異世界勇者、地球で生きる

mizuki

プロローグ

こんにちは、皆さん。
ある人突然足元に突然足元に魔法陣が現れて、見知らぬところに飛ばされるって想像できますか?
まあ、冒険者・・・の方なら分かりますよね。でも、信じられますか?転移した先に魔法がないなんて・・・・・・・・
これは、勇者アレクが突然魔法のない世界ーー地球に飛ばされ、全力で生き抜く。そんなお話。

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辺りは黒く染まり、日は登らず、光が差すことない闇の世界ーー魔界。その中で最も瘴気が濃い場所に2人は立っていた。1人は銀髪碧眼の美少年、その身には白銀の鎧を纏い、その手には魔を滅する剣ーー聖剣を持っている。一方は、異形、その額から二本の角を生やし、牙は鋭く、四本の手を持ち、その全てに漆黒の剣を持っている。
2人は共に今にも倒れそうなほど満身創痍だ。
だが、2人は倒れない。銀髪碧眼の男は人類の希望を背負った『勇者』で、異形の者は魔族を率いて、人類を滅ぼす『魔王』なのだから。
2人はどちらからともなく語り出した。

「なあ、魔王。次で限界だろう?お前も、俺も」

「そうだな、勇者よ。我は次の一撃に全てを込め、お前を殺す」

「やってみろよ」

この一撃でどちらかが死ぬ。それが分かっているのに2人の顔には笑みが浮かぶ。自らの勝利を確信しているわけでもなく、ただ互いに今まで巡り会うことのなかった好敵手との決着に意識を向けると、自然に笑みが浮かんでくるのだ。
勇者の剣が白く白く純白に包まれる。
魔王の4本の剣が一つになり、黒く黒く漆黒に染まる。

「行くぞ!魔王ォォォッッ!」

「来い!勇者よ!」

「「うおおおおおおぉぉぉ‼︎‼︎‼︎」

互いに全力を込めた一撃がぶつかり、せめぎあう。だが、人類の希望を背負い戦い続けた勇者と人類を滅ぼすことを宿命づけられただけ・・の魔王。思いの差は歴然としていた。

世界が白に染まったーーーーーーー












白い光が収まった後には、満身創痍になりながらも立っている勇者と、体のほとんどを無くした魔王がいた。魔王は勇者に語りかける。

「悔しいなぁ、勇者よ。我は誰かに負けるのがこんなに悔しいとは知らなんだ」

「そうか、俺も好敵手を打ち倒して喜べばいいのか、もうあんな死闘を演じるのができないことを悲しべばいいのか分からん」

勇者の言葉を聞き、魔王は微笑む。そして、魔王は言う。

「さて、勇者よ。お前は我を打ち倒した。故に世界との契約により、願いを叶えよう。お前が願うのは魔族の根絶か?人類の繁栄か?それとも、永遠の命か?」

「ふん、俺は好敵手を得れたことで満足はしたんだがな。まあ強いて言えば、この戦いに費やしてきた人生と違い、もっと普通の人生が送りたかったなぁ」

魔王が怪しく笑い呟いた。

「くく、その願い聞き届けた」

直後、勇者の足元に魔法陣が現れた。

「なっ⁉︎」

「くくく、お前の願った普通の人生楽しんでこい。…まあ、どんな風に叶えられるかは我も知らんがな。くっくっく、クハハハハハハ」

そんな魔王の高笑いを聞きながら勇者は光に包まれた。



******

路地裏といってもいいであろう、薄暗い場所に光が突如現れ、その中から1人の男が現れた。

「ふう、久しぶりに驚かされた。さて、ここはどこだ?」

そう思って勇者は光のある方へ向かった。だが、その先にあったのは想像を絶する光景だった。
天に手を伸ばすかのように高く並び立つ建物。四角い大きな箱の中で動く人間。走る大きな箱。その全てが勇者の人生で目にしたことがなく、魔王を打ち倒した勇者が、驚愕のあまりしばらくの間呆然としてしまった。

舞台は日本、東京。勇者の異世界生活が今、始まるーーー

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