許すほど私の国民は愚かではないぞ!」


「あんたは、十分やってくれたさ!俺達は十分救われてきた!」


「色々背負ってくれた、貴方様にこれ以上背負わせる事なんぞ私達は望んでおりません。」


ここは…ここは。神界のはず?何故彼らの声が!?


「貴方が、『俺を消してくれ』と必ず願うと彼等に言われたのでもし本当にそう言われたら、この声を届けるようにと《ラムスニア》の皆に願われたのです。」



そうですか…。本当…ほんとに暖かくて優しい人達だ…他にも願いはあっただろうに…。



「私は貴方に感謝しております。今までの世界ならこんな事はありませんでした誰かの為に与えられた願いを他者に声を届ける為に使うなどと、自分の欲の為ではなく他者を助ける為にと…。このような優しい変化をもたらしてくれた貴方に神である私は心より感謝を申し上げます。」



やめろ、やめてくれ…。決心が崩れるから…。



「ありがとう、中倉優なかくらゆう君」



「今まで我が国ラムスニアを守ってくれてありがとう【英雄】ユウよ。」



「美味しい料理の作り方を教えてくれてありがとね!お陰で沢山のお客さんに喜んでもらえたさ!」



「一緒に沢山バカやったよな!レベルが低い時は良くスライムと本気の追いかけっこしたっけな!お前と過ごした時間は楽しかったぜ!ありがとうよ。だから、消えようなんて思ってんじゃねーぞこのクソ野郎!」


「テメーには何回も命を救われた。それだけではなく俺の心まで救ってくれた…感謝している。ありがとな。」



「もう、夢も希望もない老いぼれた私を執事として向かい入れて頂きさらに私の家族まで助けてくださいました貴方様には感謝しかございません。ありがとうございます。」


「あんたは、居場所のない捨て子の俺達にあったかい飯を沢山食わせてれる場所を作ってくれた。それだけで十分幸せだったよ。ありがとう。」



「最後は私だね、ユウと出会ったのは私がオークの討伐クエストで死にかけた時だったね。あの時はありがとう、助けてくれた時のユウの背中カッコよかったよ。」

やめろ…やめてく…れ。



「それから、お礼をしたくて街でデートしたよね?あれね本当はお礼が目的じゃなくて一目惚れした貴方と離れたくなくて誘ったんだ、そしたらビックリしたわ。だってお金の使い方や子供でも知ってる物の価値すら知らないんだもの。そういう無知な所は可愛いなぁと思ったから私としてはプラスだけどね…。」


や…めろ…。


「それから、一緒に冒険者になってこの世界を沢山旅したね。海の中にあるダンジョンにも入ったね、彼処を住処としてた海龍との戦いは息が苦しくて闘うのしんどかったね。でも、一番しんどかったのは、魔王との戦いかな?私は途中からモンスターに足止めされて一緒に行けなかったから貴方が心配でハラハラしたよ。やっと倒して貴方と魔王がいる場所についたと思ったら魔王の姿は無くて貴方が倒れていたんだから、物凄く悲しくなったわ…。でも、近づいたら本当は寝てただけだってわかって安心したけどね。」


ウゥ"…や…め…



「それからは、《ラムスニア》に帰ってユウから告白されて結婚したよね、とっても幸せだった…。ユウとの子供を作れなかっのは少し残念だけれど、私はとても幸せだったよ?ユウはどうかな?私と夫婦になって幸せだった?フフッまぁ、答えは言われなくても知ってるけどね♪。」


お…れは…い…まも


「『俺は今もこれからも愛してる』ってユウなら言うんだろうね。それはとても嬉しい、ありがとう。私もねこれからもずっと愛してるよ。この気持ちは誰かを愛するという気持ちは例え生まれ変わっても無くさないよ。私もユウを愛してるだから。消えようなんて思わないで、またどこかで会えるから。」


また…何処か…で?


「それに、愛はひとつじゃないよ!ユウ、貴方はきっとこれからも沢山の人を助けちゃうと思う。生まれ変わっても人の魂の本質ってなかなか変わらないものなんだよ?ねぇ?そうでしょ?神さま?まぁ、本当のところわからないけどね。それでも、私はそう信じるその中で私みたいに貴方の事を好きになる人もいる。絶対にいるわ!だってユウは優しいもの。」


ハハ…もう、何言ってんのかわかんないよ…。


「ねぇ?ユウ?貴方は私たちを守れなくて悲しんでると思うでもね、私達はそんなユウを悲しませた私達が許せないの。ねぇ?消えようとしないで、ここでやめようとしないで確かに悲しい事も沢山あるし苦しい事もあるよ、でもね?それも含めて全部で!私は『幸せ』って物なんだと思うの。もう一度言うよ?私は幸せだったよ。ユウはどうかな?幸せだったかな?もう、答えはわかるよね?」


ずるい…。ずるいぞメイシア。そんなのこう答えるしかないじゃないか。あぁそうさ、俺も『幸せだったよ』


「ユウのその言葉が聞きたかった。ありがとう。これでもう、迷いわないね!。また会おうねユウ。今までありがとう。」



こちらこそ、ありがとう。
この世界で
君に会えてよかったよメイシア。


「ではこの言葉を貴方に言うのは2回目ですね。さて、貴方の願いは何でしょう?」


本当、かみさんと、
神さんはずるいったらありゃしないよ。


「フフ、そうですね。」


もう、わかってるでしょ?
転生するよ。ただし今回は記憶の引き継ぎは無しでね。



「よろしいのですか?それで?」


あぁ、問題ないよ。だって
『愛はひとつじゃない。』そうでしょ?


「はい、その通りです。それでは、今から貴方を転生させていただきます。今回は魔王や勇者とは関係の無い人生を歩んでくださいね。貴方は十分やってくれました。どうか、次の人生では貴方が波乱の無い幸せな時を過ごせる事を祈っております。」


あぁ、自分でもそう祈るよ。


「いってらっしゃいませ。
前とは違う世界《アムエニア》へ」



次の世界はアムエニアって言うのか。
楽しい事があるといいな。
世話になったありがとう神様。またな。



「行ってしまわれましたか…、また会いましょうユウ君。」



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