嘘は異世界を救うのか、滅ぼすのか

ノベルバユーザー183896

第46話 嘘の決断は邂逅を迎える②

カリヒトが宣言通り自主退学してから、カリヒトの組織と一部の一般生徒達は連日その話で持ちきりであったが、1週間も経つと認知され大人しくなった。


空き教室にて次回の課題を予測し、連携を取れるようにレクチャーを頼まれた。こいつもがむしゃらにやるのではダメだということが痛いほどわかったらしい。


「シンドウさんは怒るかもしれませんが、僕はカリヒトさんもできうることなら卒業させてあげたかったです。2年間挑み続けてこのポイントを稼いだのを奪ったことを負い目に感じてしまいます。」


「甘いな。と言いたいところだが言い分は分かってんよ。カリヒトが卒業できる可能性も低くはあったが0じゃない。だがこの大敗北は容易に飲み込むことはできないんだよ。ヤマタケはそれを忘れずに配下を卒業させてやるのが報いというものだ。」


人は敗北から学ぶというが、それは失敗が許される範囲の話だ、重要な場面で失敗し配下の不満と不安を募らせたカリヒトの挽回は困難な状態となった。これを挽回する力はカリヒトにはない。学んだ先になにもなければ意味がない。


「そうですよね。雑談から入ってすみません。次回の課題なんですが、いきなり大量のポイントが入ってしまい正直どうすればと言う所です。田中さんを卒業させたい気持ちはあったのですが、僕は今年どうしても卒業したいという欲は今そんなに強くありません。」


そんなに強くか、先輩に託されてしまってはいたが田中のしてきたことを思えば卒業は絶対今年中にする!という勢いにはならんだろうな。


「田中は仲間としてこれからもやっていくが、今年卒業できるかは田中強いては三年次の頑張り次第というところだろ。死ぬ気でやってるならお前もそれに応えたいと考えてるんだろうなお前は。」


「自分もこんなに他の人間のため頑張ることはしないと思ってたんですが、皆と戦い、学園生活を送る中でリーダーとして導きたいというよりは、皆で卒業したいという欲が出てきてしまったようです。身体能力は上でも知力では大分差があるので何言ってんだと僕自身思ってしまいますが。」


はっきりとそう判断し、こうやって努力すること自体にかなり俺は価値があると思っているが。確かに今はまだ負けてるがな。


「ヤマタケが思う知力ってそもそもなんだ?おそらくお前は俺が相当頭いいやつみたいに言ってるが、観察眼とでもいえばいいのか。それが長けてるだけで知力が高いなぞ思ったことはないぞ。納得はせんだろうが。」


「そんなことないですよ。学校のテストなんかやったら点数取れないんでしょ?シンドウさんそういう地道な努力とかしないでしょ。」


あれれ?バレてるだと...なぜだ!
俺がこの高みにくるのにどれほど努力を..努力はしたよ!本当だから!


「...お前な、そんなことはないぜ。ユイが教えてくれれば学年順位2位くらい取れるっての!」


「あれほど人頼りにするのはと言っておいてそれって...でも2位取れるかもしれないということは自頭はやはりいいんですね。」


やばいなヤマタケの知力が上がってる!そう悪い意味でだ!誰がこんな子に育てたんだか!


「さて本題だ。次回の課題への対策だな。正直言おうかなり現在有利に進められると俺は思っている。」


「話の方向変えましたね。いや僕が最初に雑談から入ったので文句は言えませんね。有利に進められるというのは組織数とポイント数からということですか?」


これくらいは考えるまでもなく分かっているようだな。今じゃ組織数162人ポイント7005だ。策略は山ほど思いつく。ヤマタケも少なからず使い方を考えてるだろう。


「そうだな。組織数はデメリットより、メリットの方が間違いなく多い。ポイントも少ないと下手に見られるが、多ければ相手に隙をつかれ難くなる。」


どうしても、隣の芝は青く見えるというやつだ。自分の組織に不満があれば敵は見逃さない。だからボスとして統治しなければならないのだ。


「なるほど。課題によってはこちらの組織力をアピールできる。相手を崩すことも可能ということですね。それも欠けてるとこではあるんですが。」

アピールという線はいい考えだ。確かにヤマタケには足りないところではあるかもしれないが、今後次第ではいくらでも補える。一つとして今回は強さをしめせたんだ。そういう証明を増やしていけばいい。


「はぁ〜確かに欠けてるな。ヤマタケがもう少し知恵が働き、もう少しカリスマ性があり、凄まじいイケメンでもあれば楽だったんだがな〜。人を傷つたくないヘタレなのに戦うことしか能がない。それでもステータスは高い。欠けてるとこ多すぎてどこから補うべきかね〜」


