勇者になれなかった俺は異世界で

倉田フラト

神サイド

「いてて……」

 少し赤っぽい色で腰まで伸びきった長髪で
 綺麗な肌の女は裏路地で壁を背にもたれ掛っていた。
 その綺麗な顔は苦痛に耐えている為に歪んでいる。
 その痛みの原因は彼女の手が押さえている部分。

(幾ら力を半分失っているとは言え、本気出してこの様とはね……)

 真っ赤に腫れた横っ腹を手で押さえながら
 神ビァチアは一人の少年の事を思い浮かべる。

(あの少年一体何者だったのかしらね、状態異常系の魔法無効、
 魔法の使用は無し、そしてあの獣……思い出せば思い出すほど欲しくなってしまうわ)

 それは先ほどまで手に入れる気満々で挑んでいたメイドの姿をした少年ソラの事だ。
 彼は神ヘリムによって状態異常系の魔法を無効化する魔法を常時発動されている状態だ。
 あれはソラが奴隷に落とされた際に掛けられていた状態異常の魔法を
 不愉快に思ったヘリムが掛けたのだ。

 神ピァチアはソラを発見した時点で
 睡眠魔法を準備し向かい合った際に発動させたのだが、
 幾ら時間が経とうとも彼がその魔法に掛かる事は無かったのだ。
 何かの防御魔法が発動していると考えた彼女は調べてみたのだが、
 分かったのは騎乗の魔法を使っていると言う事だけだった。

 騎乗と言っても結界を張っている以上誰もこの場に来ることは出来ない
 そう判断してその魔法は気にしないで置くことにしたのだが、
 それは間違いだったと最後になって気が付いたのだ。
 少年の腕が復活した事に驚き、沢山のプレイを脳内で再生し、
 興奮状態でソラに迫り、仕留める寸前に――
 上空からの途轍もない圧に驚き恐怖した。

 謎の力によって強制的に短剣が弾かれてしまい、
 次の瞬間に少年の姿が消え横っ腹に衝撃が走り、
 その衝撃で我に返った彼女は急いでソラの事を捕まえようとしたのだが、

 上空から巨大な獣が地に降り立ち、その圧倒的な存在感を前に
 神である彼女が恐怖し、その場から一切動くことが出来なく、
 今まで感じた事が無い死すら覚悟したのだ。

 だが、幸いな事に獣は彼女には全く興味を示さずに
 少年を加えて逃げて行ってのだ。
 そして途轍もない圧から解放され壁にもたれ掛り――今に至る。

「彼ならもしかしたら……」

 彼女はそんな希望をソラに抱いて
 未だに痛む横っ腹を押さえながら裏路地から姿を消した。


 その頃ソラとポチはと言うと、

「今更なんだけど騎乗使ってないのになんでポチと会話できてたんだ?」

「何だ、気付いてなかったのか。あの二人がいってた魔法が使えないってのは嘘だぞ。
まさか本当に信じているとはな、我がソラ魔力を繋いだ時点で気付け」

 擬人化したポチにそう言われ気付かなかった自分の愚かさと
 嘘をついていたあの二人に怒りの感情を抱いた。

「くそったれええええええ」 

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コメント

  • ノベルバユーザー366207

    3歳だから許してあげて

    0
  • 音街 麟

    あと誤植も。

    0
  • ノベルバユーザー111651

    そろそろ言わせてくれ、誤字脱字が多すぎる。

    17
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