嘘は異世界を救うのか、滅ぼすのか

ノベルバユーザー183896

第29話 嘘は蠱毒より選ばれし者に告げる②

俺は帝国機関で働いていた赤神総長の自宅にお邪魔している。
赤神総長の命令で俺以外は別の部屋で待機している。


「シンドウ本当に生きているとはのう。やはり殺されても死なん男だのう。」
「俺も人間ですよ。殺されたら死にますって。..久ぶりだなアカシ総長。ご健在で何よりだ。」


赤神司郎あかがみ しろうは昔の戦友であり協力者となってくれた人だ。俺の考える思想を気に入ったらしく12年前にいろいろ手を回してくれた。ちなみに俺が本格的に渾名付を徹底させたのもこの人の影響が大きい。


「ワシの言った通り雪見村に言ったそうじゃな。ジロキチのやつはどうだった?生きてたか?」


俺があの村に決めたのはアカシ総長の提案による所が大きい。なんでも昔の戦友が隠居してるらしく面白そうだから行ってみるがいいと言われたのだ。


「とんだ猫かぶり爺さんだったぞ。ホントロクなやつがいないなあんたの仲間は。..本題に入ってもいいか。」


「シンドウが作成したシステムで選び抜かれた者の事じゃろ。ワシが管理しておるよ、今総長を務めてるヤイチのやつには話を通しておるから問題はない。会いにいくか?ワシもケンジからお前が来ることは聞いていたからのう、ついていってやろう。」


「アカシ総長絶対面白そうだから提案してるだろ。だが来てもらった方が好都合だからな。先読みしていやがんなホントよぉ。アカシ総長には敵わんね~。了解だ。」


この爺さんに俺は先読み勝負と言えばいいだろうかな、勝率が良くて1割でしかない。俺が全力を出しても勝てなかったやつはアカシ総長が初めてだ。





俺達はアカシ総長が用意したワゴン車に乗り移動する。


マカベには別件で任務に動いて貰うことにしたため研究に戻って貰った。おそらく今後のことを考えると兵器は必要となる。俺が手に入れた報酬で得た資産をくれてやったからな。使えるものを好きなだけ研究していて貰おう。


「これから向かうのは天城大学付属高校じゃ。選び抜かれた優秀なもんが通っておるわい。その中で特別編成クラスがあってのそこに今回は向かうぞ。」


「それはいい、だがなんだこの制服は!男性用2着に女性用1着ということは、また狙ってやりやがったなアカシ!」


用意された制服は16歳の俺、15歳のユイ、14か15か?ヤマタケの分ということだろう。


「ありゃ、女性用がもう一着必要じゃったかのう。ミッシーちゃんの分もの。」
「いやいらんミッシーには別にやってもらうことがあるから。サポートしてやってくれアカシ。」


ミッシーには掘り出し物を探す任務をさせる予定だ。


「え~。私もお兄ちゃんと一緒に通いたいですよ~。」
「ダメだ。別の事をやらせるということで連れてきたんだ。嫌ならあの村に戻すがどちらがいい。」


ミッシーがいると今回はヤマタケの足を引っ張ることになるだろうからな。ミッシーの能力を生かせる方法も考えてある。


「..わかりましたよ。アカシお爺ちゃんよろしくお願いします。」


「ほっほっほ。ずいぶんシンドウはミッシーちゃんを気に入ったみたいじゃのう。高音の妹はワシの孫同然じゃ。帰りにアイス屋を買い上げて好きなだけアイスをあげようかのう。」


「やったー!お爺ちゃん大好き!ありがとうね!」


おい!ツッコメよ!アイス屋を何でこんなことで買い上げしようとしてんだ!アカネは顔真っ赤にしてるし、ケンジは平然としている。これが普通なの!


「話が脱線したな。俺とユイにその高校に通えってのかよ。確かに味方にすんなら内情を把握したいから有効な手だと思うが、アカシがそこらへんのことは知ってるんじゃないのか?」


俺は抜かれたやつを早急に鍛えあげ戦力とする計画をしていた。この学園以外にも戦力はいるはずなのだがおそらく小競り合いを起こしているところに裂いているのだろう。人材不足ってやつだ。だからこそ才能の持ち主たち、それも伸び盛りな若いやつを最大戦力として育成することが、俺の考えたシステムだ。


「そんな悠長なことをしている時間はないと言いたいのじゃろうシンドウ。だがお主の考えではまた失敗するぞ。時間はワシらが稼いでやる。若いやつらの育成に全力を尽くしてやれ。そうすれば見えてくるものもあるというものじゃよ。」


痛いところを突いてくる。効率重視で動いてきた俺の価値観や行動がこれでは崩れてしまう。だが俺はそれで大敗北を起こしてしまった。本当にそれで解決の糸口が見えるというのかは疑わしい。だがアカシ総長が提案し嘘は言っていない。何かあるのだろう。


「....わかった。全力を尽くそう。配慮に感謝するアカシ総長」
「ククッあの生意気な小僧が丸くなったのう。それは成長じゃよ。期待しておるよ。」


俺はやはりこの人には頭が上がらない。あのジロキチ爺さんといい研鑽を積んできた年寄りは怖いな。


「そうじゃった。ケンジと高音には別の役職を用意したぞ。ケンジは特別編成クラスの担任教師を高音にはその副担任ということにしておいた。高音頑張ってケンジを落とすんじゃぞ!」


「お爺ちゃんはまたおせっかいを!止めてよね私は私なりに頑張ってるわよ!」
「それじゃワシが死ぬ前にひ孫の顔が見れんじゃろうが。いやじゃぞワシは!ケンジも高音の気持ちはもう知っとるのじゃろ。早く抱いてやらんか!」


この爺さんとんでもないな。普通こんなやつに孫はやれんと言うもんじゃないのか?抱いてやらんか!とか止めてやれ!アカネの恥ずかしさと怒りで真っ赤だぞ。羞恥と憤怒と性欲でオーラがとんでもない色になってんぞ。


「すまんな爺さん。俺はアカネのこと好きな方だが恋愛対象としては見てないぞ。諦めろ。」
「ケンジさん。その期待していいのか、できないのか分からない発言止めてくださいよ~」


やばいな爺さんがもの凄く面白いおもちゃでも見つけたような顔してるぞ!


「おい!爺さん天城なんちゃら高校ってのに着いたようだな。会話は終わりだ案内を頼む。」


「っちぃ。遠回りさせればよかったわい。そうじゃな着いたようじゃな降りよ。ミッシーちゃんは高級ホテルを手配しておいたぞ。好きなだけ注文して寛いでいてくれ。後から向かうからの。」


舌打ちしやがったよ。本当に本能の赴くままだな。こういうやつとだけは関わりあいたくなかったよ。絶対友達いねぇだろ爺さん。





手続きを行い。
まず、俺とユイとヤマタケが転校生として特別編成クラスに入った。


「おーいこの雑魚ども!俺はシンドウだ。編入されて来てやったぞ!喜べよ!一緒に切磋琢磨ってやつをしようぜ。」


俺はドアを開け。挨拶を行いルーキーどもの顔を拝んでやるのだった。

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