転生したSランク冒険者は最強を目指す

スーノ

第十一話 半ば突発的な婚約

いつもより少し長めです
「一応、妾は王族、しかも王女なんじゃぞ、そこから考えれば自ずと答えは分かろう」

「あー、もしかして女なんだから有益な人材の繋ぎにでもなれって感じのことか?それとも婚約者がいないから貴族が婚約を申し込んできて鬱陶しいとかか?」

後者だったら良く理解できる。ウチのアルカイト辺境伯家はとある理由からアトランダ王家と同等の権威を誇っているから俺にもソフィアにも婚約の申し込みが絶えないんだよな、しかも侯爵以上の貴族の子女、子息が相手だと態々自分から拒否の返事を書かないといけないからかなり面倒くさいんだよな

「主に後者じゃな、前者の方もそう言う声が上がっておるらしいが、国王やその周りの優秀な側近等が妾の正体を知っておるからな、特に問題にはなっておらぬ」

「だけどそれだけじゃ、理由としては弱くないか?」

「たったそれだけのことじゃったら妾もこのような事は頼まぬよ」

「王族がどうにもならない事なんてかなり限られるな、それで婚約関連になると……他国、それも森霊国と同格の国の王族か皇族か公族にでも求婚されたのか?」

理由としてはエルアト森霊国はこの辺りどころか世界の国々の中でもトップクラスの力を持っているからまず格下の国の王族とか皇族とか公族とかの求婚ならあっさり跳ね除けられる、それと同様に格上の国なんかは特殊な事情で世界一の力を保有していて国から半ば独立しているアルカイト辺境伯領(一部ではアトランダ王国とは、別国のような扱いを受けているのでここに入るのは可笑しくないはずだ)かアトランダ王国くらいしか存在せず、うちが求婚する事はあり得ないし、アトランダの国王と王族は気に入った人が出来たら国のしがらみすらも悠々と無視するちょっとアレな人達らしいのでこちらも問題ない、だから必然的に同格の国になる訳だ、それと何故、王族か皇族か公族に限定したかと言うと正直他国の侯爵家以下とか自国の貴族以上に取るに足らない存在でしかないからだ。大陸トップクラスとなると外部の貴族と繋がりを作るよりも内部で貴族との結束を強めた方が余程利益があるような状態にまで国が成長し切ってしまっているからな

「うむ、そう言う事じゃ。しかも相手がガルトア龍国の皇子でのその先祖と言うか建国王が妾達『封枷の武聖シール・ウェポンアーク』のリーダーじゃったロドガト爺でな、今までの恩の事を思うと断りにくいのじゃよ」

封枷の武聖にロドガト爺さんか随分と懐かしい名前を聞いたなと思いつつ久しぶりに思い出す。
『封枷の武聖』はロドガト爺さんが独断と偏見で集めた〜の枷スキルを所持した強者達の少数集団で前世の俺が所属していた集団だ(まあ、あの中で冒険者だったのは俺だけだったけど。しかも殆ど全員、単独行動が常だったけど)、正直言うとあの集団が無かったら今の俺はここにいなかったって確信出来る。それでこの集団の目標が枷スキルの解除で俺があっさり転生を選んだのには、ここに理由の一端がある。
それでロドガト爺さんは齢5000を超えていて、幾ら強者が長生きする世界で尚且つロドガト爺さんの種族である龍人族が竜人族の希少種で元々かなりの長寿だとしてもいつ死んでもおかしくない年齢の熟練の老兵だ、だけど俺が最後に会った時にはまだ活力が感じられ、盾使いとしての実力も全く衰えていなかった。ロドガト爺さんは本当にいい人で色々お世話になったな、

「エリラス、本当にロドガト爺さんに恩の感じているなら、即刻断るべきだな。お前の美貌に惑わされているその皇子が哀れすぎる」

「なるほどのう、確かにそれは一理あるのう。じゃがそれをお主に言われると妾は見た目だけの女で、他に女として魅力がないと言われているようで悲しいのじゃが、それに一応、今の妾はエリラス・エルアトという一人の乙女なのじゃぞ」

「そこはノーコメントで、なんか下手に言ったら墓穴を掘りそうだ。それでどうするんだ?俺は婚約者を自分で決めていいって言われているから皇子からの求婚を断るのに俺と婚約する程度の事なら協力するぞ?」

婚約者の決定権が俺にあるのは、俺がアルカイトの養子で正式に血を引いていない以上アルカイト家を継ぐことが出来ないからだ。それは貴族のメンツを気にしないあの義両親でもどうにもならない理由があるため、今のままだとアルカイト家はソフィアが継ぐ事に決まっているからだ。それとエリラスも婚約者くらい自分で決められるだろうな、そうでも無ければこんな話をしないだろうし、なにより中身がリラスであり、その立場から考えると婚約者くらい自分で決める事が出来ても全くおかしくない

「うむ、頼むのじゃ。では婚約さっさとやってしまうのでな。貴族証を出すのじゃ」

「分かった」

了承の声を返しながら貴族証をズボンのポケットから取り出してとある機能を起動する。
貴族証はその名の通り貴族もしくはその子である事の証だ。これは産まれると同時に発行され基本的に一生その所有者を見張り続け、違反行為に接触するような行動をした場合、その者の貴族籍を一時的に停止するなどの処置を下すものである。基本的にこの証のルールは高貴なる者に伴う義務ノブレス・オブ・リージュに基づいており、この証が取り入れられて居るこの国などの大国では不正などは殆ど起こり得ない。それとこの証には他にも身分証明などの機能があり、その内の一つが今行おうとしている婚約者登録でこの機能は両者同意の元かつ本家の了承があって初めて使え、お互いを確定した婚約者として登録する事が出来るんだ。因みに貴族証は気力や魔力の他にも様々なもので個人登録がしてあり、本人以外が利用する事は一切不可能だ。尚、前世の俺は冒険者稼業に集中していたが魔物を討伐して無辜の民を守っていたという事で一応貴族証は機能していた

「よしやるぞ」

「分かっておる」

「それじゃ…せーの、のタイミングで行くぞ」

「「せーの『婚約エンゲージ』」」

互いの証を重ねその言葉を紡ぐとお互いの証にそれぞれの名と家紋が刻まれた

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