「..確かに僕は欠けてるとこだらけですが、そこまで言いますか!これでも僕この学校で少しはモテイベントあるくらいにはイケメンらしいですよ!」


ほう〜俺はこっそりケータイを取り出し、音は出ないようにする。


「おいおい冗談はやめてくれよ。ヤマタケがモテるだと。まさか以前新しく入ったあの女の子に激しくしたって言ったのもそうなのかよ。」


「いや、あれは彼女からいきなり僕を押し倒してきたので仕方なく取っ組みあいになってしまい、その動けないよう抑えつけざるおえなかったといいますか。」


「ほう〜じゃなんだ。以前連れてきたあの双子ちゃんなのかな〜。今まで負けたことがないのに、力づくで抑えこんでギブアップさせる。そんな屈服プレイを楽しんでいたと。」


「誤解ですよ!その2人の連携に翻弄されまくってたんですが、不可抗力といいますか3人とも態勢を崩しまして...その抑え込めちゃったといいますか。」


いや〜どんな風に抑えこんだのか気になりますな〜


「じゃなんだよ。それ以外にあるんだろ。言ってみろよ。ハッタリか?やっぱりハッタリなのかよぉ〜」


「その以前、戦い合った中の人で2人ほど強さに惹かれたとかで告白を受けたんですよ。その余裕が今ないのでいつか必ず返事をすると。」


「罪におけねーなヤマタケさんよぉ〜キープかよ。2人の内将来有望な方を選ぼうなんてよぉ〜ひゅ〜カッコイイ〜」


「あぁ〜もうやはりちゃかすんだから!その僕も悪いとは思ってるんですよ。そして考えをまとめない内にその前戦った文さん。フリースローのことです。救ったのは僕ではないのですが、英雄が現れてくれたって嬉しそうに言ってくれまして告白されました。正直1番好きかもしれません。僕はどうするべきなのでしょうか。」


「クククッやばい超面白い。聞いてたかよ。どう思うよ。このお兄ちゃんのこと」
「正直言って今すぐそちらに行き、その脳天をぶち割ってあげたいな、お兄ちゃん。兄を最も想う詩歌ですよ〜お久しぶりですね。」


「....えっ、...シンドウさん!...嘘でしょ...クッ..本当にあなたは人間なんですか!嘘と言えやぁぁ!お前の血の色は何色だゴラァァァ!」


あ〜ヤマタケがキレた。いや惚気なんて聞いてやる気なんてさらさらないって決まってんじゃん。リア充よ盛大に爆ぜろ。


「お兄ちゃんはもうあたしのことなんて忘れてるんだよね。そうよね。私はこんなに頑張って、お兄ちゃんに会いたいと思って頑張ってるけど、お兄ちゃんはそうじゃないんだよね。ごめんね、もう切るね。ばいばいお...」


「待ってくれ!詩歌!忘れるわけないじゃないか!その妹の愛に応えてやることはできないが、いつまでも一緒にいるよ!絶対だから。そのさっき言った子達には想いには応えられないって言うよ!」


俺からケータイを毟りとって語りかける。このシスコンが、どんだけ慌ててるんだよ。


「でもお兄ちゃんは文さんのこと1番好きなんでしょ?いいよ妹である私のために幸せを奪うことなんてできないよ。お別れだねお兄ちゃん。」


「詩歌待ってくれ!そのさっきのはこの学校での話だ。1番は詩歌に決まってるだろ!俺は世界一お前を想ってるよ。だからお別れなんて言わないでくれずっとそばにいてくれよ。」


「本当なの?嬉しいなありがとうお兄ちゃん。私も世界で一番好きだよ。私頑張るね。だからお兄ちゃんも頑張って、そして早く会いに来てよ。そのやっぱり淋しいよ。お兄ちゃんの胸の中に飛び込みたいな!じゃあ忙しいから切るね。ちゅっ。...プ...プツ」


電話は切れた。やはりミッシーは最高だな。俺マジであいつを部下として使いたい。もう使い道がありすぎて困るわ。


「...シンドウさん。あんたは許せないが、これは僕が悪かったので飲み込みます。恋愛なぞ不要。俺は一刻も早く卒業しなければいけないようですね。」


ヤマタケの闘志が赤く赤く燃え上がる。やばい色が若干青も混ざってる。これは命すら惜しくない夜叉となったケンジ以来始めて見るかもしれない。ケンジのは完全にドス黒い燃え上がる青だったが。

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